テレワーク時代の健康経営 効果・課題・ポイントについて解説


2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークを導入している企業は年々増加傾向にあります。

パーソル総合研究所が正社員約2万人を対象に実施した調査によれば、2020年3月のテレワーク実施率は13.2%にとどまっていましたが、緊急事態宣発令後の2020年4月には27.9%まで上昇。その後も、2020年5月調査においては25.7%、2020年11月調査においては24.7%と多少実施率は低下しているものの、2020年3月よりも大幅に増加しており、テレワークは一定程度定着傾向にあることが伺えます。

本記事では、テレワークによるメリットデメリットを踏まえ、これからの時代の新しい健康経営のありかたをご紹介します。
また、テレワークはワークライフバランスを重視した企業というブランディングにも活用できるため、人事・採用担当者はこれからの時代の働き方としてポイントを押さえておきましょう。

総務省|令和3年版 情報通信白書|テレワークの実施状況 (soumu.go.jp)

テレワークが健康経営にもたらす効果

テレワークは新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みの一環により、緊急事態宣言前後から各企業で本格的に導入されはじめ、現代では必須の働き方となりつつあります。健康経営を積極的に推進している企業の75%が新型コロナウイルスに対して健康経営への取り組みが「プラスの効果をもたらした」と認識しています。

また、健康管理の取り組みが、平時の備えとして非常に役立っていることがわかりました。リモートワークが健康に与える影響については、44%が「どちらかというと良い影響がある」と回答しています。

新型コロナウイルス流行下における健康経営の取り組み状況に関する調査結果を公表|株式会社ルネサンスのプレスリリース (prtimes.jp)

リモートワークや新型コロナウイルスが従業員の心の健康問題、体の健康問題、生活習慣病などに与える影響は、従来の取り組みの延長線上にあることに注意しましょう。健康経営に積極的に取り組んでいる企業は、IT環境の整備や従業員の柔軟な働き方など、職場環境の面でも基盤が整っています。

テレワークのメリットは以下に示す通り、さまざまな面で企業の健康経営へ良い影響を及ぼすことがわかります。

  • 生産性の向上
  • 労働時間の短縮
  • 営業効率の向上
  • 情報共有の効率化
  • 離職の防止
  • 優秀な人材の確保
  • 通勤費の削減
  • 事業経費の削減
  • 緊急時のリスク軽減
  • 企業イメージの向上
  • 社員のスキルアップ
  • 健康経営

テレワークは近年取り入れた企業がほとんどであるため課題もありますが、今後もその傾向は続くと予想されます。テレワークの重要性はますます高まっていくことでしょう。

テレワークによる健康管理の課題

テレワークによる健康管理では、効果が出ている一方で課題があるのも事実です。
リモートワークの主なデメリットと対策は以下の通りです。

  • コミュニケーションの頻度が少なくなる
  • 勤怠管理の難しさ

下記にて順に解説します。

コミュニケーションの頻度が少なくなる

テレワーク中の従業員は自宅のパソコンで仕事をすることになるため、コミュニケーションの機会が減ります。通勤の負担や精神的・肉体的ストレスが軽減され、生産性は向上します。しかし一人暮らしの場合は、1日のなかで対面で人と接する機会が激減するため、孤独感からくるメンタルヘルス不調にも注意が必要です。そのため、定期的にオンラインミーティングや出社日を設定することも必要に応じて検討しましょう。

勤怠管理の難しさ

テレワークでは、自己管理能力が生産性に直結します。中には「誰も見ていないから」と手を抜きがちな社員もいるかもしれません。一方で、頑張りすぎて深夜遅くまで仕事をしてしまう社員もいるかもしれません。テレワーク時でも適正な労働時間を確保するためには、勤務実態を把握できるログ管理・勤怠管理システムの導入がおすすめです。

このようにテレワークにはいくつかの課題がありますが、綿密な計画を立て勤怠管理やコミュニケーションなどのシステムを導入することで解決できます。適切なツールを導入することで、テレワークは従業員の生産性向上とストレス軽減の相乗効果が期待できます。

テレワークで従業員の健康を管理するためのポイント

テレワーク環境下で従業員の健康を管理するためのポイントは大きく分けて次の2つです。

  • 健康管理ルールの確立
  • ハイリスク者の特定

下記にて順に説明します。

健康管理ルールの確立

テレワークという形態を効果的に活用するためには、企業が社員の健康管理を行うことが不可欠です。テレワーク環境の整備を目的とした「健康管理ルール」の策定や、従業員への周知・理解促進などが挙げられます。また、定着するまでは健康活動評価を勤務評定の一部として行うなど、健康増進に関する取り組みにポイントを与える施策も効果的です。

ポイントは、「健康経営の実践=社員を守る」という経営理念を浸透させることです。社員に「自分は会社に守られている」という意識が芽生えれば、離職者の減少やモチベーションアップにつながります。また、「テレワーク=在宅勤務」の効果を高めるためには、家族の協力も欠かせません。健康管理の対象を社員と同居する家族にも広げることを検討しましょう。

ハイリスク者の適切な特定と特別なケア

健康増進活動を実施する上で最も重要なことは、ハイリスク者を適切に特定し、具体的にケアすることです。そのうえで、個人あるいは会社全体の健康づくり活動を展開することが大切です。

ここでいう「ハイリスク者」とは、従来は脳卒中や心筋梗塞の既往がある人、精神疾患からの復職者、障害者雇用の人を指していましたが、リモートワークでは、慢性疾患のある人、高齢者の再雇用者、急激に太った人(いわゆる「コロナによる体重増加」)なども含まれます。

これらのハイリスク者を踏まえ、個人へのアプローチとしては、健康診断やストレスチェックの活用、就業規則の設計(例:チャットによる出退勤管理)、健康管理アプリの導入や健康状態のモニタリングなどが挙げられます。組織へのアプローチとしては、オンラインセミナーやeラーニングによる健康情報の提供などが挙げられます。

テレワークにおける健康管理を推進する施策事例

福利厚生の一環として、会社がジムの提携やオンラインストレッチの開催などの施策を取り入れた事例をご紹介します。

コロナ禍以前でも、福利厚生の一環としてジムの提携などを行っていた企業はありますが、こちらの事例では、オンラインにて行えるフィットネスサービスを取り入れたところが注目されています。

従業員の心と体の健康が最優先課題であることは周知の事実です。新型コロナウイルスの感染拡大がみられたことを受け、ケロッグ社は、在宅勤務中の従業員が健康を維持できるよう、オンライン・フィットネス・サービスの導入を決定しました。

このサービスのアイデアは、ケロッグのオンライン・フィットネスでの経験から生まれたものです。同社では、テレワークが長期的なトレンドとなっていることから、社員の心身のケアに最適なソリューションを模索してきました。

社員はスマートフォンさえあればオンライン・フィットネス・サービスを利用できるため、どこでも簡単に運動することができます。勤務時間外のプライベート利用も可能で、在宅勤務中の運動不足解消に役立っています。

日本ケロッグ合同会社が、従業員の運動習慣化支援ツール「BeatFit for BUSINESS」を導入|株式会社アリストルのプレスリリース (prtimes.jp)

テレワーク時代の健康経営を意識し、働きやすい職場環境を整えよう

テレワークを効果的に活用するためには、企業による健康管理が欠かせません。業務と同時に健康管理も適切に実施することが必要となります。そのためには、テレワーク環境の整備を目的とした「健康管理ルール」を策定し、従業員に周知・徹底させることが課題となります。定着するまでは、健康活動評価を勤務評定に組み込むなど、健康増進に関する取り組みに加点する施策も有効です。

また、オフィス環境を整備して社員が働きやすくするためには、テレワーク時の環境整備もこれからの企業の課題として残るでしょう。健康管理は基礎的な対策を継続して行うことが最も有効です。
自社のテレワーク環境を改善するために健康管理の方法を今一度検討し、社員が永続的に元気に働ける会社を目指しましょう。

 

参考文献:金城 実 著「日本一わかりやすい健康経営」プレジデント社

コラムを書いたライター紹介

真南風文藝工房

プロフィールはこちら

編集者・ライター・サイエンスコミュニケーター・工学修士(航空宇宙学)
自動車メーカーでの先行開発エンジニアを経験した後、理系教科書編集(高校数学・中学校理科教科書編集)職に転向。近年は、サイエンスライティングに加え、理系・元エンジニアとしての経験を活かし、大学院生向け就職活動サイトコラム執筆・AI関連企業広報ライティングなど、幅広い分野での執筆活動に取り組んでいる。

関連コラム

コメントはこちら

一覧へ戻る