人事担当者が意識したい採用クロージングのポイントとNG行動


売り手市場が続く昨今の採用市場では内定を複数持つ学生も多く、せっかく内定まで学生を繋ぎ留められたとしても、入社前に内定辞退されてしまうことも珍しくありません。

最終的に自社を選んでもらうためには、採用プロセスの中でも最終段階にあたる採用クロージングの取り組みが肝となります。

そこで本記事では、人事担当者が意識したい採用クロージングのポイントとNG行動をお伝えします。

採用クロージングとは?

採用クロージングとは、内定を出してから入社までの間に内定者のフォローに取り組む活動・施策を指します。自社への入社意思を固めてもらうことはもちろん、入社に向けたマインドの醸造、理念・社風の再確認、内定者の不安解消などの役割も担います。

株式会社マイナビが実施した『2022年卒内定者意識調査』によると、22年卒の内々定保有社数は平均2社でした。

引用:株式会社マイナビ『2022年卒内定者意識調査』

また3社以上内々定を獲得した学生の割合は、21年卒と比較すると5.0pt増加しています。

引用:株式会社マイナビ『2022年卒内定者意識調査』

学生にとっては入社先を検討する際の選択肢が広がっている一方で、企業としては内定辞退される確率が高くなっている状態です。そのため採用クロージングの重要性も今まで以上に高まっていると言えるでしょう。

採用クロージングのポイント

採用クロージングは、取り組み次第で内定承諾率を大きく左右することもあります。
またただ単に内定者に対し承諾を促すだけでは、内定辞退を誘起させることになりかねません。
場合によっては、早期離職の要因になる可能性も考えられます。

採用クロージングに取り組む際は、ポイントを抑えることが大切です。
ここでは、採用クロージングに取り組む際に意識したいポイントを紹介します。

内定者の志望度に合わせたフォローを意識する

一口に内定者といっても、入社意欲や築き上げた信頼関係の深さは1人ひとり異なります。
一律同じフォローを行うのではなく、選考段階からの志望度や仕事・働き方への価値観を踏まえた上で、それぞれの内定者に合ったフォローに努めましょう。

メールや電話などのフォローツールや、コンタクトの頻度、コミュニケーションを図る社員など、内定者に合わせて調整してみるのも1つです。内定者の興味・関心を高められたり、思わぬ本音を聞き出せたりするかもしれません。

また採用活動に割けるリソースは限られています。そのため内定者の志望度に合わせ、フォローの手厚さにグラデーションをつけるのもおすすめです。志望度の高い内定者を取り逃がしてしまう可能性を極力防ぐことができるでしょう。

内定者の本音を聞き出す場を設ける

採用担当者よりも配属予定先の社員やリクルーターのほうが本音を話せると感じる学生も少なくありません。本音を聞き出しづらいと感じる学生に対しては、学生が希望する社員と面談の機会を設けてみましょう。
学生が抱えている不安や内定承諾を踏みとどまっている理由を聞き出すことができれば、適切な対処ができるでしょう。

入社意欲を高める機会を提供する

内定者が複数人いる場合は、内定者同士が交流できる場を提供するのも1つです。

会社の文化や価値観を理解する機会にもなり、入社に向けたマインド醸成にも寄与します。また志望度が低い学生も交流会を通じて仲間意識が芽生え、入社意欲が高まることもあるでしょう。
さらに内定者同士が交流することで結束力が向上し、早期離職を防止できる利点もあります。回数を重ねるごとにその効果は高まるため、入社までの期間継続的に実施しましょう。

なお内定者交流会を催す際は、社員にも参加してもらえるコンテンツを用意することがポイントです。
社員とのコミュニケーション機会を作ることで、入社後の働き方も具体的にイメージできるようになります。入社後の漠然とした不安が払しょくされ、内定承諾の確度も高まるでしょう。

定期的にコミュニケーションを図る

大分大学・碇邦生氏がマイナビキャリアリサーチLabとの共同研究で実施した「2023年卒の内定者に対するコミュニケーション」に関する学生調査によると、平均よりも多くのコミュニケーション施策を受けた学生のほうが少ない学生よりも満足度が高くなりました。

引用:大分大学・碇邦生氏×マイナビキャリアリサーチLab『2023年卒の内定者に対するコミュニケーションに関する学生調査』

また入社意欲についても、多くのコミュニケーション施策を受けている学生が少ない施策を受けている学生よりも高い意欲を持っていることが明らかになりました。

引用:大分大学・碇邦生氏×マイナビキャリアリサーチLab『2023年卒の内定者に対するコミュニケーションに関する学生調査』

本調査結果より、採用クロージングのコミュニケーション頻度が学生の満足度・入社意欲に影響していることが分かります。

人員が限られる中、内定者へのコミュニケーションにまでリソースを割くのは現実的に難しいケースもあるでしょう。しかし学生にとって内定から入社までの期間は、新生活への不安を抱えながら過ごすことになります。企業はそんな学生の心情を汲み、定期的かつ適切なコミュニケーションを提供することが大切です。

採用クロージングで控えるべきNG行動

採用クロージングでは、志望度が高い内定者でも企業側の発言や言動1つで志望度が下がってしまうことも珍しくありません。
ここでは、採用クロージングを行う際に控えるべきNG行動を紹介します。

オワハラと捉えられる行動はしない

内閣府の『学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査報告書(令和4年11月30日)報告書』によると、「就職活動においてオワハラを受けたことがある」と回答した学生の割合は10.9%にものぼりました。

引用:内閣府『学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査報告書(令和4年11月30日)報告書』

オワハラと捉えられる言動として「他の企業の選考や内定の辞退を促す発言をする」「選考期間中に研修や懇親会などを実施し、他の企業の選考に参加できないようにする」 「正式な内定を出す前に誓約書を提出させる」などが挙げられます。

貴重な学生を囲い込むための施策が度を過ぎてしまうと、オワハラと思われてしまうケースもあります。
万が一SNSで事態を拡散された場合、学生から敬遠され、新卒採用に取り組めなくなってしまうリスクもあるでしょう。

採用クロージングは、センシティブなプロセスとなります。度を超えた採用クロージングにならないよう、学生への接し方や言動など注意すべき点は社内で共有し、学生視点の採用クロージングを意識しましょう。

内定承諾率を重視しすぎない

採用クロージングでは、内定承諾率を重視しすぎないことも大切です。
数字ばかりに囚われてしまうと、内定者の気持ちを軽視してしまったり、オワハラと思われる言動になってしまったりする可能性もあります。
無理に内定承諾させた場合、早期離職に至ってしまうリスクも高くなってしまうでしょう。

内定者から強引に承諾を得るような無理な採用クロージングは避け、内定者の心情に寄り添うコミュニケーションを心がけましょう。

まとめ

採用クロージングは、採用活動の中でも終盤にあたる重要なフェーズです。
優秀な学生から内定承諾を得るためには、ポイントを抑えながら採用クロージングに取り組むことが大切です。

しかし学生にとってオワハラと捉えられるような行動・言動は、逆効果です。
本記事で紹介したNG行動にならないよう注意し、内定承諾を勝ち取れるよう、内定者と良好な関係を築いていきましょう。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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