履歴書は保管しなければならない?保管期間や保管方法を紹介!


従業員の履歴書は、氏名はもちろん生年月日や住所といった個人情報が詰まったとても貴重な書類です。この履歴書には、採用・不採用にかかわらず保管義務があることをご存じでしょうか。

今回は、履歴書をテーマに保管方法や保管期間、保管すべき理由について解説します。社員などの正規雇用者だけでなく、アルバイトやパートなど非正規雇用者を雇用している責任者・経営者の方もぜひご覧ください。

そもそも履歴書を保管する必要はある?

個人で小売店や飲食店を営んでいる方の中には、不採用者・退職者の履歴書を破棄している方も多いのではないでしょうか。まずは、応募者や従業員から預かった履歴書の保管義務について解説します。

履歴書の保管義務について

結論からいうと、採用・不採用および在職・退職にかかわらず、履歴書の保管は「労働基準法109条・記録の保存」で義務づけられています。万一この法律に反した場合は、30万円以下の罰金が科せられるので注意しましょう。

履歴書を保管する理由

履歴書を保管しなければならないのには、4つの理由があります。理由を把握しておくことで、履歴書や保管の大切さをより深く理解できるため、ぜひご覧ください。

  • 個人情報保護の対象
  • 労働基準法で義務付けられている
  • 返却希望への対応
  • 経歴における事実確認

個人情報保護の対象

履歴書には、本人の氏名や連絡先、住所、学歴・職歴などの個人情報が記載されているため、個人情報保護法の対象となっています。該当する「個人情報保護法15・16・20条」の内容を簡単に説明すると、「個人情報の利用目的を明確にする」「本人の許可なしに利用目的外で使用しない」「個人情報の漏洩を防ぎ安全に管理する」というものです。

個人情報保護法は、2022年4月より改正された内容が施行されています。とくに法人に対する罰則が厳格化され、違反した場合は1億円以下の罰金刑が科せられます。

労働基準法で義務付けられている

履歴書の保管は、個人情報保護法だけでなく労働基準法でも義務付けられています。該当する「労働基準法109条・記録の保存」の内容を簡単に説明すると、「労働者名簿等の労働関係に関する重要書類は3年間保存する」というものです。

個人情報保護法違反と比べると罰金刑の内容は軽いものの、それでも違反した場合は30万円以下の罰金刑が科せられることを認識しておきましょう。

返却希望への対応

採用面接や書類選考後、とくに不採用となった場合に応募者から履歴書を返して欲しいとの希望があるケースも少なくありません。この場合、応募者へ返却しても問題ないため、後日郵送するなどして対応しましょう。

返却希望があった際、すぐに対応できるよう決められた場所へ保管しておくことが大切です。ただし、基本的に履歴書は預かった時点で企業側に所有権があるため、返却に必ず応える必要はありません。トラブル防止のため、求人の募集要項等で履歴書の返却は対応できない旨を記載しておくと安心です。

経歴における事実確認

採用後、資格や学歴および職歴など経歴詐称、あるいは虚偽の申告が発覚した場合、事実確認が必要です。この時、履歴書がなければ詐称の証拠を確保できません。

こうしたケースは多くないにしろ、発覚しない可能性もゼロではないでしょう。万が一に備え、履歴書は安全かつすぐに確認できる場所へ保管しておくことが大切です。

履歴書の保管期間

履歴書の保管期限は、採用・不採用によって異なります。それぞれの保管期間と退職者の場合についてもみていきましょう。

  • 採用した人材の場合
  • 不採用の人材の場合
  • 退職者の場合

採用した人材の場合

応募者を採用した場合は、採用者の希望にかかわらず必ず履歴書を保管します。採用者の場合、退職や死亡などなんらかの理由で雇用関係が解消された日から5年間が履歴書の保管期間と定められています。

そのため、雇用している間は、正社員やアルバイト・パートなど雇用形態にかかわらず破棄することは一切ありません。

不採用の人材の場合

応募者が採用に至らなかった場合は、履歴書の保管義務はありません。昨今、個人情報の取り扱いが厳しくなっていることから、応募者からの希望がなくとも返却している企業は少なくありません。

企業側の意思で返却しない場合、応募者からの返却希望に対応できるよう、保管期限を6ヶ月と定めている企業が一般的です。いかなる場合も返却対応をおこなわない場合は、求人内容や面接前に履歴書の返却はせず破棄することを記載しておくとトラブルを防止できます。

退職者の場合

採用者の場合で記載したとおり、雇用形態にかかわらず従業員が退職した日から5年間は保管期限が義務付けられています。

ここで注意したいのが「5年間」という期間です。履歴書の保管は「労働基準法・109条」で定められていますが、この法律は2020年に改正されています。改正前の保管期間は「3年間」であったため、2年間の延長に気付いていない方も少なくないため注意しましょう。

履歴書の保管方法

保管期間以上に大切なのが、履歴書の「保管方法」です。応募者および従業員から預かっている履歴書は、大切な個人情報であるため個人情報保護法に基づき安全に保管しておく必要があります。

紙の履歴書はもちろん、pdfファイルなどの電子履歴書の保管方法についても確認しておきましょう。

  • 紙ベースでの保管方法
  • 電子履歴書での保管方法

紙ベースでの保管方法

個人情報が詰まっている履歴書を狙うのは、外部の人間だけではありません。履歴書を取り扱うのは原則管理者のみであり、他の従業員からも守る必要があります。

そのため、紙の履歴書を保管する際は施錠ができるキャビネットやロッカーを使用しましょう。また、保管場所は限られた人物だけに伝え、部外者が見つけられない場所にしておくと安心です。

あわせて、履歴書の保管方法も重要です。必要なときに必要な履歴書を取り出せるよう、名前順や入社順、現従業員や退職者というようにファイルを分けるなどして管理しやすくしておくのもポイントです。

電子履歴書の保管方法

現在は、データでの履歴書送付としている雇用先も増えています。また、紙の履歴書をパソコンに取り込み、データ化して管理している場合も少なくありません。

電子化した場合に注意したいのが、他のデータとの混同や誤った削除、そして保存しているファイルおよびUSB端末の破損です。これらを防ぐためには、電子履歴書の保管ルールを明確にしておくことが大切です。

例えばファイル名を統一したり、部署別にファイルを分けたりして他のデータとの混同を防ぎます。また、アクセス権限を設けて履歴書データを削除する際にはパスワードの入力や削除申請制をとるなどしましょう。

ファイルやUSB端末が破損してしまうなどの万一に備え、クラウド上に保存するなどの対策も欠かせません。

誤って履歴書を廃棄してしまった場合のトラブル

万全の対策をとっていてもパソコントラブルやヒューマンエラーが原因で誤って履歴書を廃棄してしまうこともあるでしょう。しかし、こうしたトラブルは本来あってはなりません。

万が一、誤って履歴書を廃棄してしまった場合、不採用者や退職者から履歴書の返却を求められた際に対応できません。また、他の書類に混ざって廃棄してしまったり、社内全体がアクセスできるファイルに移動させてしまったりすると、情報漏洩の可能性もあります。

そうなれば、企業に対する信頼の低下はもちろん、今回ご紹介した法律に抵触する場合、高額な罰則金が科せられる可能性があることを今一度認識しておく必要があります。

まとめ

個人情報に関する取り扱いは、年々厳しくなっています。そうしたなかで、各企業が対策をとっていても、毎年大規模な情報漏洩に関するニュースが後を絶ちません。

一度漏れてしまった情報を回収するのはほぼ不可能でしょう。こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、履歴書を含む個人情報や重要書類は徹底した管理を心がけ、管理方法に問題がないか定期的に確認しておくことがトラブル防止につながります。

ぜひこの機会に、履歴書の管理方法についてルールを明確化し、社内周知をすることで認識の徹底を図ってみてはいかがでしょうか。

参考サイト

https://www.keepex.co.jp/column/hokan/181/
https://saiyo-kakaricho.com/wp/storage-period_resume/
https://it-trend.jp/employment-screening/article/432-0038#chapter-2
https://alumnavi.com/resume-storage-term/#i-4
https://meetsmore.com/product-services/recruitment-management-system/media/92056#4

コラムを書いたライター紹介

木村竜太朗

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Webライター兼コンテンツディレクター。複数メディアで執筆しながら、ライター管理やコンテンツディレクションを担当しています。Kindleで「月の収入を2倍にするWebライティング術」出版しています。

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