社労士に聞く!人事担当者なら知っておきたい。 雇用や労働を支援する国の助成金制度


昨今の労働環境の変化に応じて、国はさまざまな助成金制度を用意しています。これらの助成金は知っているか知らないかで状況が大きく変わってきます。「受給対象になったのに、知らずに申請しなかった」というのはもったいない!
雇用・労働分野の助成金を担当しているのは厚生労働省です。まずはHPで、対象になる支援があるかどうかを確認してみましょう。

事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

ただ、これらの制度を利用するためには、それぞれの要件や手順があります。さまざまな助成金制度の中で、自社がどの助成金を利用できるか、判断するのが難しいことも。
そこで今回は、社会保険労務士の遠山大基さんに、最近注目されている助成金制度についてお話を伺いました。

雇用に関する助成金。国の目的とは

国が助成金制度を通じて実現したいのは、働く意欲のある人たちの、安定した雇用です。例えば少子高齢化社会に対応するために、高齢者の雇用や育児休業の取得を支援する助成金制度を設けています。このような、社会の変化に対応するための国の方針に、企業の方針がマッチすれば、助成金が申請できるというわけです。今回は、数ある助成金の中でも多くの企業が対象となる制度を紹介します。

スタッフの正社員化を国が支援

まず紹介したいのは、キャリアアップ助成金。さまざまなコースがありますが、その中でも取り組みやすいのが正社員化コースです。期間の定めありとして採用したスタッフを、6ヵ月以上雇用した後に正社員として雇用することで、助成金が申請できる制度です。
国としては不安定な立場にある人の正社員化を促進し、安心して仕事に取り組める環境を整えるという意図があります。企業にとっては、まずは有期スタッフとして雇い入れ、その人の資質や特性を見極めたうえで、正社員への転換ができるというメリットがあります。ただ、申請から支給まで決められた流れがあり、これに沿っていないと申請ができないので注意が必要です。また、正社員化の際には3%以上の昇給や賞与制度の導入、今後毎年昇給することなどの要件があります。

コロナ禍での特例措置あり。雇用の維持を推進する助成金

次に紹介したいのが、雇用調整助成金。これは事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員に一時的な休業を命じた場合などに、休業手当などの一部を助成する制度です。最近3ヵ月の生産指標が前年同期と比べて10%以上減少していることが要件です。事業主は雇用保険の適用事業所であること、対象者も雇用保険の被保険者であることに加え、事前の計画書提出が必要です。以前からあった制度ですが、コロナ禍において特例措置が実施されています。
コロナ禍での特例としては支給率が上がり、雇用保険に加入していないスタッフも支給対象になります。ただ、業務可能なスタッフを、事業主からの要請で自宅待機(休業)させた場合の措置なので、新型コロナウイルスに感染し、休業した場合は対象になりません。

遠山社労士からのアドバイス

こういった助成金は、よく、経済産業省管轄の補助金と比較されます。補助金は要件を満たしていても、審査によって「不採択」となる可能性があるのに対し、雇用・労働分野の助成金は要件を満たしていれば給付されるものです
ただ、助成金によって、申請の要件はまちまちです。定められた手順に沿っていないと、対象にならないこともあります。そして、助成金の財源は雇用保険料のため、大前提として、対象になるのは雇用保険適用事業所です。

申請にあたっては、長期間でのスケジュール管理も必要です。例えば、今回紹介したキャリアアップ助成金の正社員化コースは、計画書提出から実際の受給までは最短でも1年6ヵ月を要します。そのため、中~長期的な雇用計画が必要です。

厚生労働省が出している要項を読み込んでも、自社が対象になるかわからない。申請したい助成金はあるけれど、手順がわからない…という場合は、社会保険労務士など、専門家に相談するのもおすすめです。

助成金の対象は、今回紹介した採用・雇用に関するもの以外にもさまざまなものがあります。例えば「男性の育休取得を応援したい」「人材育成を充実させたい」といった独自の方針があれば、話がスムーズに進むでしょう。助成金を活用するためには、まずは自社の雇用の方向性を見つめなおすこと。そして、計画的なタスク管理が大切です。

遠山社労士事務所
社会保険労務士
遠山大基

当事務所では、人を雇用することで発生する事務手続き、助成金の提案・申請サポート、給与制度や賞与制度の構築など、各企業ごとの状況を把握した上でプラスアルファの価値が提供できるよう心掛け、日々対応させていただいております。

 

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ウマい人事編集部

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