「攻め」の外部人材活用のメリットとは?正社員との違い・社内担当者の留意点を紹介


これまで人材不足をスポット的に補う目的として行われてきた「守り」の外部人材活用。
最近では、コロナ禍を経て多くの企業がテレワークを経験し、非対面で仕事を完結する場面も増えてきています。
そんな時代背景を受けて、人材不足が懸念されているエンジニア人材を中心に、積極的にフリーランスや副業社員を戦力として起用する「攻め」の外部人材活用が注目されています。

今回は外部人材を活用するメリットとデメリット、注意すべきポイントなどについて詳しく解説します。社内の人材不足やノウハウ不足にお悩みの人事担当の方は、ぜひ本記事を参考に外部人材の活用を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

外部人材活用とは?

外部人材とは、一般的に「会社組織から独立した外部の専門家」のことを指します。
外部人材といったとき、派遣社員を含める場合もありますが、ここではフリーランスと副業人材を指します。

外部人材と正社員の違い

外部人材と正社員の違いは、正社員は労働基準法上の「労働者」にあたり、外部人材はフリーランス・副業社員問わず、個人の「事業者」という扱いになります。

外部人材を採用する場合、フリーランス(個人事業主)と「業務委託契約」を締結します。
また「業務や成果物」に対し対価を支払い、料金が発生するタイミングは、プロジェクト完了時や成果物の納品後というものが一般的です。

正社員を採用した場合は、個人の転職活動、退職活動期間で参画時期がかなり遅れたりすることがありますが、外部人材の場合、契約が済めば即日開始も可能です。

外部人材活用のメリット・デメリット

次に、外部人材活用の際のメリットとデメリットについて解説します。

メリット

外部人材は、特定業務を専門に活動しているため、専門知識やノウハウを多く保有している傾向があります。
そのため自社内で完結させた場合と比較すると、外部人材を利用することで生産性を向上させることが可能です。

また、成果物が対価の対象となることから、社員のように残業代などの負担はなく、成果物に対して同等の安定した業務品質を得ることができます。

さらに、組織が外部人材を活用するおもな目的として、社外の優秀な人材を確保するためということが挙げられます。能力の高い人材が社内にいることによって、他の社員にとって刺激となるでしょう。

デメリット

外部人材のデメリットとして、業務に関するノウハウが社内に蓄積しづらいということが考えられるでしょう。

基本的には、外部人材とは個別契約の単位での取引となるので、組織側が継続の意思を示しても、外部人材はほかのプロジェクトと掛け持ちをしていることが多く、タイミングによっては次回も同じ業務を受けてもらえるとは限りません。

このように、一時的に業務を任せることが多いため、外部人材が持っているノウハウを社内に残し続けるのが難しいということが課題となります。

組織として、社員が外部人材から多くを学びながら、その際に得たノウハウを蓄積していけるような仕組みを考えておく必要があるでしょう。

外部人材活用で社内担当者が気を付けるポイント

外部人材を実際に活用する段階で社内担当者が留意すべきポイントを紹介します。

業務委託契約書を交わす

外部人材を採用する際、業務委託契約書を書面にてきちんと交わすようにしましょう。

具体的な委託業務や納期、報酬額などを明確に定めることで、口頭でのコミュニケーションに起こりがちな「言った・言わない」などの見解の相違といったトラブルを避けられます。
一般的な、会社員や派遣社員が企業に対して労働力を提供するのに対し、業務委託契約を結んだ外部人材は業務の遂行および成果物を提供することがコミットメントになるので、企業との関係性は対等なものになります。
契約内容によって、直接業務の指示を出せるかなどが異なりますので、書面でお互いに契約内容をよく確認しておくようにしましょう。

請負契約と準委任契約の違いに注意

「請負契約」と「準委任契約」の違いに注意しましょう。

請負契約とは、依頼した仕事の完成に対して報酬を支払う契約のことです。
準委任契約とは、法律行為以外の事務処理を委託する契約のことです。
請負契約と準委任契約の目的は、それぞれ次のとおりです。

請負契約:仕事の完成
準委任契約:事務処理の遂行

この「仕事の完成が目的かどうか」は、両者を区別する最も大きな点です。
請負契約における仕事の完成とは、システム開発であれば新規システムの完成、執筆関係であれば原稿の完成などです。
一方、準委任契約では任せられた仕事を遂行すればよく、仕事の完成という結果は必ずしも求められません。ビルの管理や家庭教師などがこれにあたります。
請負契約であるのにもかかわらず、発注者が業務の細かい指示を契約者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりすると、「偽装請負」と取られることがあるので十分注意が必要です。
また、仕事が完成する前に追加の業務依頼をする場合は、別途納期を定めた個別契約を定めるようにしましょう。

「優先的地位の乱用」と「下請法」について社内周知しましょう

優越的地位の濫用とは、公正取引委員会公式サイトでは「自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為のことです。この行為は、独占禁止法により、不公正な取引方法の一類型として禁止されています。」とされています。
また、下請法(正確には下請代金支払遅延等防止法)という法律があります。例えば一方的な受領拒否や代金減額、買い叩きは返品などを親事業者が行うことは、下請法によって禁じられています。
実際に外部人材と接する社員全員にコンプライアンス教育として、独占禁止法や下請法の社員教育を施すなどして、十分に注意して対応する必要があります。

参考:公正取引委員会「優越的地位の濫用及び下請法の概要」
https://www.jftc.go.jp/shitauke/kousyukai/gaiyou.html

参考:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法ガイドブック」
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf

アフターコロナで外部人材活用が増える見込み

ここまで、新しい人材活用手法として注目されている「攻め」の外部人材活用について解説しました。

加速度的なテクノロジーの進化で人々の「働き方」が多様化しているように、時代に合わせた最適な企業の人材活用方法も日々変化していきます。

これからアフターコロナの時代を迎え、ますます先行きの見えない時代に突入していくでしょう。従来の正社員採用だけではなく、外部人材を有効に活用して、「攻め」の人事戦略を推進してみてはいかがでしょうか。

コラムを書いたライター紹介

真南風文藝工房

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編集者・ライター・サイエンスコミュニケーター・工学修士(航空宇宙学)
自動車メーカーでの先行開発エンジニアを経験した後、理系教科書編集(高校数学・中学校理科教科書編集)職に転向。近年は、サイエンスライティングに加え、理系・元エンジニアとしての経験を活かし、大学院生向け就職活動サイトコラム執筆・AI関連企業広報ライティングなど、幅広い分野での執筆活動に取り組んでいる。

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