人生100年時代の今。キャリア形成を意識した働き方とは


人生100年時代と言われはじめた現代。労働環境や労働に対する考え方がここ数年で大きく変化しています。年功序列や終身雇用も崩壊しつつあり、転職・再就職は当たり前となり働き方の選択肢がますます多様化しています。将来的に自分が理想とする姿を見据えて、資格・能力・職歴を積み重ね自己実現を目指す「キャリア形成」の意識が、特に若者を中心として変わりつつあります。
今回は、そんな人事担当者として把握するべき変わりゆくキャリア形成の意識と大切なポイントについて解説します。
 

若者のキャリア形成と働き方

経済産業省作成の資料「不安な個人、立ちすくむ国家」の中で「昭和の人生すごろくのコンプリート率は、既に大幅に下がっている」とあるように、定年まで働いてその後は年金生活という概念が崩れた現在。従来までと最近のキャリア形成に対する考え方にどんな変化が見られるか、比較してみましょう。

参考資料:https://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf
 

これまでの「キャリア形成」と「働き方」に対する意識

 右肩上がりの経済成長を背景に生まれた「終身雇用制度」。
安定した雇用により定年まで勤められる確約があったため、社員は1つの企業で安心して
定年を迎えることができていました。

 また、企業側は安定した労働力の確保と長期的な人事戦略が可能となりました。そして育て上げた優秀な人材を囲い込むために普及・定着したのが年功序列制度です。これにより、社員は会社が用意した「年功序列制度」というキャリアプランに従うことで定年まで安心して働くことができました。「会社が成長することが自分自身の利益になる」という考え方が可能だった時代。終身雇用と年功序列により、1つの企業で勤め上げることが最も安定したキャリアプランであったため転職への意識も希薄でした。

最近のキャリアの働き方の意識

 終身雇用制度や年功序列制度は、継続的な経済成長が前提となっています。現在では長年の不景気に新型感染症拡大が追い打ちをかけ、さらには産業構造の変化も相まって終身雇用制度や年功序列制度は崩壊を迎えようとしています。

 また「会社の利益が個人の利益になる」という考え方に代わり、現在では「個人を尊重する」という考え方が一般的となってきています。仕事とプライベートをしっかり区別するという意識が、働き方改革につながっているといえます。

 これらの理由により転職やパラレルキャリアが一般的となり、社員の意識は「企業中心から個人中心」へと変わってきています。

キャリアアップを強く意識する若者も

 先に述べた「最近のキャリア形成における意識の変化」は、特に若者たちに顕著に見られる傾向です。確かに、従来のキャリア形成に似た意識を持つ若者も少なくありません。それでも、若者たちの意識の中には転職やパラレルキャリアによるキャリアアップは選択肢として存在します。人生で1社のみを定年まで勤め上げるケースは、今後ますます減少していくことでしょう。

企業がこれからのキャリア形成と働き方で意識すること

 キャリア形成と働き方に対する意識は、今後さらに変化していきます。企業は社員のキャリア形成と働き方について、どういった考え方を持つべきかという2つのポイントを紹介します。あくまで企業中心の目線ではなく、個人を中心とした目線で考えることが大切です。

Will・Can・Mustの考え方を知る

 「Will・Can・Must」の考え方とは、主としてキャリアプランを設計するときに基本となるフレームワークです。人事担当者としてはぜひ理解しておきたい考え方です。
したいこと(will)、できること(can)、すべきこと(must)を列挙して、それぞれが重なる部分が本人にとって最も満足度が高い領域だと言われています。人生100年時代と言われる現代では、特にwillとcanの項目が重要視される傾向があります。逆に、したくないことから逆算してキャリアプランを考えるというケースもあります。
人事担当者としては、社員のwill・can・mustを尊重しつつ、異動や昇進について面談等によりキャリアプランを共に考えることが大切となってきます。

女性のキャリア形成と働き方の再確認

 女性に対するキャリアプランの見直しも、現代の働き方改革においては重要です。前述したwill・can・mustの考え方を基本としますが、女性の場合はそれにプラスして会社制度の拡充も必要です。産休や育休、時短勤務といった制度が確立されていれば、出産や子育てが落ち着いた以降もスムーズに仕事に復帰することができ、スキルやキャリアを活かすこともできます。産休・育休の取得に対するハードルが高くないか、時短勤務に対応しているかなど会社の福利厚生を見直しておく必要があります。

まとめ

 人生100年時代に突入し、終身雇用や年功序列制度が崩壊しつつある昨今、キャリアプランに対する意識が大きな変化を迎えようとしています。転職やパラレルキャリアが当たり前となりキャリアプランの多様化が進む時代に、人事担当者としては働き方改革において遅れをとるわけにはいきません。社員個人を中心に考え、キャリアプランに対する意識を共有できるよう心がけ、会社の制度や雰囲気づくりに臨んでみてはいかがでしょうか。

コラムを書いたライター紹介

土方駿次

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操縦桿をペンに持ち替えフリーランスライターに転身した元公務員。ビジネス系、スポーツ系、セールスライティングから恋愛系記事まで幅広く執筆中。Twitterではちょっとした人気アカウントも運用中です。

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