【最新2025卒採用】採用直結型インターン解禁を踏まえた市場動向と学生の就活動向
少子高齢化に伴う労働人口減少などを理由に、新卒採用においても採用競争が激化を極めています。さらに新型コロナウイルスの影響や働き方改革など採用環境の変化も激しく、これまで以上に採用に苦戦している企業も多いのではないでしょうか。
このような環境下において採用を成功に導くためには、市場の変化や学生の就活動向の把握と理解が不可欠です。
本記事では、採用直結型インターンシップの解禁を踏まえた25卒採用の市場動向とZ世代と呼ばれる25卒学生の就活動向を解説します。
また25卒採用を成功に導くためのポイントも併せてお伝えします。
25卒採用の市場動向|6つの特徴
はじめに25卒採用の市場動向において、人事担当者が理解を深めておきたい6つの特徴を解説します。
採用直結インターンシップの解禁
「採用直結型インターンシップの解禁」は、25卒採用から開始される取り組みであり、新卒採用の市場動向に大きな変化をもたらすと考えられています。
2022年4月に実施された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」において、25卒採用以降に実施されるインターンシップの定義が新しくなりました。
これに伴い、経済産業省・文部科学省・厚生労働省は「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(以下:産学協議会)」を改正しました。
出典:経済産業省
本改正のポイントは、大きく下記の2点です。
- インターンシップで取得した学生情報を採用活動に使用できる旨が明確化された
- インターンシップの種別が4つのタイプに類型されるようになる
24卒採用まで企業は、インターンシップを通じて得られた学生情報を採用活動に利用することはできませんでした。今回の改正により25卒採用からは、一定の基準を満たすインターンシップに限り、インターンシップで獲得した学生情報を採用活動に利用できるようになりました。
さらに下記の表の通り、学生のキャリア形成に関わる取り組みが4つの類型に整理され、インターンシップと称することのできる採用イベントはタイプ3・4に限られることになりました。
引用:一般社団法人 日本経済団体連合会『産学協働による自律的なキャリア形成の推進』
この新しいルールの導入により、インターンシップの重要性が今以上に高まると推察されます。
25卒採用においては、導入初年度ということもあり顕著に影響が現れるとは考えにくいですが、従来のインターンシップより学生の感度は高まり、企業の戦略も変わってくると言えるでしょう。
夏インターンシップの誘致競争激化
先述の産学協議会改正(キャリア形成支援に関する取組み4類型への対応)に伴い、インターンシップに区分される『タイプ3:汎用的能力活用型(5日間以上)』『タイプ4:専門活用型(2週間以上)』を実施する企業が増えると予想されます。
また実施期間も最低5日以上と数日にわたるため、夏インターンシップへの誘致競争に拍車がかかるでしょう。
またタイプ3のインターンシップでは、産学協議会が合意した5つの基準を満たす場合、“質の高いインターンシップである”ことを認定する「産学協議会基準準拠マーク」が企業に付与されます。
インターンシップの質においても、より高いレベルが求められるようになるでしょう。
個別採用がより重視される
ProFuture株式会社 HR総研が2020年10月に行った『2021年&2022年新卒採用動向調査』によると、個別採用に取り組む予定をしている企業は2021年実績と2022年予定で大きな差はなかったものの、個別採用を主軸にした採用を実施する予定の企業は24%と2021年実績の14%と比較すると10ポイントも上昇しています。
またマス向け採用においては、2021年実績ではマス型採用に注力する企業が33%であったのに対し、2022年卒予定では17%に減少しています。
引用:ProFuture株式会社 HR総研『2021年&2022年新卒採用動向調査』
21卒・22卒では新型コロナウイルスの影響で対面での接触を図れないことから、より学生一人ひとりに向き合う「個別採用」に移行する企業が増えました。さらに23卒・24卒では、ダイレクトリクルーティングなど個別採用に特化した手法が従来の手法に置き換わり、多くの企業で主要手法になりました。
25卒採用においては企業・学生ともに個別採用が定着したこともあり、個別採用がより重視されるようになるでしょう。
採用の早期化
株式会社学情が2023年5月に発表した『2025年卒採用に関する調査』のデータによると、
2025年卒採用について、「早期化する」と回答した企業は、8割を超えました。
採用競争が激しくなる中で、「採用を成功させるためには、早くから採用活動を実施する必要がある」と考える企業が多いようです。
また政府や経済界から提示されている採用ルールでは、大学3年の3月に企業の広報活動を開始、大学4年の6月から採用選考を実施することを企業に求めています。
大手日系企業も長らくこの採用ルールに従っていましたが、三菱商事株式会社が2023年2月に、24卒採用から採用面接を3月から実施すると発表しました。
他の大手企業も追随する可能性は高く、早期化の動きは中堅企業やベンチャー企業にも波及していくでしょう。さらに採用活動の開始時期だけではなく、内定出しのタイミングを早める企業も付随して増えると予想されます。
採用期間の長期化
また25卒採用は、採用期間が長期化することも考えられます。
その理由は、就活に対する学生の熱量・動き出しのタイミングに大きな差が生じているからです。
従来通り、希望する企業への内定獲得に向けて早期から就職活動に取り組む学生もいれば、新卒入社に力を入れず転職を前提に就職活動に取り組む学生も増えてきました。
学生の動きが活性化する時期が分散していることから、長期にわたり採用活動を実施しなければならないと悩む企業も増える可能性が考えられます。
またターゲットとなる学生の動きが活性化するタイミングの見極めも非常に重要になってくるでしょう。
オフラインコンテンツの重要性が増す
25卒採用では、新型コロナウイルスによる対面規制が大幅に緩和された採用活動になるでしょう。一方で新型コロナウイルスの影響で定着したオンライン面接・イベントはその利便性から多くの企業で継続されると考えられます。
しかしオンラインが定着したからこそオフラインの重要性が増しており、学生からも直接企業の社員とコミュニケーションを図る場を求める声が挙がっています。
職場見学・工場見学などオフラインの強みを活かせるコンテンツをどう作り上げていくかが、学生の興味・関心を大きく左右するでしょう。
25卒(Z世代)学生の就活動向
続いて、25卒(Z世代)学生の就活動向を解説します。
採用を成功に導くためには、年度ごとに学生の就活動向や意向を把握し、その時代に合った採用戦略を練ることが肝要です。
タイムパフォーマンスを重視
国語辞典などを手がける出版社・三省堂が発表した、「今年の新語 2022」では、『タイパ(タイムパフォーマンス)』という言葉が大賞に選ばれました。
時代を反映し、しかも議論の的となった言葉であったとして、全会一致で大賞に選ばれたそうです。
「コスパ」よりも「タイパ」という若い世代の価値観は、就職活動にも大きく反映されているようです。
マイナビ株式会社が運営するマイナビキャリアリサーチLabが発表した『タイパを意識した就職活動準備および就職活動調査』内の「メリットの方が多いと思うか、デメリットの方が多いと思うか」という質問では、次のような結果となりました。
- メリットの方が多いと思う:45.8%
- メリットとデメリットが半分半分だと思う:51.1%
- デメリットの方が多いと思う:3.1%
おおよそ半数の学生が就職活動の際、タイムパフォーマンスを意識することにメリットに感じています。また「メリットとデメリットが半分半分だと思う」も含めると、96.9%の学生が就職活動でタイムパフォーマンスを意識することに対しメリットを感じているようです。
引用:マイナビ株式会社 マイナビキャリアリサーチLab『タイパを意識した就職活動準備および就職活動調査』
かけた時間に対する満足感や効率を重視するZ世代に対し、企業は下記のような取り組みを意識しましょう。
1.学生に伝える確度を高める
特にインターンシップや説明会など、興味・関心を惹かれる企業探しのフェーズにおいて、学生は最もタイムパフォーマンスを意識するようです。
これらのイベントでは、企業が伝えたい情報を学生にきちんと理解されるわかりやすい形式に落とし込む工夫が必要です。
2.学生がタイムパフォーマンスを意識するフェーズ・しないフェーズを見極める
上記の通り、学生は企業探しの際、タイムパフォーマンスを意識するようです。一方でエントリーや選考など次のステップに進むか否かの判断や判断のための情報収集においては、タイムパフォーマンスを意識しない傾向が高いようです。
学生がタイムパフォーマンスを意識しないフェーズでは特に時間をかけ、学生との関係性構築に務めていきましょう。
オフライン回帰が進んでいる
25卒学生の就職活動では、オンライン回帰が進むと考えられます。
就活サイト「ONE CAREER」を運営する株式会社ワンキャリアが行った24卒学生を対象に行った調査では、「オフラインで実施されたインターンシップに参加したことがあるか」という質問に対して68%の学生が「ある」と回答しました。
23卒と比較し、2倍以上の結果になりました。
引用:株式会社ワンキャリア『2024年卒インターンシップの実態調査』
さらにインターンシップの実施形式についての質問では、「オフライン実施が良い」と回答した学生は58%を占めました。「オンライン実施が良い」と回答した学生は23%と2倍以上もポイント差があり、オフラインインターンシップのほうが学生から高い評価を得た結果になりました。
引用:株式会社ワンキャリア『2024年卒インターンシップの実態調査』
上記調査結果より、就活イベントにおけるオフラインへの回帰が顕著に進んでいる様子が伺えます。
25卒採用においても同様の傾向が現れると考えられることから、オンライン・オフラインの使い分けも採用活動のポイントになってくるでしょう。
25卒採用を成功に導く3つのポイント
最後に25卒採用を成功に導くポイントを3つに絞ってお伝えします。
Z世代が活用する情報収集ツールを把握する
従来の学生の就活情報収集ツールといえば、就職情報サイトが代表的だったでしょう。
しかしITリテラシーが高くSNSを使いこなすZ世代にとって、就活情報を収集するためのツールはもはや就職情報サイトではなくなりつつあるようです。
企業の採用広報やマーケティング支援を行う株式会社No Companyが行った「Z世代就活生のSNS活用に関する実態調査」の「企業に対して、どのSNSやメディアで就活情報を発信してほしいですか」という質問では、以下の結果になりました。
- Twitter:63.1%
- YouTube:47.5%
- Instagram:44.1%
- 就活情報ナビサイト:34.9%
本調査から情報収集先のメディアとして、就活情報ナビサイトはわずか3割程度しか期待されていない結果になりました。
さらに「SNSで仕事内容や働き方、社風などに関する情報を見て企業に興味を抱いた経験の有無」について問う質問では、45.5%が「ある」と回答しています。
引用:株式会社No Company『Z世代就活生のSNS活用に関する実態調査』
就活情報サイトよりもSNSを用いた情報提供に期待する声が多く挙がっている様子が見て取れます。企業はこのような学生の声や反応を反映したツールを用い、情報発信に務めていく必要があるでしょう。
学生が欲している情報を積極的に発信していく
ただ学生が求めるツールを用い情報を発信するだけでは、期待する学生の反応は得られないでしょう。
学生がSNSを用いた情報発信を求める背景には、就活情報サイトには記載されていない企業のリアルな実態や働く社員などのソフト情報を知りたいという意向があります。
株式会社No Companyが行った「Z世代就活生のSNS活用に関する実態調査」では、「企業に対して、オンライン上でどのような情報を発信してほしいですか」という質問に対し、「1日の仕事の流れ(57.9%)」が最も多くなりました。
引用:株式会社No Company『Z世代就活生のSNS活用に関する実態調査』
また福利厚生を除いた上位5つの項目は、就活情報サイトや企業の採用ページなどにあまり掲載されることのない情報であることも分かりました。
このような学生の意向を汲み、自社の魅力を訴求できる情報の発信を意識しましょう。
オフライン・オンラインを使い分ける
オンライン形式のインターンシップや選考会が定着したもののオフライン回帰が進んでいる実態も軽視できない25卒採用においては、オフライン・オンラインを使い分けが採用成功を左右する大きな要因となり得るでしょう。
その理由は、学生の動向にあります。
実際に学生は、情報収集を効率化するため、意図的にオフラインとオンラインを使い分けている傾向があるようです。
株式会社ワンキャリアが24卒学生に対し行った「夏季インターンシップに関するアンケート」によると、オフラインインターンシップとオンラインインターンシップそれぞれにおいて学生の参加目的が異なっていることが分かりました。
引用:株式会社ワンキャリア『2024年卒インターンシップの実態調査』
学生の評判が高かったインターンシップは、オフライン形式の場合「社員と関わる機会が多いインターンシップ」でした。またオンライン形式の場合は「業界や企業などに関する講義を実施したインターンシップ」だったそうです。
オフラインの強みを活かした企業イメージがより明確化するようなコンテンツや、オンラインの場合は「可能な限り多くの情報を得たい」というタイムパフォーマンスを重視する学生の意向を汲んだコンテンツを用意しましょう。
2025卒採用の市場動向と学生の就活動向|まとめ
本記事では、採用直結インターンシップ解禁をはじめとする25卒採用の市場動向とZ世代と呼ばれる25卒学生の就活動向を解説しました。
採用手法やトレンドが目まぐるしく移り変わる新卒採用において、採用を成功に導くためにはその年度の市場動向や学生の就活動向を的確に把握し、採用戦略に落とし込んでいかなければなりません。
本記事を参考に、自社の課題を洗い出し、採用成功に向けて施策を練り上げてみてください。
コラムを書いたライター紹介
日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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