「エシカルクール」をテーマに、Z世代と企業とを結びつけ新たなマーケットを創出する


代表が学生時代に起業し、「エシカルクール」というキャッチワードを掲げ、エシカル消費の理解を深めるために事業を展開している株式会社ラントレ。自分も含め、他の人や社会、地球環境や自然にとって、よいものを積極的に選ぶというエシカル消費は、とくに次世代の若者、いわゆるZ世代が敏感に反応し、指向しているといわれています。同社は、「エシカル」を軸に、Z世代の人たちとリアルなネットワークを構築しながら、商品開発や採用まで幅広い分野で企業とのコラボレーションを展開しています。今回、代表の塗野直透さんに、起業した背景と「Z世代にモテる企業になる」ための秘訣をお聞きしました。

まず、株式会社ラントレの事業内容について教えてください。

株式会社ラントレでは、大きく分けて2つの事業を展開しています。ひとつは、「Z世代にモテる企業になる」をテーマとするブランディング事業です。次世代の若者、いわゆるZ世代が企業に求めるものと、企業がZ世代に求めるものとにギャップがある場合が多いので、そのギャップを埋めるためのワークショップを開催したり、そこから生まれたアイデアをもとに商品を企画開発し、同時にSNSを中心としたプロモーションも展開しています。ほかに、我々は「大人の小学校」と呼んでるんですけど、地方の廃校になった小学校を使って、企業のワーケーションを実施しています。それと、私が起業した理由でもあるんですけれど、母子の自立支援施設の運営管理事業を展開しています。

学生時代に起業されたということですが、その背景について教えてください。

私は、母子家庭で育ち、7歳まで施設で暮らしていました。だから社会的に立場の弱い人にとって、この世界がもっと優しくなればいいと、幼い頃から思っていたんです。そのために、政治家になろうと決意し、東京の大学を目指しました。しかし、母に代わって私を育ててくれていた祖父が余命宣告され、実家から通える大学ということで大阪の大学に入学しました。入学と同時に牛乳を訪問販売する仕事を始めて、2年後の20歳の時に起業したんです。目標は、30歳で母子家庭の施設をつくるということでした。

エシカルに着目したのはどうしてなのでしょうか?

養父である祖父は、「ザ・昭和」という価値観を持った人でしたが、「いいものを買って、それを使い続けなさい」ということを教えてくれました。それで、知らず知らずのうちに、ものを大切にするということが身に付いたんだと思います。ものだけではなくて、人間関係とか環境との付き合い方も大切に考えることが大事だと思って……どうすれば、その思いをみんなに知ってもらえるかなと考えていたときに「エシカル」という言葉に行き当たったんです。それで、自分の利益だけでなく、他者や環境にまで配慮できる価値観を持った消費活動がカッコいいと思える「エシカルクール」というキャッチワードが生まれました。

これまで関わってきた企業が抱える問題意識とはどういうものでしょうか?

Z世代ってまだまだ若い層だと思われがちなんですが、1995年から2010年生まれの人たちで、下は13歳から上は28歳まで。だから、すでにマーケットの中心層になりつつあるんです。そのゾーンをターゲットとして考えないと、売り上げや採用という文脈では厳しくなるという危機感を持つ企業が増えつつあります。

株式会社ラントレに依頼することで期待できる効果とはどのようなことでしょうか?

モノ消費からコト消費、それからイミ消費へとマーケットの動向は変わってきています。ストーリーの共感性とか社会的意義をZ世代は見ていると思うんです。我々は、関西だけで100団体、2,000人のZ世代の人たちとのネットワークをオーガナイズしているので、彼らが今どのように流行をキャッチしているのか?どんなユーザー心理を持っているのか?などのリアルボイスを吸い上げて、実際にプロダクトやサービスに反映させることができます。ストーリーのシナリオ設計やブランドのコンセプトをしっかりZ世代とつくっていくということができるということ、Z世代の人たちをプロジェクトのメンバーとして巻き込んでいくことができます。

採用の分野では、「こういう人材が欲しい」というペルソナが決まっている場合もあれば、漠然としていることもあります。ペルソナが決まっている企業の場合、どういう心理を持っているのか分析したうえで刺さるコンテンツを考えます。我々が注目している「エシカル」を指向している人材を採用するメリットはまず、学歴が高いということ。社会課題に興味のある人は、やはり、国公立を中心とする名門大学の学生が多く、環境問題を含めた社会問題に対する意識が強いと思います。また、そこに積極的に取り組んでいる企業に就職したいと考える人が多くいます。その人たちに向けて、企業イメージだけではなく、実際に取り組んでいる内容を直接伝えることができます。

これまで具体的な事例があれば教えてください。

ある企業の採用に向けた取り組みで、TikTokを使って発信したことがあります。企業に入社してからの、新社会人の成長記録をストーリー仕立てで動画を作成して配信したんです。「働きやすい」をテーマに、できる限りナチュラルに社内の雰囲気を伝える内容でしたが、3カ月で7,000人のフォロワーを獲得して、1投稿あたりの再生回数は、最も高いもので500万回再生を実現しました。もちろん、予想以上の応募者がありました。企業の担当者からも「アカウントのファンで、毎日クスクスしながら動画チェックしてます」という声をよくいただきます(笑)。

今後、Z世代を受け入れる企業の人事担当者が注目し、注意することとはどんなことでしょうか?

ほとんどのZ世代が初めて持った携帯電話はスマホなので、SNSは当たり前という人たちばかりです。一昔前は、アメリカで流行ったものが、東京にきて大阪にやってくるという構図でしたが、現在では、ギャップがなくなってしまいました。世界中の人たちが、ほぼ同時にトレンドを受信できるようになったわけです。しかし、スピリッツの部分では、意外とそう変わっていないような気がします。この間、「Z世代の人たちのホワイト企業離れが進んでいる」という記事を読んだんです。「もっと厳しくして欲しい」とか「もっと怒られたい」とか、現状のぬるい環境に対して反発している人も多くいる。そういうのはなんとなく、昭和っぽいですよね。とかくZ世代は別物だと見られがちですが、通じている部分もあって、それを見つけていくことが大事。「何が違って、何が同じなのか?」、「どれだけ密な関係を構築していけるか?」が鍵だと思っています。

株式会社ラントレの今後についてお教えください

ひとつは、「エシカルクール」というワードをどんどん普及させて、「エシカルがカッコいい」と共感できる人をもっと増やしていきたいと思っています。6月には、グランフロント大阪で、「エシカルエキスポ2023」を開催します。Z世代の学生団体と企業がコラボレーションしてブース出展するというもので、オフラインで2万人、オンラインで20万人が集まる大規模なイベントとなります。セミナーや講演のような難しい内容ではなく、エンタメやワークショップなど「エシカル」に楽しく触れる機会をつくることで、「エシカル」の視野を広げることを目指しています。今年は大阪だけの実施ですが、来年は、東京との2カ所での開催、2030年には、47都道府県同時開催を目指しています。

もうひとつは、農業分野に力を入れていきたいと考えています。コロナ禍があって、ワークスタイルも変化しました。例えば、月曜日から水曜日までは、都心部でオフラインでしかできない仕事をやって、木曜から土曜は地方の畑をいじって、サウナに入って、午後はオンラインで仕事をするというようなことが、今後増えていくような気がするんです。実は、すでに福井県・高浜町で、遊休耕作地をお借りし、オーナーシェア制度を展開していて、関西の若者に参加してもらっています。日本の食料自給率がどんどん低下しているなか、農業や地方がもっと注目されていくと思っていますので、近い将来、事業として農業を考えられる人材を育てるアカデミーを開校したいと考えています。

お話をお伺いして

今、「エシカル」を指向しているZ世代の人たちが多いとされています。それは、小学生の頃から環境に対する教育を受けていることや、いずれ、自分たちが直面する問題だと認識していることに起因しているからだといわれています。株式会社ラントレは、Z世代のリアルボイスを吸い上げ、企業にフィードバックする事業を展開しながら、双方がウィンウィンの関係になることを目指しています。とくにZ世代が対象のほとんどを占める採用現場では、避けて通れない問題として捉えられています。商品やサービスを購入するユーザーとしてだけではなく、Z世代のリアルなニーズとウォンツを把握し対応することは、これからの企業活動において、不可欠な行動となるかもしれません。

コラムを書いたライター紹介

ウマい人事編集部

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人事担当者に役立つ情報を集めることが日々の日課。仕事のモチベーションは疲れた時に食べる人参です。

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