社労士が解説!働き方が多様化する現代で さまざまな雇用形態を助成する制度
終身雇用という考え方は、今はもう過去の話。また近ごろは、プライベートも重視しながら、仕事と家庭生活を両立する働き方も浸透してきました。多くの人がキャリアップや、より自分らしい生活スタイルを求めて、自由に働き方を選択する時代になっているのです。
そこで今回は、社会保険労務士の遠山大基さんに、今の時代に対応した「中途採用等支援助成金」と「両立支援等助成金」について解説していただきます。
前職での経験が即戦力になる。中途採用を支援
厚生労働省が発表している「令和2年転職者実態調査の概況」では、転職者側と事業主側、双方の観点から、転職についての動向を調査しています。
令和2年転職者実態調査の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
この調査から、転職者の離職理由としては「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」「満足のいく仕事内容ではなかったから」「賃金が低かったから」という回答が上位に挙がっています。
一方、事業主側の転職者の採用理由としては「経験を活かし即戦力になるから」「専門知識・能力があるから」といった回答が上位に挙がっています。
このような、転職希望者と事業主のニーズがうまくマッチすることで、互いにとって有益な中途採用が実現するといえるでしょう。
こういった状況の中で注目されるのが、中途採用の拡大に取り組む事業者を対象とした「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」です。
これは、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、中途採用の拡大を図る事業主を助成するものです。
対象となるのは以下の3項目です。
これらは助成対象となる内容によって要件や助成額が変わります。
ただ、いずれの場合もまずは中途採用計画を作成することが必要です。
こういった助成金を申請する際に、前提として必要なのが「計画の作成・提出」です。もし中途採用に注力していたとしても、事前に計画がなければ助成の対象にはなりません。
計画を策定する上では、中途採用者に適用される労働時間や休日、雇用契約期間、評価、処遇制度、福利厚生などが新卒者に適用される内容と同じであるなどの要件が求められます。
また、採用予定職種をはじめ、採用の予定時期や目的、採用後のキャリアモデルを定めることも必要です。 そして採用当初から、期間の定めのない労働者(いわゆる正社員)として雇い入れることも条件になっています。
【申請から支給までの流れ】
前回紹介したキャリアップ助成金との大きな違いは、雇用の段階で、正社員として雇い入れる必要があること。
前職で経験や実績を積んだ、即戦力になる人材を求める事業主にとっては、価値のある助成制度といえるでしょう。
仕事と家庭生活が両立できる、人にやさしい職場づくり
次に紹介するのが「両立支援等助成金」です。
高齢化社会が進むにつれ、最近では介護を理由に離職する人が増えています。また、育児と仕事の両立が難しく、仕事を辞めざるを得ない人もまだまだ多いのが現状です。そういった社会状況に対応するために、育児・介護休業法が改正され、段階的に施工されています。
2022年4月1日施行
雇用環境整備・個別の周知・意向確認の措置の義務化
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
2022年10月1日施行
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
育児休業の分割取得
2023年4月1日施行
育児休業取得状況の公表の義務化(従業員1000人超の企業)
育児・介護休業法の改正について→000851662.pdf (mhlw.go.jp)
このような流れの中で活用したいのが以下の、仕事と子育てや介護の両立を支援するための助成制度です。
1については、これまで育児休業を取得するのは主に女性だったことへの対策として、男性の育児休業取得を支援するための制度です。男性も育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制を整備し、実際に男性従業員が育児休業を取得した際に助成金が支給されます。
2は、介護に直面したスタッフと面談を実施し、「介護支援プラン」を作成します。そのプランに沿って当該スタッフが介護休業を取得したり、職場復帰するための柔軟な就労形態を整備した場合に助成金が支給されます。
3についても、事業主は育児に直面したスタッフとの面談を実施し、プランを作成することが要件となっています。このプランに沿って、円滑な育児休業の取得・職場復帰に取組む事業主に助成金が支給されます。
2と3については、休業時と職場復帰時の2段階構造になっており、それぞれの段階で支給を受けることができます。
このような制度を活用することで、介護や育児による離職を防ぎ、優秀な人材を確保・定着させることができるでしょう。
遠山社労士からのアドバイス
今回紹介した助成金を申請するためにまず必要なのは、計画書の作成です。中途採用や両立支援に取り組んでいたとしても、そもそも計画届を出していないと、助成金の申請はできません。事後報告では、要件を満たしていないとされてしまうのです。助成金はその目的も要件もそれぞれですし、計画書のフォーマットも違います。日ごろから行政の指針や助成金制度についてアンテナを立て、自社のプランにあうものがあるかをチェックしておきましょう。
遠山社労士事務所
社会保険労務士
遠山大基
当事務所では、人を雇用することで発生する事務手続き、助成金の提案・申請サポート、給与制度や賞与制度の構築など、各企業ごとの状況を把握した上でプラスアルファの価値が提供できるよう心掛け、日々対応させていただいております。
コラムを書いたライター紹介
ウマい人事編集部
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