高まる副業需要!『我が社は副業OK?』と聞かれた時、人事・企業が取るべき対応とは?


近年、話題になっている「副業解禁」のトレンドを受けて、自社においても制度導入を検討してる人事担当者も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな副業解禁のメリット・デメリットや副業禁止を継続する場合・解禁する場合のプロセスと考え方をお伝えします。
ある日突然、「我が社は副業OK?」と従業員に質問された時にスムーズに対応できるよう、事前に副業に対する制度を構築しておきましょう。

副業に対する国内の動向

政府は平成30年1月、副業・兼業について、企業や働く方が現行の法令のもとでどういう事項に留意すべきかをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を制定しました。
令和4年7月には一部内容が改定され、副業解禁・推進の動きがさらに活発化しています。
また日本経済新聞(2022年6月24日18:00)に『副業制限なら理由公表 厚労省、解禁加速へ企業に要請』の記事が記載され、副業解禁の動きに加速がかかっています。

しかし副業解禁が加速しているとはいえ、現在も副業を禁止している企業は少なくありません。そのため副業解禁の加速に伴い、労働者と企業間で副業可否を巡る争いが増加するのではないか?といった懸念の声も上がっています。

参考:厚生労働省_「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月8日改定版)

労働者の副業関心

まずは、副業対し労働者がどれほどの関心を抱いているのか、株式会社学情が2022年1月に実施した20代へのアンケートをもとに、その数字を確認していきましょう。
「勤務する会社で副業が認められていたら、副業をしたいですか?」という質問に対して、以下の回答が得られました。

  • 副業したい:58.4%
  • どちらかと言えば副業したい:29.3%
  • どちらかと言えば副業はしたくない:8.5%
  • 副業はしたくない:3.8%

本アンケート結果から、会社で副業が認められている場合、20代の約9割が副業を希望していることが分かりました。

また株式会社ワークポートが全国の20~40代のビジネスパーソンに行った副業に関するアンケートでは、「副業OKな会社への転職を希望するか」の質問に対して、80.0%が「希望する」と回答しました。

これからの会社の中心となりゆく20代には強い副業願望・関心があり、20代が組織の中心に代わる頃には今まで以上に副業解禁を望む声が大きくなるでしょう。
また株式会社ワークポートのアンケート結果から、すでに副業を始めている人・副業開始を視野に入れている人を中心に、転職先企業に希望する条件として『副業が認められている』という項目に重点を置くようになると考えられます。
つまり、“副業を容認していない会社は、求職者から選ばれなくなってしまう “という可能性も生じてくることが予想されます。

参考:株式会社学情
参考:株式会社ワークポート(副業経験について

副業解禁のメリット・デメリット

副業解禁は会社や組織にとって必ずしも恩恵をもたらす働きかけではありません。
企業規模や事業内容などを加味して、副業解禁が自社にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかを理解し、慎重に検討することで副業解禁可否の1つの判断軸を作ることができるでしょう。

副業解禁が企業にもたらすメリット・デメリットは下記の通りです。

<副業解禁のメリット>

優秀人材の確保・定着に寄与する

会社が副業を認めることで、従業員の定着率が上がり、優秀な人材の流出を防ぐことができるでしょう。
また採用時においても副業可能という条件に対し、魅力を感じる応募者は少なくありません。人事は採用時、応募者に対して『柔軟な働き方が叶う企業』という魅力訴求ができるようになります。

従業員の経験・スキル・知識が向上する

従業員は副業を通じて自ら様々な経験を得たり、スキル習得に励みます。
従業員が副業で得た幅広な経験・知識を本業に活かすことで、本業の業務クオリティー向上が期待できるでしょう。

事業拡大が期待できる

副業で得た情報や人脈を本業の新規事業展開、事業拡大に活かす社員もいます。
また副業で得た情報・人脈は、オープンイノベーションを生み出すきっかけにもなり、組織内部のイノベーションを促進させる可能性も秘めています。

<副業解禁のデメリット>

情報漏洩リスクがある

会社内で知り得た情報やノウハウなど、従業員が意図せず副業先に流出させてしまうリスクがあります。

退職を促進する懸念

従業員が副業に注力し始める可能性も十分に考えられます。
場合によっては、本業を退職し副業に転身することもあるでしょう。

本業と副業の稼働時間

休日や仕事後の時間を副業に充てる方も少なくありません。
副業にかかる労働時間が加わることでオーバーワークになってしまい、十分な休息が得られず本業に支障をきたしてしまうケースも起こり得るでしょう。

継続して副業を禁止する場合

企業にとって大きなメリットが得られると分かったとしても、すぐに副業を解禁に向けて動き出すことは難しいでしょう。またデメリットの方が多いと感じる企業もあるかと思います。
そのため、副業推進の動きが高まる中でも、継続して副業を禁止する企業もあるでしょう。

多くの企業では、就業規則内に『副業禁止』の旨を記載している傾向があります。
しかし、法的観点から言えば、たとえ就業規則で副業を禁止していたとして法的拘束力は持ちません。
「副業・兼業に関するガイドライン」には、『副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由である』と記載されています。

そのため企業は無条件に副業を禁止すべきではありません。
就業規則に「許可なく副業・兼業してはならない」と記載する場合は、従業員の副業内容をヒアリングした上で「副業・兼業に関するガイドライン」に則り下記4つの項目に該当するか否かで副業を禁止にするのか判断が求められます。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 業務上の秘密が漏洩する場合
  3. 競業により自社の利益が害される場合
  4. 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

副業解禁の動きが加速する中で、今後さらに多くの会社が副業を解禁するであろうと予想されます。
企業としての副業解禁のリスクは承知しつつも、メリットにも目を向け段階的に副業を容認する動きが求められるでしょう。

参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月8日改定版)

まとめ:副業解禁を推進していくために

副業解禁に向けて既に動き始めている企業もあるでしょう。
しかしただ副業を許可するだけでは現場に混乱が生じ、本来得られるメリットやパフォーマンスを得られなくなってしまいます。

副業解禁に向けて大切なのは、自社の副業ニーズを把握することです。
そして従業員の副業実態を調査し、その情報をもとに実情に合った副業制度の構築や対策を講じることが肝要です。
従業員と企業の双方がwin-winの関係になり、より双方が成長できるような副業のあり方を模索することで、副業解禁前には得られなかった大きな恩恵を享受できることでしょう。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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