適切な応募数の増やし方とは?避けるべきNG対策も解説

採用競争が激化する昨今においては、単に求人を掲載するだけでは十分な応募数を確保することが難しくなりつつあります。新卒採用・キャリア採用問わず、応募数の伸び悩みに苦心している採用担当者も多いのではないでしょうか。
単に応募数を増やすことが目的になってしまった場合、選考辞退や入社後の早期離職を招く恐れがあるため、短期的な施策には注意が必要です。そこで今回は、適切な応募数の増やし方や避けるべきNG対策について解説します。
応募数を増やす必要性とは?
採用活動で応募数を増やさなければならない理由は、より多くの選択肢の中から最適な人材を選定できる状況を作らなければならないからです。
応募数が少ない場合、選考を通過する応募者の数が限られてしまい、最終的に入社に至る人材を確保できる確率が低下する可能性があります。状況次第では、採用基準を下げざるを得なくなり、人材の質の低下を招く場合もあります。
適切な応募数を確保することは、企業の事業成長に寄与する最適な人材を確実に採用するために欠かせない要素だといえるでしょう。
応募数を増やすために確認しておくべき項目
本章では、応募数を増やすために確認しておくべき、次の3つの項目について解説します。
- 採用ターゲットのニーズ
- 自社が訴求している強みと採用ターゲットの興味との合致度
- 過去の応募データ
採用ターゲットのニーズ
応募数を増やすには、まず採用ターゲットのニーズの把握に努めましょう。
どのような条件や仕事内容が自社の定めたターゲットにとって魅力的なのかを把握することで、求人に記載している情報をターゲットの興味を喚起できる内容に置き換えられるようになります。
まず採用ターゲットの特性を詳細に分析しましょう。年齢や職種、スキル、経験年数、キャリア志向など、可能な限り詳細なペルソナを設定することで、採用ターゲットの行動特性を特定しやすくなります。次に、設定したペルソナが利用する情報収集ルートや関心を示す情報を分析しましょう。
また、競合企業の採用活動をリサーチし、どのようなアピールがターゲット層に効果的なのか、ベンチマーク調査を実施するのも有効です。得られた情報や分析結果をもとに、採用ターゲットのニーズに合致したブランディング戦略やマーケティング施策を立案・実施し、求人票を作成することで、採用ターゲットの興味を喚起し、応募につなげることができるでしょう。
自社が訴求している強みと採用ターゲットの興味との合致度
応募数が増えない要因として、訴求している自社の強みがターゲットの興味に合致していない可能性が考えられます。そのため、応募数増加に向けた施策に取り組む前に、自社の訴求している強みがターゲットの興味を惹きつけられているのか調べてみましょう。
多くの場合、求職者は、複数の企業を比較しながら応募先を決めます。
数ある候補企業の中から自社を選んでもらうためには、採用競合企業にはない独自の魅力を打ち出し、差別化を図らなければなりません。しかし、自社の打ち出している強みが採用ターゲットの興味と合致していない場合、応募を見送られてしまう場合があります。
企業が求職者に訴求する強みは、給与や福利厚生など待遇面だけに限るわけではありません。革新的な事業内容や成長性の高さ、ユニークな企業文化、柔軟な働き方、社会貢献性の高さなど、多様な魅力があります。
改めて採用ターゲット層に響きそうな強みを洗い出し、具体的なキーワードやキャッチフレーズに落とし込んでいきましょう。またアピールする際は、抽象的な表現に終始するのではなく、実際の社員の声や成功事例、データを活用するのも有効です。
たとえば、働きやすさを強みとして訴求する場合は、「働きやすい環境」ではなく「年間休日125日以上」「月平均残業10時間以下」など、具体的な数字を交えることで、自社の強みを効果的に訴求できるでしょう。
過去の応募データ
応募数を増やすには、過去の応募データを詳細に分析する必要があります。
過去の応募データを分析することで、実施した施策や利用媒体の効果や成果を定量的に把握でき、採用戦略の改善にも役立つでしょう。一方過去の応募データを分析しなかった場合、採用活動の課題や改善点が見過ごされてしまい、時間やコストの浪費につながるリスクがあります。
採用手法や媒体ごとに応募数、書類選考通過率、面接実施率、内定承諾率などの数値を比較・分析することで、費用対効果の高い採用手法や媒体を特定できるでしょう。成果の低い採用手法や媒体にかけていた予算を成果の高い採用手法や媒体に移行し、投資先を集中することで、採用コストを抑制しながら応募率を高められます。
応募数を増やすための施策例
応募数を増やすためには、多様な視点からのアプローチが不可欠です。
ここでは、応募数を増やす施策として、次の4つの取り組み例を紹介します。
- 採用チャネルを拡大する
- 採用ブランディングを強化する
- 現行の求人広告の内容を見直し、最適化を図る
- デジタルツールを利用する
採用チャネルを拡大する
応募数を増やすためには、新しい採用手法の導入を検討しましょう。
ダイレクトリクルーティングは、求職者に直接アプローチできる採用手法であり、転職潜在層にもリーチできます。また、企業文化を発信できるSNSは、採用ターゲットの興味を喚起する有効な手段となるでしょう。さらにリファラル採用は、既存社員のネットワークを活用することで、信頼性の高い候補者と接点を持てる機会を増やすことができます。
求人広告や人材紹介など、従来からある受け身の採用手法だけではなく、企業が自ら求職者に対してアプローチを行う採用手法を導入することで、これまで接点を持てなかった層からも応募が増える可能性が期待できます。
ただし、新しい採用手法を導入する際は、単に「流行しているから」という理由で導入するのは控えましょう。各チャネルの特性を理解し、採用ターゲットや自社に適した採用手法を選択することが大切です。
採用ブランディングを強化する
応募数を増やす手段として、採用ブランディングに注力するのも一つの方法です。
採用ブランディングとは、共感を通じて自社のファンを増やす施策であり、採用ブランディングの強化に努めることで、求職者は企業に対して魅力を感じ、働くことに期待を抱くようになるでしょう。
採用ブランディングに取り組む際は、共感を呼び起こすコンテンツの提供が極めて重要となります。単に情報を羅列・発信するのではなく、企業のビジョンやミッション、価値観などを、一貫したコンセプトやストーリーで発信することがポイントです。なかでも社会における自社の立ち位置や社会への存在意義を明確に示すことで、求職者は企業で働くことに対して価値を見出しやすくなります。
なお採用ブランディングは、社外だけではなく、自社で働く社員に対して実施するのも有効です。既存社員に対して採用ブランディングに取り組むことで、社員エンゲージメントが高まり、一人ひとりの社員がアンバサダーとして自社の魅力を発信する存在となるでしょう。
現行の求人広告の内容を見直し、最適化を図る
応募数を増やすにあたっては、現行の求人広告を見直してみることも有効です。
情報が不足していたり、曖昧な表現が多かったりすると、求職者は不安を感じ、応募をためらってしまいます。企業としてもせっかくの採用機会を逃してしまいかねません。
他の企業の求人に自社の情報が埋もれないようにするには、求職者の視点に立ち、採用ターゲットの興味を惹きつける求人広告の作成が不可欠です。
求人広告を見直す際は、求職者にとって「知りたい情報」が十分に盛り込まれているかチェックしてみましょう。特に、日々の仕事に直結する情報は、求職者が入社後の自分を想像する上で必須となります。業務内容やプロジェクト体制、チーム構成などを具体的に記載することで、求職者は入社後の働き方をイメージしやすくなるでしょう。また、抽象的な表現や専門用語は避け、未経験者でも理解できる言葉を用いたり数字を交えたりしながら、仕事の面白さややりがいを具体的に伝えるように心がけましょう。
さらに、求職者が入社後の未来を描けるように、「キャリアパス」を明記することも忘れてはなりません。入社後の役職や研修制度、キャリアアップのモデルケースなどを分かりやすく記載することで、求職者は自身のキャリアプランをイメージしやすくなり興味が喚起され、応募に至ることもあるでしょう。
デジタルツールを活用する
デジタルツールを活用することで、採用活動の効率化を図ることができ、より多くの求職者にリーチすることが可能になります。
たとえば採用サイトにおいてSEO対策に注力することで、検索エンジンから採用ターゲットに該当する人材を引き込める可能性が高まります。また、SNSを通じて企業の魅力を発信することで、新たな求職者との接点機会を創出できることもあるでしょう。さらに、オンライン説明会を導入することで、地理的な制約を超えて幅広い求職者に対してアプローチが可能になります。
デジタルツールを活用することで、より戦略的な母集団形成が可能になる、より多くの求職者にリーチできるなど、採用活動の効率が向上します。リーチできる数や範囲が広がるため、結果的に応募数の増加にもつながるでしょう。
応募数を増やすために避けるべきNG対策
応募数を増やすことばかりに注力すると、母集団の質の低下を招き、早期離職や採用コストの浪費につながる可能性があります。
ここでは、採用担当者が陥りがちな次の5つのNG対策について、想定されるリスクも含めて解説します。
- 給与や福利厚生を過剰にアピールする
- やみくもに応募数を増やそうとする
- 誇張表現や曖昧な表現を多用する
- スピードを過度に重視する
- 定着支援を考えずに採用活動を進める
給与や福利厚生を過剰にアピールする
給与や福利厚生の過度なアピールは、短期的な応募数増加には効果的が見込めますが、長期的な視点でみると企業の損失につながる恐れがあります。
「高年収」「充実した福利厚生」など待遇面ばかりを強調しすぎてしまうと、仕事内容や社風を十分に理解しないまま応募する求職者が増え、結果としてミスマッチにつながる懸念が高まります。
そのため企業は、待遇面だけでなく、仕事のやりがいやキャリアパス、企業文化など、自社の魅力を多角的かつバランス良く伝えることを意識しましょう。
やみくもに応募数を増やそうとする
応募数を増やそうと間口を広げすぎると、母集団の質の低下を招く恐れがあります。
一見すると応募数が増えるため、求める人材を採用できる確率が高まるようにも思われますが、適性の低い応募者が増えるだけに留まる場合もあります。
また、応募者対応に時間が割かれてしまい、本来採用すべき優秀な人材へのフォローが後回しになり、結果的に求める人材を逃してしまうリスクも考えられます。さらに、大量の応募者の中からふるいにかけるために書類選考を厳しくすると、採用ターゲットに該当する人材を見逃してしまうこともあります。
単に応募数を増やすことを目的とせず、「採用ターゲットからの応募をいかにして増やすのか」に焦点を当てながら施策を考えることが重要です。
誇張表現や曖昧な表現を多用する
求人情報に誇張表現や曖昧な表現を多用すると、求職者の期待が過度に高まる恐れがあります。
たとえば、昨年昇給している社員がたまたま多かっただけにもかかわらず、「多くの社員が1年以内に昇給」と表現してしまうと、誇張表現と捉えられてしまう可能性があります。また、誇張表現が実態と異なる場合、退職者がSNSや口コミサイトでネガティブな評価を投稿し、企業イメージが損なわれるリスクもあります。
応募数の増加を目的に自社の魅力を誇張するのではなく、事実に基づく情報の中でも自社の強みに焦点を当て、魅力の発信に努めることが大切です。
スピードを過度に重視する
「即日内定」「面接1回のみ」など、スピードを重視しすぎる採用は、企業と応募者の相互理解を深める機会を奪うリスクがあります。
企業が応募者のスキルや適性を十分に見極められていない状態、もしくは応募者が企業について十分に理解しない状態で採用・入社に至ってしまうと、早期離職のリスクが高まるでしょう。
スピード感を持った採用活動は重要ですが、適切な選考フローを維持しながら、求職者と企業双方にとって納得のいくプロセスを構築することが大切です。
定着支援を考えずに採用活動を進める
応募数の増加に注力するあまり、採用後のフォローがおろそかになると、せっかく採用した人材が短期間で離職してしまう可能性があります。
入社後研修やメンター制度など、長期的に活躍できる環境を整えなければ、採用の成果を最大化することはできません。特に、新入社員のスムーズな定着を促す仕組みであるオンボーディングが十分に整っていない職場では、新入社員が会社に適応できず、結果的に企業への定着率の低下を招いてしまう恐れがあります。
企業は、応募数増加に向けた施策の実行と並行して、入社後の定着支援にも注力しましょう。
採用活動を単なる人材確保の手段としてではなく、企業の持続的な成長や競争力強化に向けた事業戦略の一つとして取り組む姿勢を意識することが大切です。
まとめ
適切な応募数を確保することは、企業にとって事業成長に寄与する最適な人材を採用する上で欠かせない取り組みです。
しかし、応募数を増やすことだけに注力しすぎると、ミスマッチによる早期離職を招く恐れがあります。また、結果的に採用コストの増大や採用担当者の負担につながる可能性もあります。
応募数を適切に増やすには、まず採用ターゲットのニーズや自社の強みを明確にしましょう。その上で、適切な採用手法・媒体を選定しながら戦略的に採用活動を進めることが重要です。
また、応募数を増やす際には、給与や福利厚生の過剰なアピールや誇張表現など、短期的な成果を求めるあまり、誤った対策に走らないよう注意が必要です。応募者と企業双方にとって最適な採用プロセスを設計し、入社後の定着支援にも注力することで、長期的に活躍できる人材を確保できるようになるでしょう。
本記事で紹介したポイントを踏まえ、ぜひ採用活動の見直しを進めてみてください。
コラムを書いたライター紹介

日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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