外国人労働者を活用するメリットと活躍してもらうための職場づくり<第1回:外国人労働者の雇用状況と日本で働くメリット~>


少子高齢化の影響で、人手不足に悩む企業が増えています。そのため、外国人労働者を活用したいと考えているが、どのような点に注意したらよいかがわからず、悩んでいる採用担当者もいるのではないでしょうか。

本記事では2週に分けて、外国人労働者を雇用する際のメリットや注意点、活躍してもらうための環境づくりについて解説します。最後まで読むことで、外国人労働者を効果的に活用できるようになるのでぜひご覧ください。

外国人労働者の雇用状況

近年、日本では外国人労働者の雇用ニーズが急速に高まっています。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、2023年10月末時点での外国人労働者数は約204万人です。
届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新し続けています。

出典:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況

増加し続けている要因のひとつは、少子高齢化が進行する中で、労働力不足が深刻になっていることです。

もうひとつは、政府による外国人の就労支援の実施があります。これまでも、外国人留学生はいましたが、2019年に在留資格「特定技能」が新設されて以降、外国人労働者がより働きやすくなりました。

また、外国人を採用した企業に対して助成金が給付されるようになったことで、企業側が受け入れやすくなったことも大きな要因です。

さらに、企業のグローバル化が進み、外国語が話せる人材が必要になってきたことも要因のひとつになっています。とくに、インバウンド需要の高い観光地などは外国人労働者は貴重な人材です。

このような理由から、多くの企業が外国人労働者を積極的に採用しています。
とくに、製造業や介護、建設業など人手不足が顕著な業種では、外国人労働者は重要な戦力として欠かせない存在です。

外国人労働者の半数以上が小規模事業所で活躍している

2019年4月に施行された「改正出入国管理法」により、新たな在留資格として「特定技能」が創設され、より多くの外国人が日本で就労できるようになりました。この制度により、長期的に日本で活躍できるようになったことも、外国人労働者数が増加する大きな要因のひとつといえるでしょう。

注目すべき点は、外国人労働者の就労先です。外国人労働者と聞くと、大手企業や外資系のグローバル企業で働いているイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかし、近年では小規模事業所のほうが外国人を雇用しています。

出典:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況

グラフをみてもわかる通り、全体の36.1%は従業員数30人未満の事業所で働いています。
さらに、30人以上100人未満の事業所では19.3%となっており、半数以上は従業員数100人未満の事業所で雇用されているのです。

この背景には助成金や補助金が充実したことも大きく影響しています。中小企業は大手企業に比べ資金力が少ないことがほとんどです。そのため、技能実習生を採用して助成金を受けることで人件費の負担を抑えられます。
また、日本人よりも勤勉で、きちんと仕事をしてくれるといった側面もあり、採用が集まりにくい中小企業にとってはメリットです。

外国人労働者を活用するメリット

企業が外国人労働者を活用することには多くのメリットがあります。日本の労働人口が現象する中で、外国人労働者は重要な資源となり得ます。また、異文化ならではの創造性にも期待できます。外国人労働者を活用する主なメリットを見ていきましょう。

労働力を確保できる

外国人労働者を雇用することで、労働力を確保することが可能です。とくに製造業やサービス業など、労働集約型の産業では深刻な問題となっています。そのため、外国人労働者の受け入れは、即戦力となる人材を確保する手段として非常に有効です。

また、特定の技能や専門知識を持つ外国人労働者を雇用することで、競争力を高められます。実際に、IT分野などでは、高い技術をもった外国人労働者が重要な役割を果たしているケースは少なくありません。

海外目線での発想が得られる

外国人労働者の活用は、新しいアイデアが生まれる可能性があります。日本とは異なる文化圏に住む人の目線での発想から、日本人では想像のつかないようなヒントを得られることも多いです。

とくに、海外向けに事業展開している企業においては、外国人の意見を取り入れることで、開発やサービス提供がしやすいなどのメリットがあるでしょう。
また、日常の外国人労働者とのコミュニケーションの中でも、海外目線での発想がヒントになることは多く、業務改善などにつながることも期待できます。
このように、外国人労働者の活用をきっかけに、新たなビジネスチャンスが生まれることや、課題解決のきっかけになるケースは少なくありません。

グローバル化への対応

外国人労働者の活用は、企業のグローバル化へ対応するための重要な手段となるでしょう。グローバル化への対応は、海外での展開を行っている企業に限った話ではありません。
たとえば、顧客として外国人を相手にするケースなどもあるでしょう。従来は外国語が話せず対応に苦戦していたようなケースでも、外国人労働者がいることでコミュニケーションが円滑になります。とくに、英語以外の言語を話せる人材は貴重です。

また、企業文化がグローバルな考え方に変わることもあります。
さまざまな文化背景を持つ人が共に働くことで、社員同士の異文化理解が深まり柔軟な考え方や適応力の向上が期待できるでしょう。

企業イメージが向上する

外国人労働者の活用は、企業イメージの向上にもつながります。グローバル化が進む近年、外国人を積極的に採用している企業は好印象です。
国際的な視点を持つ企業として認識されることで、社会的評価が高まる可能性があります

また、採用面においても、グローバルな環境で働きたいと考える人にとって、外国人と一緒に働ける職場は大きな魅力となるでしょう。若手人材の確保が難しくなってきている現代においては、人材獲得にもつながるメリットがあります。

海外進出のきっかけとなる

外国人労働者の活用が海外進出のきっかけとなるケースもあります。海外への事業展開を考えている企業にとっては、外国人社員の存在が後押しとなることもあるでしょう。

たとえば、展開したい国の出身者がいた場合、現地に詳しい人材がいることで、スムーズな進出が可能です。文化や習慣などを理解した上で進出できるため、リスク軽減と成功確率の向上につながります。

このように、海外進出を視野に入れている企業にとっては、外国人労働者の活用は大きなメリットです。

外国人労働者が日本で働くメリット

外国人労働者が日本で働くことには、さまざまなメリットがあります。これらのメリットは、単に経済的な側面だけでなく、キャリア形成や生活の質の向上にも大きく関わっているのです。以下のような点で、外国人労働者は日本で働くことに魅力を感じています。

社会保険制度に加入できる

外国人が日本で働く大きなメリットのひとつは、日本の社会保険制度に加入できることです。健康保険は自己負担額が3割と少なく、家族が日本に住んでいる場合は、同様に健康保険の恩恵を受けられるため安心した生活が送れます。

一定の条件を満たせば、帰国後も日本の年金を受給できる点も魅力的なポイントといえるでしょう。また、健康保険だけでなく、年金や雇用保険にも加入できます。これらの社会保険制度は、日本での生活を支える重要な要素となっており、外国人労働者にとって大きなメリットです。

日本の技術を学べる

日本で働く外国人にとって、高度な技術や伝統的な技術などを学べることも大きなメリットです。日本は多くの分野で世界をリードする技術大国であり、日本の技術を学べることは貴重な経験となります。

とくに、製造業などで多く使用されている産業用ロボットの技術などは世界でもトップクラスです。こうしたトップレベルの技術は他国では習得できません。外国人労働者にとって、日本で習得した技術や知識は母国の企業で高く評価されやすいため、帰国してからの大きなキャリアになります。
さらに、日本の企業文化や仕事への姿勢を学ぶことで、異文化の理解力や適応力も習得できます。これらは、国際的な視野を広げるための重要な経験となり、将来的に大きな強みとなるでしょう。

安心して働ける

外国人が日本で働くことで得られるもうひとつのメリットは、安心して働けることです。日本は犯罪率が低く、安全な国として知られています。そのため、日常生活においても不安が少ないでしょう。

また、雇用環境の良さも大きいです。日本の労働法は労働者の権利を強く守っているため、不当に解雇されない安心感があります。欧米の企業では、簡単に解雇されることも少なくありません。

また、一般的な企業では、定期的な昇給や賞与の支給があるため、経済的にも安定した生活を送れる安心感もあるでしょう。
さらに、日本で働くことで得られる「信用」もあります。日本での就労経験は、グローバル企業からも高く評価されることが多く、将来的なキャリアアップや転職の際にも有利になることがあるのです。

まとめ

このように、外国人が日本で働きやすくなったことで、企業にとってもメリットをもたらしています。一方で、日本で働くことに不満を持っている外国人労働者も少なくありません。

次回は外国人労働者を雇用する際の注意点や、活躍してもらうための職場づくりについて解説します。

 

 

コラムを書いたライター紹介

松尾隆弘

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キャリア30年の元人事担当。3業界で採用や社員教育、労務管理に従事。社内FPとして退職後のキャリア支援や人事コンサル事業にも携わる。2022年にライターへ転向し、現在は採用や転職・人材育成などHR分野を中心に執筆活動中。

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