採用活動におけるChatGPT(生成AI)の活用方法と利用時の注意点
生成AIの一種である「ChatGPT(OpenAI社)」は、2022年11月の公開直後から急速にユーザー数を拡大し、世界中の注目を集めました。続いて、「Gemini(Google社)」や「Copilot(Microsoft社)」など、大手IT企業からも新たな生成AIサービスがリリースされ、AIはより身近なものになりつつあります。
ChatGPTをはじめとする生成AIは、主にテキスト作成において重宝するツールです。企業の採用活動業務の一助になる可能性も高く、活用を検討している採用担当者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、採用業務効率化に向けたChatGPT(生成AI)の活用法や利用時の注意点についてお伝えします。
日本企業のChatGPTの利用率
株式会社MS-Japanが実施した『管理部門のChatGPT使用実態調査』によると、管理部門におけるChatGPTの利用率は7%に留まる結果となりました。ChatGPTの認知度は、同調査において76%と高い数値になったものの、実際の業務に活用している企業はまだ少ないようです。
引用:株式会社MS-Japan『管理部門のChatGPT使用実態調査』
その理由として、セキュリティ面を懸念視するケースもあり、活用に踏み切れない企業が多いと推察されます。しかし、職種別の使用経験では、人事の利用が最も高く、管理部門の中でも人事や採用はChatGPTを活用しやすい部門と言えるでしょう。
ChatGPT先進国アメリカのChatGPT活用実態
株式会社MM総研が実施した『日米企業におけるChatGPT利用動向調査(2023年5月末時点)』によると、アメリカ企業の51%がChatGPTをはじめとする生成AIをビジネス現場に導入しているそうです。
引用:株式会社MM総研『日米企業におけるChatGPT利用動向調査(2023年5月末時点)』
半数以上もの企業が生成AIを導入するアメリカでは、採用活動においてもChatGPTが活用されており、採用業務の効率化の一翼を担っているようです。
なお、採用業務においてChatGPTを活用している事例としては、「職務記述書の作成」「面接要件の下書き」「応募者への返信」などが挙げられます。
引用:ヒューマングローバルタレント株式会社【Daijob HRClub】
上記グラフの通り、職務記述書の作成や応募者とのやり取りといったルーティン作業は、既にChatGPTが採用担当者の肩代わりをしており、採用担当者はコア業務に集中できる体制が敷かれていると言えるでしょう。
採用活動におけるChatGPT活用方法
前述のアメリカのChatGPT活用実態を踏まえ、ここでは採用活動におけるChatGPTの活用法を紹介します。
求人広告原稿の作成
採用活動において、求人広告原稿の作成は欠かせない工程の1つです。しかし、掲載媒体やターゲットに合わせた原稿を作成するとなると、手間も時間もかかってしまうでしょう。
その点ChatGPTを活用すれば、効率的に求人広告原稿を作成できます。
ChatGPT活用にあたっては、「エンジニア職を採用するため、採用サイトに掲載する文章を考えてください」という指示文でも、基本的な内容を抑え原稿を生成してくれます。
より精度の高い原稿作成を求める場合は、さらに細かな要件を伝えましょう。
求人広告原稿の他にも、英語や中国語などの外国語で求人広告を作成する際にも重宝するでしょう。さらにキャッチコピーや求人タイトルを作成する際もChatGPTを活用することで、バリエーションに富んだ案を素早く作成できます。
他にもA/Bテストの実施に向け、求人広告原稿のニュアンスや文章の雰囲気・内容を変えたい時、すぐに複数の案を生成してくれるでしょう。
面接時の質問の作成
面接時の質問は、採用ターゲットにマッチしているか図る上で重要な役割を担います。しかし職種や経験の度合いに応じて、都度採用担当者が質問を考えているようでは、時間がいくらあっても足りません。
ChatGPTに面接時に使える質問のアイデアを出してもらうことで、作業の効率化を図ることができるでしょう。
ChatGPTを利用する際は、「エンジニア職の採用面接で使える質問リストを作成してください」という簡単な指示文でも複数の質問を生成してくれます。
また、質問の個数を具体的に指示すると複数の質問を同時に考えてくれます。考えて欲しい質問の数を多めに指示しておくと、質問の漏れを防げるでしょう。
さらに自社で活躍している人材のデータをChatGPTに連携・記憶させることで、より効果的な質問を生成することも可能になります。
テンプレート作成
採用活動では、各プロセスに適したメールテンプレートを用意しなければなりません。メールテンプレートの作成もChatGPTを活用することでスムーズに進むでしょう。
「不合格通知テンプレートを作成してください」「合格通知を作成してください。次の選考である○○についての案内文も一緒に作成してください」などの指示をすると、指示に沿ったテンプレートが生成されます。多少の手直しは必要になりますが、テンプレートの土台ができていれば、テンプレートの作成時間を短縮できるでしょう。
またChatGPTを用いてテンプレートを作成する際は、選考時の印象や良かった点、フィードバックなどの情報を添えた上で作成を指示すると、より応募者に寄り添ったパーソナライズされたメールが生成されます。
スカウト文作成
ダイレクトリクルーティングなどのスカウト文章の作成においてもChatGPTは効力を発揮します。採用活動用のテンプレート作成の要領でスカウト文のひな型を作成する他、個別にカスタマイズした文章を作成する際にも役立つでしょう。
具体的には、スカウト配信対象となる候補者の属性情報をChatGPTに伝えることで、属性情報にマッチしたスカウト文が生成されます。
1人ひとりの候補者に対して細かくカスタマイズするには人の手が必要になりますが、属性に則したスカウト文を作成できる点は採用業務向上に寄与することが期待できます。
ChatGPTを採用活動に導入する際の注意点
安全にChatGPTを利用するためには、リスクや注意点に対する理解を深めておく必要があります。
ここでは、株式会社MM総研が実施した『日米企業におけるChatGPT利用動向調査(2023年5月末時点)』の「ChatGPTを利用維持・拡大していく上での主な課題」を参考に、ChatGPTを導入する際の注意点を紹介します。
引用:株式会社MM総研『日米企業におけるChatGPT利用動向調査(2023年5月末時点)』
生成された文章をそのまま使用しない
ChatGPTは必ずしも正確な回答をするわけではありません。またデータが古い可能性もあります。2024年4月時点におけるChatGPT『GPT-4』の学習範囲は、2023年4月までと言われています。
さらに他者が著作権を保持する情報や、公序良俗に反する文章などが含まれる可能性もあるでしょう。ChatGPTが生成した文章をそのまま使用するのは控え、参考や下書きのベース程度に留めましょう。
応募者の個人情報、企業の機密情報流出に留意する
Web版ChatGPTを使用すると、入力情報がChatGPTの学習に利用されてしまいます。
情報の漏洩に直結するリスクも考えられるため、安易に応募者の個人情報や企業の機密情報をWeb版ChatGPTに入力するのは控えましょう。
個人情報・機密情報に関しては、社内のイントラネットに実装された生成AIでの使用に限るなどルールを設けておくことも必要です。
ChatGPT活用に固執しすぎない
ChatGPTは、業務効率の向上を実現してくれるツールです。しかしChatGPTを使い慣れていない場合、かえって作業効率の低下を招いてしまう懸念も考えられるでしょう。
業務の効率化を目標にChatGPTを導入する場合でも、ChatGPTの活用に固執せず、できる範囲からChatGPTを利用していきましょう。また必要に応じてChatGPTの活用法を学んだり、セミナー・勉強会などを通じて自社に落とし込める活用法を探したりするのも1つです。
ChatGPTを導入する際は、少しずつ採用業務に浸透させる意識を持ちましょう。
まとめ
今回は採用活動におけるChatGPT(生成AI)の活用法と利用の注意点を紹介しました。
日本でChatGPTを導入している企業はまだ少数ではあるものの、テクノロジー技術の進化に伴い、今後日本でもChatGPTをはじめとする生成AIの導入が進むと考えられます。
採用競争が激化し、採用担当者の負担が増大する昨今においては、ChatGPTの活用によって業務効率や精度の向上を実現できる可能性があるでしょう。ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、生成AIの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
コラムを書いたライター紹介
日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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