【五月病対策】新人の早期離職を防ぐために人事がやるべきこと


新入社員は、新生活がスタートして1か月が経過した頃から少しずつ職場に慣れてきます。一方で、5月の連休明けに体調を崩したりモチベーションの低下が見られる「五月病」の蔓延を気にしている人事担当の方もいるのではないでしょうか。

新人社員の離職を未然に防止するには、GWまでに対処することが大切です。この記事では五月病の原因や職場にもたらす影響、企業ができる7つの対策を紹介します。また、後半には実際の企業事例も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

五月病とは

5月の連休明けに体調を崩したり、明らかにモチベーションが低下したりする状態が「五月病」と呼ばれており、新人の離職が増えるのもこの時期の特徴です。入社から1か月が経過した5月に起こりやすいことから「五月病」と呼ばれており、正式な病名ではありません。新入社員に症状が出やすいことから、主に新卒を指して言われることが一般的です。

しかし、新入社員に限ったことではありません。人事異動や転勤などで環境変化のあった従業員が、新しい環境にうまく適応できず心身に不調があらわれることもあります。
そのため、人事担当者や管理職が従業員に細かく気を配り、適切な対応を行うことが大切です。

五月病はどうして起こるのか

新社会人は、学生時代とは異なる生活環境へ適応しなければなりません。また、環境が一変する中で多くの問題や悩みに直面し、ストレスがかかりやすい立場に置かれています。その緊張の糸がGWで切れてしまい、五月病になるケースが一般的です。
主な原因としては、以下のようなことが挙げられます。

想像と現実のギャップを感じた

自分が想像していた理想と現実にギャップがあると、やる気や自信がなくなり、消極的になることやストレスを感じることがあります。たとえば、スキル不足を感じたり、仕事内容が自分の抱いていたイメージと違ったりする場合が挙げられます。
ギャップが大きいほど精神的なショックも大きく、五月病につながりやすくなります。

環境の変化に対応できない

職場の労働環境が原因になることも多くあります。

たとえば、以下のようなケースです。

  • 業務量が多い
  • 仕事の内容が合わない
  • 思うように自分の強みが出せない

特に、新社会人は学生時代と大きく環境が変わるため、心身ともに影響しやすい傾向です。

新しい職場になじめない

「職場での人間関係をうまく築けない」といったストレスも原因のひとつです。会社では、すでに働いている人たちの輪ができているため、周囲の人たちにうまく溶け込めない人も少なくありません。また、赴任に伴う引っ越しで友人と疎遠になり、孤独を感じる人もいます。

目標を見失った

長期にわたって就職活動を行ってきたため、「就職」という目標を達成したことで「燃え尽き症候群」になってしまうケースも多くみられます。「内定を獲得すること」が最終目標となり、目的を達成したら「次は何をすべきか」が見つからない状態に陥りがちです。
このように、就職活動中には「やりたいこと」があっても、いざ就職すると目標を見失い、やる気が出なくなってしまうことがあります。

五月病の症状が出やすい傾向がある人の5つの特徴

五月病は新入社員に限ったことではありません。転職や転勤、部署移動などで起こる人もいます。症状が出やすい傾向の人には共通の特徴があるため、把握しておけば未然に防ぐことが可能です。
症状が出やすい人の特徴には、次のようなものがあります。

1.目の前の仕事に一生懸命な人

仕事に対して真剣に取り組む姿勢がある人ほど、責任感が強い傾向にあります。「早く仕事を覚えたい」「一人前になりたい」といった思いが、ストレスになるケースは少なくありません。
このような人ほど、ひとりで問題を抱え込むことや自己嫌悪に陥りやすいのです。悩みを抱えると落ち込みやすくなるため、上司や人事側から積極的に話しかけることを心がけましょう。

2.理想が高い人

会社に高い理想を抱いている人ほど、現実と理想のギャップが大きくなりがちです。新入社員は企業で働いた経験がないため、職場に対する理想や期待が高い傾向にあります。しかし、理想が高すぎると、現実に適応しにくいのです。
理想を追求しようとすればするほど、現実とのギャップを感じやすくなり、うまく適応できずにストレスがたまりやすくなります。

3.完璧主義の人

完璧主義の人は、自分に過剰なプレッシャーをかけがちです。細かいミスにも神経質になり、常に高いレベルを維持しようとして疲れてしまうことがあります。
また、他人からの評価を気にしすぎる傾向があり、周囲に「完璧にできていない」と思われるのを避けるため、大きなストレスを抱えてしまうことも少なくありません。「いい加減に仕事を進める人」を許容できないのも、完璧主義者の特徴です。

4.ネガティブに考える人

ネガティブな人は、自分のことを過小評価する傾向があります。ちょっとしたことでも悲観的に捉えてしまいがちです。このような人は環境変化に柔軟に適応しにくく、心を病んでしまう原因になることがあります。
また、モチベーションの低下により、人間関係がうまくいかなくなるケースもあります。ネガティブな考え方が周囲との壁を作り、コミュニケーションを避けるようになってしまいがちです。

5.人や場の雰囲気の変化に敏感な人

場の雰囲気の変化を敏感に感じ取る人は、新しい環境の中で常に緊張感を持っているため、わずかな変化にも過剰にストレスを感じやすくなります。周りの微妙な空気の変化を敏感に察知するため、人間関係の悩みが生じやすいのが特徴です。
このような人は過剰に自己防衛的になりがちで、周りの人と打ち解けにくくなり、孤立感や疎外感が芽生えやすくなります。

五月病が職場にもたらす影響

五月病は企業にとっても、さまざまな影響があります。場合によっては深刻な問題に発展するケースもあるため、早めに変化に気づくことが重要です。
具体的には、以下のような影響が生じます。

社員同士の人間関係が悪化する

仕事に対する熱意が低下すると、ミスや怠慢が目立つようになります。その結果、他のメンバーの業務負担が増え、不満が生じることでチームワークが保ちにくくなります。周囲との会話も少なくなり、意思疎通ができなくなると人間関係に亀裂が入りやすくなります。
このような状態になると、ひとりで抱え込む傾向が強まります。

業務効率が低下する

仕事へのやる気や意欲が低下すると、モチベーションが保てないため、生産性が落ち業務効率の低下につながります。作業にミスや遅れが生じることはもちろん、勤怠に影響が出る可能性が高くなります。
欠勤や遅刻が増えれば、チーム全体の業務効率は上がりません。このように、個人のパフォーマンスだけでなく、組織全体の業務効率が著しく低下すれば企業経営に大きく影響します。

潜在化した労働問題を見逃す

無気力になると、上司や同僚とのコミュニケーションが低下します。そのため、職場の労働問題に関する情報が入ってこなくなり、問題を見逃してしまうことも少なくありません。モチベーションの低下で以下のようなことが起こり、のちに大きな問題に発展する可能性があります。

  • 職場環境の改善や労働条件への関心が薄れ、労働問題に気づきにくくなる
  • 現状に満足できずストレスを感じつつも、受け入れざるを得ない心理状態に陥る
  • 作業に集中できなくなり、小さな問題を見落としがちになる
  • 職場環境を報告する意欲が失われ、労働問題の発見が遅れるリスクが高まる

このように、五月病が続くと従業員の問題意識が希薄になり、職場の労働問題を見過ごしてしまうのです。対策も重要ですが、潜在的な問題の掘り起こしにも力を入れる必要があります。

うつ病を発症する可能性がある

五月病の状態が続くと、仕事へのモチベーション低下や人間関係のストレスなどが慢性化し、蓄積していきます。その結果「うつ病」になる可能性が高くなるのです。もし、うつ病へと悪化すれば「安全配慮義務」や「職場環境配慮義務」を怠ったと見なされる可能性があります。

企業ができる7つの対策

五月病を防ぐには、ストレスや疲労をため込まないための取組みが必要です。
職場で取り組める具体的な対策を7つ紹介します。

1.積極的に声をかける

新入社員は新しい環境に不安を抱えがちです。上司や先輩が積極的に声をかけることで安心感が得られます。声をかける機会を増やし、相談しやすい関係性が構築しましょう。人は声をかけられたり、褒められたりすることでモチベーションを維持しやすくなります。
コミュニケーションが活発になれば小さな変化にも気づきやすくなり、五月病の初期段階で発見でき、早めの対応が可能です。このように、積極的に声をかけることは、従業員の不安解消やモチベーション向上などに効果的です。

2.社内の制度を整備する

五月病を防ぐためには、新入社員が仕事のことで頭がいっぱいにならないように配慮することが重要です。たとえば、有給休暇を取得しやすい環境があれば、精神的・肉体的な疲労がたまる前にリフレッシュできます。
企業として、ワークライフバランスを保てる環境を整備することが重要です。

3.ストレス原因の特定

ストレスの原因を特定することで、本質的な問題が明確になります。原因には個人差があるため、個々に合わせた適切な指導や環境改善が必要です。また、ストレスの兆候を把握しておけば、事前に気づきやすくなり症状の深刻化を未然に防げます。
ストレス原因を分析して組織や職場環境の課題を明確にし、改善策を講じましょう。

4.コミュニケーションの促進

新入社員は新しい環境に不安を抱えがちなため、声をかけられたり気軽に話しかけられたりすることで、精神的な支えになります。頻繁にコミュニケーションをとることで、相談にも乗りやすくなり、変化に気づくことが可能です。
また、気軽に話せる相手がいれば不安や悩みを打ち明ける機会が増え、メンタルの負担が軽減されます。

5.福利厚生の充実

心身ともに健全な状態を保ち、ストレスにうまく対処してもらうためには、福利厚生を充実させることも効果的です。物理的な環境を整えることも、五月病対策の鍵となります。代表的なものとして「健康診断の実施」や「休憩スペースの設置」などがあります。
設置する際は健康管理やメンタルケア、リフレッシュの側面から総合的に考えることがポイントです。

6.悩みを相談する窓口を設置する

従業員が悩みやストレスについて相談できる部署を設置しましょう。相談内容によっては「カウンセラー」や「産業医」に取り次ぐことも必要になるため、相談窓口は人事が担当するのが一般的です。
また相談部署を設置したら、その存在を全社員に周知徹底しましょう。福利厚生の一貫として、社内の人に知られずに利用できる健康相談サービスを導入している企業もあります。

7.セルフケアできるサポートの導入

五月病の防止は、問題が大きくならないうちに相談することがことがポイントです。しかし、対面では相談しにくいという人も少なくありません。このような人向けには、オンラインで相談できる外部サービスを利用してもよいでしょう。
また、従業員の異変に気づいたら必要に応じて専門医を紹介できるように、全員に産業医を周知しておくことも有効です。

企業の取り組み事例

メンタルヘルスは、仕事上でのパフォーマンスにもつながるため「セルフケア」を福利厚生の一環として取り入れている企業も増えています。
最後に、3つの企業による制度や取り組み事例を紹介します。

西川株式会社

西川株式会社では「ちょっと寝ルーム」を設置して、日中に短時間の仮眠をとることで、仕事のパフォーマンス向上やミスを予防する取り組みを行っています。仮眠に適した光と音、アロマの香りの部屋で、15〜20分の仮眠でリフレッシュして生産性を向上させるのが目的です。

LINEヤフー株式会社

LINEヤフー株式会社では、社内にマッサージルームが設置されています。マッサージルームは、国家資格を有するマッサージ師が常駐しており、好きな時間に施術を受けることが可能です。1回500円で、月4回まで利用できます。

パナソニックインダストリー株式会社

パナソニックインダストリー株式会社では、健康経営推進事務局が主体となり、社内担当者や産業医、社外講師による研修で「セルフケア教育」を実施しています。内容はメンタルヘルスや食生活、睡眠、肩こりなど健康全般についての学習です。
また「健康パナソニックパナエクササイズ体操」を実施して、業務の合間にリフレッシュや体力・筋力UPが行えるようにしています。

まとめ

五月病の防止対策は「早期に気付いて対処すること」と「防止のための環境づくり」です。多くは環境の変化によるストレスが原因で発症します。したがって、積極的にコミュニケーションをとることや、相談しやすい環境を作るなど、入社直後から細かな気配りをしましょう。また、メンタルヘルス不調は、新人に限らず従業員全員が発症する可能性があります。

従業員のストレスは企業全体の生産性に影響を与えるため、企業として「心のケア」にも注力しなければなりません。従業員がリラックスできる環境を整備するなど、積極的に対策することが社員の健康を守ると同時に、離職率の低下と従業員定着率アップにつながります。この機会に、社員のメンタルヘルス対策に取り組みましょう。

コラムを書いたライター紹介

松尾隆弘

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キャリア30年の元人事担当。3業界で採用や社員教育、労務管理に従事。社内FPとして退職後のキャリア支援や人事コンサル事業にも携わる。2022年にライターへ転向し、現在は採用や転職・人材育成などHR分野を中心に執筆活動中。

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