『リファラル採用』が注目される理由と運用・定着のポイント


人材獲得競争が激化する中、採用活動に苦戦を強いられている企業も多いでしょう。
求職者の意向や時代の流れに合わせ、最近では新しい採用手法が次々と登場しています。

中でも自社社員から候補者を紹介してもらう『リファラル採用』が注目を集めています。
アメリカでは既に多くの企業で活用されている手法であり、日本でも「転職潜在層にアプローチできる」「入社後の定着率が高い」などの魅力から導入する企業が増えつつあります。

本記事ではリファラル採用の概要や注目を集める理由を解説します。合わせてメリット・デメリットから具体的な運用方法、定着のポイントも紹介します。
人事・採用担当者にとって有益な情報をまとめているので、リファラル採用を成功に導きたいと考える方はぜひご覧ください。

リファラル採用とは?

リファラル(Referral)とは、「紹介」「推薦」などの意味を持つ英単語です。
リファラル採用とはその意味の通り、在籍社員に友人・知人などを紹介してもらう手法であり、ダイレクトリクルーティングに属する採用手法の1つです。求人に対して応募を待つのではなく、求める人物像に近しい人材に積極的にアプローチできる手法として、近年注目を集めています。

元々はベンチャー企業やスタートアップ企業が取り組んでいた手法ですが、近年では大手企業や老舗企業も運用を始め、キャリア採用では6割以上、新卒採用でも4割近くの企業がリファラル採用を実施しています。

引用:エン・ジャパン株式会社(リファラル採用(社員紹介)意識調査)

 

参考:株式会社MyRefer(リファラル採用実施企業500社の実態調査)

リファラル採用のメリット

リファラル採用には、人事・採用担当者の悩みを解決に導く様々なメリットがあります。
具体的には、下記のようなメリットが得られます。

  • 内定辞退・早期離職の防止
  • 採用コストの低減
  • 会社全体で採用に取り組む土壌が形成される
  • 採用成功確率を高められる

内定辞退・早期離職の防止

リファラル採用の場合、履歴書といった紙面上の情報のみならず、紹介者からパーソナリティやビジョンなどの情報を得た上で採用候補者にアプローチできます。そのため採用候補者1人ひとりに合ったアプローチが可能になるでしょう。
一方で採用候補者にとっては、求人情報サイトには掲載されていない職場環境や人間関係などのリアルな情報を在籍社員から聞くことができます。そのため、自身にとってよりカルチャーフィットする企業を選択でき、納得した上で選考に臨めるようになります。

結果として企業・採用候補者双方のミスマッチを未然に防ぎ、内定辞退や早期離職の低減に寄与するでしょう。さらにリファラル経由の場合、説明会や選考時の欠席、ドタキャンのリスクが少ない傾向があり、採用工数・採用コスト削減も期待できます。

採用コストの低減

リファラル採用は、在籍社員のスカウトをベースにした採用手法です。
リファラル採用が軌道に乗れば求人サイトへの掲載料や人材紹介会社への仲介料など、採用にかかる経費を大幅に抑えられるでしょう。

会社全体で採用に取り組む土壌が形成される

リファラル採用は、社員の協力が不可欠です。
社員が採用活動の一端を担うことで、社員全員が企業にとって「人材」がどれほど重要な資産であるのか認識できるようになります。
最終的には社員1人ひとりが採用の大切さを理解し、全員で人材採用・育成に取り組む土壌を形成できるでしょう。

採用成功確率を高められる

株式会社MyReferのリファラル採用実態調査では、「新卒採用において、通常応募に対しリファラル採用で応募した場合の内定率が14倍になった」というデータが公表されています。

引用:株式会社MyRefer(リファラル採用実施企業500社の実態調査)

リファラル採用は、紹介者(在籍社員)・採用候補者・企業の3者間の信頼のもとに成り立ちます。
選考プロセスにおいて、十分に相互理解を深めた上で内定に至るため、リファラル採用のマッチ度は数ある採用手法の中でも非常に高く、採用成功にも大きく寄与するでしょう。

ご紹介した4つのメリット以外にも、ベンチャー企業や中小企業の場合、通常募集で優秀な人材と出会えたとしても競合や大手企業とのバッティングが懸念されます。
せっかく採用が順調に進んだとしても、内定辞退となれば大きな損失になってしまうでしょう。
その点リファラル採用では、『紹介』という繋がりがあるため、より強固なアプローチが可能になり、採用活動を優位に進められる可能性が高まります。

リファラル採用のデメリット

一方でリファラル採用には、以下のような懸念点が挙げられます。

  • 紹介者の偏・慣れ合い・派閥の懸念
  • 紹介した社員・採用候補者双方の関係に悪影響を与える可能性がある

リファラル採用の懸念点を理解した上で、他の採用手法と組み合わせながら運用することがポイントです。

紹介者の偏り・慣れ合い・派閥の懸念

紹介者の人数が乏しい場合やリファラル採用に積極的なメンバーに偏りがある場合、似たタイプの人材が集まりやすくなります。その結果、人材の多様性に欠ける組織になる可能性も考えられます。
また気の合うメンバーが集まることで慣れ合いが生じる、紹介者を起点とした派閥が生まれやすくなる、などの懸念も否定できません。

紹介した社員・採用候補者双方の関係に悪影響を与える可能性がある

リファラル採用では優遇採用されることはほとんどなく、他の応募者と同様の採用基準に則って選考が進められるケースが大半です。結果によっては採用に至らないこともあるでしょう。

リファラル採用では、在籍社員と関係のある人材が選考に臨むため、結果次第では紹介した社員・採用候補者双方の関係に亀裂を生じさせる恐れがあります。
万が一紹介を受けた人材が不採用になった時は、紹介した社員に対し採用に至らなかった理由を誠実に伝えるなどの配慮が必要です。

リファラル採用を運用する際のフロー

「紹介」という採用手法は、一見すると簡単ですぐに運用が軌道に乗りそうに思われます。しかし、いきなりリファラル採用を運用したとしても、なかなか定着には至りません。
リファラル採用を行う際は、制度化し運用が可視化できる状態にする必要があるでしょう。

リファラル採用を運用する際は、次の3つのステップを経て基盤をしっかり構築した上で運用を開始するようにしましょう。

1.プロジェクト発足

まずは少人数単位でプロジェクトを発足し、促進・拡大に向けた基盤を作りましょう。
紹介から選考までのフローや、紹介者・採用候補者との距離感、選考基準など小規模ながらも一連の流れを確認することによって各ステップの課題が明確になるはずです。
課題を改善し制度化できた段階で、プロジェクトを本格的に促進させるステップに移りましょう。

2.プロジェクト促進

プロジェクトを促進するには、2つの方法があります。

1つめはプロジェクトメンバーの増員です。
メンバー増員に伴い、新たに採用目標を掲げプロジェクトを促進させます。

2つめは内定者を巻き込んだプロジェクトの促進です。
新卒採用に用いられる方法ですが、学生に一番近しい内定者を紹介者とし、リファラル採用を促進させます。

リファラル採用は、企業に定着し長く活躍してもらえる人材を採用できる可能性を含んだ魅力的な手法ですが、在籍社員が企業の理解を深められるなどの効果もあります。
リファラル採用を内定者研修の一環として活用することで、内定者の企業理解・帰属意識の向上にも寄与するでしょう。

3.社内周知

最終的には全社員に対し、リファラル採用を周知します。
周知の際は、現在抱えている採用課題とリファラル採用導入の目的を明確に伝えることが大切です。

また下記3点に関しては、具体的に説明し社員と認識を統一しておきましょう。

  • 求める人物像
  • 必須スキル
  • 採用後のポジション

リファラル採用が頓挫する原因は様々ですが、社内周知から始めてしまうと基盤が脆弱であるためにプロジェクトが失速してしまいます。まずは少人数単位でリファラル採用を運用するための基盤を作った上で制度化し、社員全員を巻き込むプロジェクトとして動き出すことがポイントです。

リファラル採用を定着させるポイント

エン・ジャパン株式会社が行った『リファラル採用(社員紹介)意識調査』によると、リファラル採用を運用する企業のうち、3割もの企業が「うまく運用できていない」と感じています。

引用:エン・ジャパン株式会社(リファラル採用(社員紹介)意識調査)

リファラル採用を定着させるには、社員全員に協力する意義を伝え、共感してもらうことが大切です。
また『継続できる活動環境』を提供することも不可欠です。

特に下記2つの要点を抑えられていない企業は、「うまく運用できていない」と感じてしまう傾向にあるようです。

  • 十分な社内周知
  • 紹介件数増大の工夫

リファラル採用を運用する際は、フローを明確にするとともに採用活動のこまめな情報提供を心がけましょう。単にリファラル採用の存在を周知するだけでは、活性化にはつながりません。

またリファラル採用を活性化するためには、表彰制度や成果報酬(インセンティブ制度)の導入を検討するのも1つの手。自社の制度と紐づけて社員のモチベーションを高める施策を導入してみるのも良いでしょう。
少しの工夫でリファラル採用がスムーズに動き出すこともあります。まずは社内周知の徹底と、社員の参画意欲を高めましょう。

まとめ

エン・ジャパン株式会社が実施した『リファラル採用意識調査』にて「今後のリファラル採用についての考え方」を問う質問では、対象企業から次のような結果が得られました。

<リファラル採用導入済み企業>
87%が前向きに取り組む(積極的に取り組む:22%、これまで通り取り組む:65%)と回答。

<リファラル採用未導入企業>
30%が前向きに取り組む(積極的に取り組む:2%、これから導入を検討する:28%)と回答。

 

引用:エン・ジャパン株式会社(リファラル採用(社員紹介)意識調査)

上記の結果より、リファラル採用を既に導入している企業では、継続して運用する姿勢が伺えます。
一方の未導入企業も3割ほどの企業が運用に向けて前向きな姿勢であることが分かりました。
このデータからもリファラル採用は一定の効果が見込まれ、企業の採用成功に貢献していることが推察されます。

効率的にターゲット人材を採用できる手法として注目を集める『リファラル採用』。

社員の協力や長期的な運用が必要ですが、採用成功のみならず在籍社員のエンゲージメントや帰属意識の向上にも寄与することが期待できます。リファラル採用は採用を成功に導くだけではなく、“自然と人材が集まる組織”に企業を育てる可能性も秘めている手法と言えるでしょう。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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