ダイレクトリクルーティングは自動化できるのか?RPA・AIを活用し、自動化するメリット・デメリット


人材採用競争が激化する中、採用ターゲットに近い人材に対して直接自社の魅力をアプローチできる『ダイレクトリクルーティング』の注目が高まっています。

しかし、転職潜在層にアプローチできる強みがある一方、候補者1人ひとりに合わせたスカウトの作成が必要です。
他の採用手法と比較して運用労力や時間がかかるため、ダイレクトリクルーティング導入に伴う負担増大に悩む企業も少なくないでしょう。

そこで今回は、ダイレクトリクルーティングの自動化について解説します。
ダイレクトリクルーティングを上手く自動化できれば、多くの企業が悩む負担の増大も解決に導けるはずでしょう。

ダイレクトリクルーティングは自動化できるのか?

ダイレクトリクルーティングは、RPAやAIを導入すれば自動化を実現できます。

ただし自動化できるのは、ルールや条件に従い同じ作業を繰り返す工程に限られます。
複雑な処理や例外的な対応が発生する業務、さらには個別に判断が求められる業務には不向きと言われています。

このように自動化できる業務は限られていますが、ダイレクトリクルーティングを運用するにあたり、業務の一部だけでも自動化できれば運用負担も軽減できるでしょう。

RPA・AIで自動化できる工程

ここでは、具体的にRPA・AIで自動化できるダイレクトリクルーティングの工程を紹介します。

RPAで自動化できる工程

RPAで自動化できる工程は、次のようにルールや条件に従い同じ作業を繰り返す工程となります。

  • スカウト送付
  • データの抽出や集計
  • 初回日程調整メール・メッセージの自動送付
  • 採用管理システムへの候補者情報自動登録
  • KPI自動集計 など

RPAを導入することで、対象条件に該当する候補者がヒットした場合、事前に指示したスカウトを自動送付してくれます。文章を細かくカスタマイズすることはできませんが、リアルタイムにスカウト送付できる他、スカウト漏れも防止できるでしょう。

またデータの抽出や集計の他、採用管理システムへの候補者情報の自動登録など、日々のルーティン作業をRPAに任せて自動化すれば、作業工数の削減やミス低減も期待できます。
さらに夜中に稼働させれば、翌朝にはデータ集計が完了して候補者が採用管理システムに登録されている状態となり、次の作業にも取り掛かりやすくなります。
長い目でみると、生産性の向上にも寄与すると考えられるでしょう。

AIで自動化できる工程

AIで自動化できる工程は、次の通りです。

  • 求人原稿の作成
  • スカウト文の作成

最近では、ChatGPTなど文章生成ツールを活用した求人原稿作成やスカウト文作成も主流になりつつあります。

AIを活用すれば、求人広告サイトに掲載している求人や企業ホームページなどのURLを提供することで、採用したい人材に適した求人原稿の草案を短時間で作成してくれます。
またスカウト文も同様に、候補者のレジュメの一部を引用し作成条件を提示することで、すぐさまAIが候補者の興味・関心を喚起するようなスカウト文を作成してくれるでしょう。

ゼロから求人原稿やスカウト文を作成する場合、多くの労力と時間がかかってしまいます。
また内容がマンネリ化・他社と差別化できないことも珍しくありません。
しかしAIを活用するだけで、短時間で作成できる上に、ターゲットにマッチした内容に仕上げることもできます。指示によっては、求職者の目を惹く独創的な求人原稿・スカウト文も作成できるでしょう。

AIが生成した草案をそのまま活用するのは、2023年現在ではまだ難しいかもしれません。
しかし求人情報は、応募者の多くが閲覧するページであり、掲載内容が応募率に影響することもあります。またスカウト文は候補者に合わせてカスタマイズしたほうが、返信率が上がるというデータもあります。

毎回同じ求人情報を使いまわしている企業やスカウト文の作成に時間を割けず定型文をそのまま送付するような運用になっている企業の場合、AIを利用することでダイレクトリクルーティングの運用効果や生産性が大きく変わってくるかもしれません。

ダイレクトリクルーティングを自動化するメリット

続いて、ダイレクトリクルーティングを自動化するメリットを紹介します。

業務負担を軽減できる

ダイレクトリクルーティングにRPA・AIを用いて自動化を図るメリットとして、業務負担の軽減が挙げられます。

前述の通り、ダイレクトリクルーティングは候補者1人ひとりに対して適切な内容のスカウト送付が求められます。スカウト作成時には、候補者のレジュメを読み込まなければならないこともあり、スカウトを1通送付するだけでも非常に時間がかかります。
また効果検証のためのデータ収集・分析、さらには応募者への初回面談設定なども行わなければなりません。

ダイレクトリクルーティングは運用において割かれる時間や労力が膨大であるために、運用を頓挫してしまう企業も少なくありません。
ダイレクトリクルーティング運用時に発生する煩雑な業務を自動化することができれば、業務負担増大というデメリットをカバーでき、適切な運用を実現できるでしょう。

戦略立案・改善業務などのコア業務に集中できるようになる

業務を自動化することにより人事担当者の負担が軽減されると、自動化が難しい戦略立案や改善対策といったコア業務に時間を割けるようになります。

ダイレクトリクルーティング運用の根幹となるこれらの業務に注力できるようになると、より精度高く運用できるようになるでしょう。

コスト削減に寄与する

RPAやAI導入には、相応のコストがかかります。
しかし自社の課題に合わせ上手く業務の自動化を図ることができれば、ダイレクトリクルーティング運用のコストを低減できるでしょう。

RPAやAIの導入費用に対して削減コストが上回れば、高い生産性を維持した状態を実現できます。

ミス低減につながる

人の手で作業する場合、どうしても人的ミスが発生してしまう可能性があります。しかしRPAの場合、指示された作業を忠実に実行してくれます。
手作業で行うよりも、ミスの発生を限りなくゼロに近づけられるでしょう。

ミスが少なくなることで、同時にミスが発生した際のフォローに費やすリソースも比例して減ることになります。
より無駄のない運用を推進できるようになるでしょう。

ダイレクトリクルーティングを自動化するデメリット・リスク

一方でダイレクトリクルーティングにRPA・AIを用いる際には、デメリットやリスクについても理解を深めておかなければなりません。

具体的に考えられるデメリットやリスクは、次の通りです。

間違った指示で処理し続けてしまう可能性がある

RPAは指示された手順通りに処理を行う特性があります。

たとえ間違った指示であったとしても、間違った指示通りに処理を続けてしまいます。
違うデータを取り込み続けてしまう、間違った対象にスカウトを送り続けてしまう、などのトラブルも容易に考えられるでしょう。

メリットであるはずの自動化ですが、リスク観点や防止策が甘いばかりに重大な過失につながる事態が発生してしまうこともあるかもしれません。
ダイレクトリクルーティングの自動化を図る際は、どのようなリスクが起こり得るのかしっかり整理し、対策を講じておく取り組みも必要です。

情報漏洩のリスクがある

RPAでは、指示コードにシステムのIDやパスワードを埋め込むことも多く、何かの拍子にIDやパスワードが漏洩してしまう懸念も考えられます。

またAIに関しては、2023年3月に個人の氏名・メールアドレス・住所・クレジットカード番号などの個人情報が9時間にもわたり他のユーザーに表示された騒動もありました。
AIに関しても、候補者の情報や企業の機密情報が流出してしまう可能性はゼロではありません。

外部からのサイバー攻撃への対策はもちろん、RPA・AIを使用する従業員に対するセキュリティー意識を高めていく教育も必要でしょう。

自動化にあたりRPAやAIの知識が必要

ダイレクトリクルーティングに関する業務を自動化するためには、PRAやAIに関する知識が必要です。
RPAやAIを用いて自動化を図るサービスへの申し込みが必要である他、自動化を図るため、社内でもある程度の知識習得が求められるでしょう。

たとえ自社内でダイレクトリクルーティング業務を自動化できる人材がいたとしても、異動や退職などで人の入れ替わりが重なり、自動化に関する処理が行えなくなってしまうという属人的な体制が招くリスクも懸念されるでしょう。
エラー発生時の対処方法やシステムがバージョンアップした時の対応方法が分からず、再び人の手による運用に戻ってしまうことも考えられます。

ダイレクトリクルーティングの自動化を図る際は、自動化に関するメンテナンスも含め、中長期的な運用ができるのかイメージしてみることも大切です。

まとめ

RPAやAIは、既に多くのビジネス現場において活用されておりますが、採用の現場も例外ではありません。既に業務の効率化を図るために、採用活動にRPAやAIを導入している企業も少なくないでしょう。

もちろんダイレクトリクルーティングもRPAやAIを用いることで、一部の工程を自動化できます。導入に際しリスクはあるものの、作業の効率化や生産性の向上を実現し、延いてはコスト削減や採用力向上にも寄与することが期待できるでしょう。

また今すぐにダイレクトリクルーティングの自動化を図るわけではなくても、そのような方法があることを知っておけば、自社のリソースに合ったダイレクトリクルーティングの運用法が見つかるかもしれません。

時代の流れに合わせて新しい技術も取り入れながら、採用活動を推進していきましょう。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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