新卒採用の学歴フィルターは時代遅れ?GPAなど新たなフィルタリング項目とは
一昔前の新卒採用では、優秀な人材を効率的に採用するため『学歴』をフィルターに用いることは珍しくありませんでした。
学歴フィルターとは、採用活動において一定レベル以上の大学出身者を優遇(もしくは一定レベル以下の大学出身者を冷遇)することです。
しかし最近では、採用において求めている能力を兼ね備えている人材なのかを判断する材料として、在学中の成績評価指標である『GPA』を参考にするケースも増えてきました。
また人柄やインターンシップのパフォーマンスなどを重視する企業も増えつつあります。
本記事では今の時代における学歴フィルターの有効性や、新卒採用でGPAが注目を集めるようになった背景などをお伝えします。
学生は学歴フィルターを感じているのか?
就職活動において、学生は学歴フィルターを感じているのか、まずはその実態を紹介します。
HR総研が2017年に行ったアンケート調査によると、「企業の学歴フィルターを感じたことがあるか」という質問に対して「ある」と回答した学生は次の結果となりました。
- 文系全体:57%
- 理系全体:51%
学生のコメントからも、就職活動において学歴フィルターを感じる状況があったことが伺えます。
≪学歴フィルターを感じた学生からのコメント≫
「エントリーシートが通過しやすかった。リクルーターが大学別につく」(一橋大学、文系)
「説明会の抽選に漏れたが、わざわざ空き日程を案内された」(早稲田大学、文系)
「マイページから説明会の予約が全く取れないが、他の大学の子は取れると言っていた時」(同志社大学、文系)
全体の所感は5割程度に留まるものの、半数以上の学生が就職活動において学歴フィルターを感じたことがあるようでした。
また旧帝大・早慶クラスでは「ある」と答えた学生が7割以上に上りました。
新卒採用において学歴フィルターは有効か?
現状、新卒採用における判断材料の1つとして『学歴』を用いる企業もあります。
企業が学歴フィルターを設ける主な理由は次の通りです。
- 難易度の高い大学の方が優秀な学生が多いという前提で優秀な学生を選別するため
- 選考の工数を減らすため
- ブランド力・企業規模の大きい企業に学生を獲得されることを懸念し、敢えて高学歴学生を外すため
このように学歴でフィルタリングを行うことにより、一定レベルの学生を容易に選別することができます。
しかし近年、新卒採用の在り方は大きく変わりつつあります。
ジョブ型雇用の増加や共感型採用が重視される中、学歴で学生を判断する手法はミスマッチを生みやすく、早期離職に繋がる要因にもなり得ると考えられます。
そのため自社の求める人材を見極めることを目的にした場合、学歴フィルターは決して有効性の高い手段とは言えず、場合によっては自社にマッチする人材を足切りしてしまう懸念もあります。
自社にマッチする人材・より長く勤めてもらえる人材を見極めるためには、学歴ではなく人柄や学生生活の成果・学習への取り組み姿勢など多様な視点が必要です。
新卒採用においてGPAが注目される背景
近年、学歴ではなくGPAが注目されるようになった理由は、GPAが高い学生は会社が求めている次の素養を兼ね備えている可能性が高く、採用後に自社での活躍を期待できるためです。
<GPAが高い学生が備えている要素>
- 長期的に努力を継続できる力
- 自分なりに行動・目標設定し、セルフモチベートできる価値付けする力・意味付けする力
- やるべきことをやるべきタイミングで実行できる計画性・人間力・先見力
また武蔵野大学が発表した『学修成果の推移からみる学生の特徴』では、GPAの高い学生は次のような特徴や傾向があるとデータから導きだしています。
- 大学に対する適応度が高いほど成績が高いという関係が見られた
- 高成績継続層の学生は、個人の志向としての完全主義傾向がある
- 高成績継続層の学生は、勉強が余暇活動(スマートフォンやゲームなど)によって乱されにくい
このことからもGPAは企業の未来を担う人材を見極めるにあたり、現代ニーズにマッチした判断材料の1つと言えるでしょう。
GPAをフィルタリングとして活用しやすい企業の特徴
実情としてはまだ学歴フィルターを用いている企業もありますが、GPAが人材を見極める材料になることは確かです。
アメリカでは、大学時の成績が高い生徒は「仕事においても優秀な人材」と捉えられ、新卒採用においてもGPAの高い学生を優遇する傾向があります。
そのためGPA 3.5以上の学生しか受け付けないケースや、GPA 3.0以上であることが応募の必要最低条件にしている企業も珍しくありません。
もちろん日本での新卒採用においてもGPAを用いることで、自社の求める人材と巡り合える可能性が高まると考えらえます。
中でも次に該当する企業は、GPAをフィルタリングとして活用することで、採用活動において高い成果を得られる見込みがあります。
- 専門性の高い職種の採用に力を入れている企業
- ベンチャー企業など即戦力を求める企業
- ジョブ型雇用を導入している企業
専門性の高い職種の採用や即戦力を期待するベンチャー企業は、選考の中でGPAを参考にするフローを取り入れることで、新しい人材発掘のルートや希望にマッチした人材の採用が叶う可能性が期待できるでしょう。
学歴・GPA以外に重視すべき項目
先述の通り、新卒採用においてGPAの注目は高まりつつあります。
しかし学校によってGPAを判定する基準が異なります。そのため、なかなかフィルタリングとして活用し難い企業もあるでしょう。
そのような企業は、次の3つを数値化しフィルタリング項目として活用してみると良いでしょう。
- 人柄(性格・コミュニケーション能力)
- 学生の入社意向
- ポテンシャル
リクルートキャリアが採用担当者と就活生へのアンケート結果をまとめた『就職活動・採用活動に関する振り返り調査』では、企業が採用基準で重視する項目において次の結果になりました。
- 人柄:93.1%
- 自社/その企業への熱意:78.3%
- 今後の可能性:68.9%
参考:リクルートキャリア『就職活動・採用活動に関する 振り返り調査 データ集』
日本の新卒採用はポテンシャル採用がベースです。
コミュニケーション能力や入社後の伸びしろに重点を置くため、多くの企業で『人柄』が重視されています。人柄を数値化することは簡単ではないですが、面接官同士や各選考プロセスにおいて“どんな人柄を持つ学生を採用したいのか”という認識を擦り合わせておくだけでも、フィルタリングとして一定の効果を得られるでしょう。
また『自社/その企業への熱意』『今後の可能性』においては、多くの企業で重視している項目であるにも関わらず、面接でアピールする学生は少数に留まります。
しかし上記の項目はは、自社で活躍できそうな人材か長く勤め続ける意向があるのか見極める重要な材料です。
1つのフィルタリングとして活用できるよう、企業側が面接の際にしっかりと学生の想いや考えを聞き出すことがポイントです。
これらの項目においても学生を選考する際に数値化しておくことで、より自社にマッチした人材を採用することができるでしょう。
まとめ
日本では新卒採用の選考において、学歴フィルターを用いるケースは珍しくありませんでした。
しかし人材獲得競争が激化する中で入社後に活躍する有能な学生を採用するためには、多角的に学生の持つ能力や潜在性を見つけ出す必要があります。
その中でGPAをはじめ多角的に学生を見極めることで、入社後に活躍できる人材を採用できる確率が高まります。
学生が企業に求める条件や学生が希望する働き方は、時代の流れと共に変化しています。
そのような変化に合わせ、企業も採用の在り方を柔軟に変化させ、様々な視点から学生を判断していく取り組みが求められています。
コラムを書いたライター紹介
日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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