優秀な人材を採用するために「共感採用」がいま注目されている理由とは?


2022年9月時点における正社員の人手不足企業の割合は50.1%となり、2019年11月(50.1%)以来2年10カ月ぶりに5割を上回り、新型コロナウイルスの感染拡大後としては最大となりました。

バブル崩壊後の「失われた10年」とも称される経済活動の低迷期に起こった就職氷河期から約20年、人材不足が叫ばれるいま、注目を浴びているのが「共感採用」です。

そこで本記事では、共感採用の概要から実施する際のポイント、メリット・デメリットまで詳しく解説します。優秀な人材採用を行うための参考になりますので、ぜひ最後までお読みください。

参考:「人手不足に対する企業の動向調査(2022年9月)」(株式会社帝国データバンク 情報統括部)

共感採用とは

共感採用とは「会社の企業理念に共感してくれる人を採用する」という採用方法です。
今までの新卒の就職活動の傾向は、主に福利厚生や給与などの「待遇面」を重要視し、大手企業や安定した企業への就職を希望する人が多くいました。

しかし現在では、やりがいや自身のスキルアップなどの「無形の価値」を求めて仕事選びをする人が増えています。このような背景から、求職者は待遇面よりも企業の存在意義や本質的な価値に共感が持てる企業に魅力を感じるようになりました。

企業側も、この「共感採用」を取り入れることで求職者へより働く現場に近い会社の特徴をアピールして採用へ繋げようという意識に変化しつつあります。

いま「共感採用」を取り入れる企業が増えつつある

優秀な人材を確保するために「共感採用」をおこなう企業が急増しています。
コロナ禍の2020年からワークスタイルが多様化してきていることによって、個々のライフスタイルに合った仕事を選ぶ時代へと変化してきています。

コクヨ株式会社が行った調査※によると、コロナ禍以前は「有給休暇取得の促進」や「残業削減の施策発信の強化」「フレックスタイム制度実施・推進強化」などワークライフバランスの実現に関わる施策が多くみられましたが、現在では「在宅勤務制度の実施・推進強化」や「自宅以外労働の容認(制度拡大)」など多様な働き方の実現に関連する施策を挙げた人が目立ちました。

コロナ禍を経て、テレワークなど多様な働き方が広がってきていることから、企業としてもこの流れを後押ししようとしていることがわかります。

※引用:「働き方の変化と2030年のワークスタイル予測」(コクヨ株式会社)

求職者の意識の変化に対応して、共感採用を軸として求人を行う「Wantedly」を活用する企業もあります。

求職者の変化によって注目を集める「共感採用」には3つのポイントがあります。

1.求職者の意識の変化に対応する

現代の働く人々にとって重要視されるのは、お金や社会的地位よりも自分らしく働ける環境にあることです。従来の「待遇面」よりも、仕事は「やりがい」や「自分に合った」ものが選ばれる傾向にあります。

また、日本の雇用管理のあり方として基本的だと考えられていた「年功序列」「終身雇用制度」「企業内組合」などに魅力を感じる人も少なくなっています。
加えて感染症の流行により、在宅ワークが可能な職業や副業を重視する動きもあり求職者の意識は大きく変化しています。

企業が求職者を選ぶ時代から、今は求職者から選ばれる企業でなければ採用活動を成功させることは難しいでしょう。

2.離職率を低下させる

「共感採用」は離職率を低下させることも注目を集めるポイントの1つです。
2021年に発表された「新規学卒就職者の離職状況(厚生労働省)」によると、新卒者の3年以内離職率は高卒で36.9%、大卒で31.2%と高い割合となっています。

「共感採用」では、企業の目指すべき目標や社会にどのように貢献していくかという部分で他社との差別化をして就活生の共感を得るため、企業との考え方や価値観の相違が発生せず、就職前後の意識のギャップも発生しづらくなります。
「共感採用」は早期離職を回避して、定着率を上げるための対策として有効です。

3.エンゲージメントを高めるための施策

人事における「エンゲージメント」とは、会社に対しての愛着のことを指します。
「共感採用」をおこなって採用された社員に関しては、エンゲージメントが他の社員に比べて高く、自社で働くことにやりがいを感じているという結果もあります。

エンゲージメントを高めることは、生産性やモチベーションアップの原動力となるでしょう。社員のやりがいは会社としても業績アップに直結するので、エンゲージメントを高める手段として「共感採用」が導入されるケースもあります。

共感採用の特徴と成功のポイント

なぜ今、共感採用が注目を浴びているのか。特徴とメリットをしっかり理解した上で、自社の採用活動に適しているかどうかを見極めることが大切です。

伝わりづらい社会のストーリーを伝えられる

会社の本来の魅力を感じてもらうためには、求職者の「なぜ」「どのように」に着目した働き方を伝えます。
「今なぜこの仕事が必要なのか」「どのように人とかかわり仕事が流れていくのか」などをストーリー性を持って求職者に説明しましょう。

これまでの求人では条件などが重視されがちでしたが、仕事の全体的な流れを掴むことで求職者は入社後の自分を想像することができます。

リアルな会社の雰囲気を伝えられる

会社のよりリアルな雰囲気を伝えることができるのも「共感採用」の特徴です。そして求職者にとっても、会社の中身を知るということは就職先を決定する上でとても重要なポイントとなります。

株式会社翔泳社の調査※によると、22%以上の人が「企業での具体的な働き方が知りたい」という結果が出ています。

※参照:「企業の採用サイトに関する意識調査」(株式会社翔泳社)

仕事内容をイメージすることで、会社の雰囲気や自分が働く姿をイメージしやすくなり、さらに給与や地位だけではなく、仕事をする上で体験する苦労を伝えることも「リアルな雰囲気」を感じさせるポイントとなります。

会社の本質や使命をしっかり理解した上で、一定の覚悟をもって入社してほしいという熱い想いに共感してもらえるでしょう。

採用ミスマッチを防げる

採用によるミスマッチが起こる原因は求職者と採用側に「認識のずれ」があるためです。「認識のずれ」には、会社の持つ文化やスキルに関するミスマッチなどがあります。

パーソルキャリア株式会社が2020年におこなった調査によると、転職後の悩みについて最も高い割合を示したのが「人間関係」でした。※

※参照:「転職者の転職後の悩みと相談相手に関する意識調査」)(パーソルキャリア株式会社)

会社が持つ独特の文化に馴染むことができず、悩みを抱える転職者が多いようです。
離職率が高いことに悩んでいる企業は、求職者との間にギャップが生まれない採用を行う必要があるでしょう。

「共感採用」では、会社のより具体的な情報が求職者に伝わります。
企業の印象だけではなく、会社の方針や内情に深く共感した人が選ばれるので「認識のずれ」が起きにくいでしょう。

やりがい重視の意欲ある人材を採用できる

前述したように「共感採用」ではエンゲージメントを高めるための手段として非常に有効です。エンゲージメントを重要視することは、仕事をする上でのやりがいや意欲に大きく影響します。

「条件」や「待遇」より「やりがい」と「自身の成長」を重要視していることが、現代の求職者の特徴です。そのため、会社のビジョンへの共感を軸に採用をおこなうことが成功の鍵となるでしょう。

心から入社したい人材を採用できる

「この会社で働きたい」と感じる理由は様々です。企業の描くビジョンに共感度が高いほど、会社に対して役に立ちたいという想いも強くなります。
そして、その気持ちがより強い人は会社のために自ら考え行動することもできるでしょう。

会社のあり方や存在意義を根底から理解しているからこそ、生まれる行動です。
「共感採用」でマッチングした人材の最大の特徴とも言えます。

抑えるべき4つのポイント

共感採用を成功させるには、いくつかのポイントがあります。ポイントを抑えておくことで、スムーズに採用活動をスタートさせることできるでしょう。

また、会社の採用基準にも関わることなので、社内でのミスマッチを防ぐためにも一度採用担当者や関係者ですり合わせをしておくと良いでしょう。

1.自社について言語化する

まずは、会社について説明しましょう。
ここで重要なことは、独りよがりの説明にならないことです。一定のメンバーだけで意見を出し合っても、偏った内容になってしまいます。社員に会社の雰囲気や仕事のやりがいなどを取材して、できるだけたくさんの情報を集めましょう。

また、面談やアンケートで丁寧なヒアリングを行い、可能な限り細かく言語化にしていくことで、新たな発見や気付きが生まれることもあります。

2.「共感」を得るストーリー性を作る

言語化ができたら、ストーリーを作っていきましょう。
数字だけで情報や成果だけを伝えるのではなく、「誰が」「いつ」「なにを」「なぜ」「どんな方法で」と5W1Hを意識したストーリーにすることがポイントです。順序良く説明することで伝わりやすく、印象にも残りやすいでしょう。

さらに、1つのストーリーに複数の人物を登場させることで様々な視点から感情移入することができ、自分が会社の中でどんな立場で働くのかも想像しやすくなり共感を得やすくなります。

3.面接で共感具合を見る

ストーリーが完成したら、実際に面接して反応を確認します。
このとき自分たちが伝えたいことが、ストーリーから正確に求職者に伝わっているのか判断することが必要です。

求職者はストーリーを見てどう思ったのかや何を感じたのかを聞くことで、共感具合を確認することができるでしょう。しっかりと企業の魅力が伝わったと判断できれば、後は求職者の共感度に委ねることになります。

4.スキルマッチの確認も同時に行う

会社のビジョンへの共感と併せて忘れてはならないことは、スキルに関するマッチングを確認することです。情熱ややる気を十分に見極めた採用ができたとしても、実力や経験が伴わない人材を起用してしまうと会社としても大きな損出となってしまいます。

共感が得られたら、会社が描くビジョンに対して実際どんな行動ができるのかも見極めましょう。

共感採用を実施するデメリット

もちろん共感採用にもデメリットがあります。
どんな人材を求めているのかによっても、本当に共感採用を取り入れるべきかを判断する必要性があります。人材確保までどのような道筋を描いているのか、採用後のビジョンはどのように考えているのかまでよく考えましょう。

採用に時間がかかる

まずデメリットとして考えられるのは「時間的なコストがかかること」です。
共感採用は、条件などのマッチングではなく「ヒト」に重点をおいた採用をおこないます。求職者それぞれと向き合い、企業のビジョンに共感を求めることは容易にできることではありません。

共感採用は、両者の合意が成り立たなければ採用まで結びつきません。時間をかけて面談を行ってきても、何かのきっかけでミスマッチだと感じられてしまうと辞退されてしまう可能性もあることを理解しておきましょう。

条件重視の求職者を見逃してしまう

求職者が企業に求めることは多種多様です。もし、優秀な人材でも「条件重視」というスタイルで仕事をする人も少なくないでしょう。共感採用では従来のような採用方法とは大きく異なり特徴的であるため、一定層の人材とは出会うことができません。

多様性が損なわれる

共感採用の場合、1つのビジョンに向けた共感を求めて採用を行うため、社員の考え方が一様になっていしまうことが懸念されます。
社員の多様性は、企業の成長に必要なことです。

一般的な採用方法では、個性豊かな人材が採用されます。ミスマッチが起こりやすいということはありますが、企業にとって斬新なアイデアや新たな視点から物事を考えられる人材が生まれやすいということもあるでしょう。

待遇面で会社を選んでいる層は集まりにくい

自身のスキルや経験を活かして好待遇を求める転職などの求職者にとっては、共感採用はあまり好まれないでしょう。待遇面を期待する求職者は条件しか見ない傾向があるため、そもそも応募まで至らない可能性があります。

企業にとっては有力な人材だったとしても、共感採用を導入していると求職者の目に留まらないというリスクも考えられます。

共感採用によって得られるのは「意識の高い人材」

共感採用導入の最大のメリットは、意欲の高い人材を確保でき定着率を上げることができることです。一方でいくつかのデメリットもあるので、検討する際は社内でよく話し合い問題点を解消していくことが大切です。

採用活動は、求職者・企業側の両者にとって様々なコストがかかります。ミスマッチを防ぎお互いが納得してより良い環境で働けるよう、企業の想いを発信していきましょう。

コラムを書いたライター紹介

小川真琴

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子育てしながらフリーライターとして活動中。
SEOを中心にジャンル問わず執筆しています
サブスクで趣味探しをする日々です。

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