新卒採用でジョブ型採用を導入すべき?メリット・デメリット、今後の動向予想について徹底解説


売り手市場と言われるこの時代。採用市場の中でも新卒採用はインターンシップの通常化や選考のオンライン化など、優秀人材の獲得に向けて採用手法が多様化しつつあります。

近年では就活ナビサイトを利用した従来の採用では人材確保が困難になりつつあります。そのためダイレクトリクルーティングやSNSを活用した採用など、学生の動向・ニーズに合わせた新たな採用手法を取り入れる企業も増えてきました。

その中でも24年度採用のトレンドとして注目を集めているのが『ジョブ型採用』です。日本ではまだ馴染みのない『ジョブ型採用』ですが、欧米を中心に世界のトップ企業が活用している手法の1つです。
しかし日本従来の新卒採用手法とは対極的な手法であるため、導入に躊躇する人事担当者も多いでしょう。

そこで本記事では、新卒におけるジョブ型採用のメリット・デメリットはもちろん、ジョブ型採用の今後の動向予想と気になる学生の意向も併せて解説します。

■ジョブ型採用とは?

ジョブ型採用とは、企業が定めた仕事や業務内容を遂行するにあたり相応するスキル・経験を持った人材を雇用する採用手法です。
定めた業務に特化した人材を採用することで、採用された人材は自身の最高パフォーマンスを発揮することができます。また企業も登用人材の能力を最大限に活かすことができ、組織への大きな貢献が期待できます。

一方『メンバーシップ型採用』は日本特有の採用手法であり、先述のジョブ型採用と対極に位置する手法といえます。新卒をまとめて採用し、入社後の社内の人員状況に応じて配置を決定します。

■国内企業のジョブ型採用の導入率と学生のジョブ型採用への意向

一見するとジョブ型採用は、日本企業に馴染まない採用手法にも思われます。しかし国内企業のジョブ型採用の導入率を見てみると、既に多くの企業が導入をしているだけではなく、未導入の企業も関心・興味を持っていることが伺えます。

また学生の意向においても、興味深い調査結果が得られています。

国内企業のジョブ型採用の導入率

株式会社パーソル総合研究所が従業員規模300人以上の国内企業に対し実施した、ジョブ型人事制度の実態に関する調査によると、次のような結果になっています。

  • ジョブ型採用を実施している企業:18.0%
  • ジョブ型採用導入を検討している企業:39.6%

既に1/5の企業がジョブ型採用を導入していることが分かります。
また導入を検討している企業を合わせると、6割近くにのぼる結果になりました。

参考:株式会社パーソル総合研究所

学生のジョブ型採用への意向

株式会社学情が2022年卒学生に対し行った「ジョブ型採用」に関するアンケートによると、約80%が「ジョブ型採用に興味がある」と回答しています。

一方で「どちらかといえば興味はない」「興味はない」の回答割合を総計すると、わずか4.6%にとどまりました。
多くの学生がジョブ型採用に魅力を感じていることが伺えます。

また「ジョブ型採用を実施している企業があればプレエントリーしたいですか」という質問においては、次のような結果になっています。

  • プレエントリーしたい:27.5%
  • どちらかと言えばプレエントリーしたい:25.0%
  • 興味はある:33.6%
  • どちらとも言えない:10.9%
  • どちらかと言えばプレエントリーしたくない:1.8%
  • エントリーしたくない:1.3%

以上の結果から、ジョブ型採用を実施している企業に対しては半数以上の学生がプレエントリーをする可能性が高く、ジョブ型採用に高い興味・関心を持っていることが分かります。

参考:株式会社学情

ジョブ型採用の今後の動向

2022年1月18日に実施された経営労働政策特別委員会報告において、大橋徹二副会長は『新卒一括採用、終身雇用など日本型雇用システムの見直しを一層加速させる必要がある』と指摘。
具体的な方向性の見直しとして、ジョブ型の導入・活用を「検討する必要がある」と結論付けています。

企業ではなく、自身のスキルベースに仕事を選べるジョブ型採用。さらには自身のスキルや能力次第でキャリア形成や昇給が叶うため、終身雇用・年功序列制度が崩壊しつつある日本においては、今後ジョブ型採用を導入する企業・ジョブ型採用を求める求職者共に増えていくと予想されるでしょう。

参考:日本経済新聞

ジョブ型採用のメリット3つ

エンワールド・ジャパン株式会社が実施した「ジョブ型雇用」に関する意識調査によると、7割の企業が「ジョブ型雇用は企業にメリットがある」と回答しています。
本項では、実際に新卒採用でジョブ型採用を導入するメリットについてお伝えします。

1.母集団形成に有効

ジョブ型採用に興味を持つ学生にとって、先述の通りジョブ型採用の有無がプレエントリーをするか否かを決定付けることもあります。また学生からは、「仕事内容が決まっているからこそインターンシップを通じて実際の仕事を体験してみたい」「採用イベントに参加して仕事や企業理解を深めたい」という声が挙がっています。

ジョブ型採用を導入することで学生の興味関心を引くだけではなく、仕事・企業理解に向けたインターンシップ参加という導線が出来上がり、結果として母集団形成に寄与することにも繋がっています。

参考:エンワールド・ジャパン株式会社

2.早期離職の防止

転職市場の活性化に伴い、第二新卒の採用に力を入れる企業も増えつつあります。
そのため、一昔と比較して若くから転職に踏み切ることに対しハードルが下がり、新卒採用の早期離職も企業が抱える大きな課題の1つとして人事担当者を悩ませています。
その点ジョブ型採用の場合、希望キャリアとのミスマッチや不適切なポジション配置などが起こりにくく、早期離職を未然に防ぐことができるでしょう。

3.自己肯定感・モチベーションの向上

新卒入社は初めての社会人経験を得る場です。そのため、キャリア入社とは違い理想と現実・学生時代とのギャップが大きく、理想通りの仕事ができない故に新入社員の自身喪失やモチベーションの低下に繋がることもあります。
一方でジョブ型採用の場合、新卒社員は入社前から一定の知識や経験を有しています。そのため、新卒入社だとしても即戦力として活躍できスムーズに仕事に馴染めるため、入社前に抱いていた不安も払拭されるでしょう。
また“できること”があることで自己肯定感やモチベーションの向上にも繋がり、結果的により高みを目指そう!という成長意欲も向上します。

このようにジョブ型採用は、人材獲得に迷走する新卒採用課題を解決に導く可能性を見出すだけではなく、新卒社員の本来の能力を引き出し最高のパフォーマンス発揮に寄与する方法ともいえるでしょう。

ジョブ型採用のデメリット・懸念3つ

一方でジョブ型採用を導入する懸念・デメリットは以下の通りです。

1.応募者のスキル・能力の見極めが必要

ジョブ型採用で入社まで至ったとしても適性がない場合、他の部署に異動しづらく人材を持て余してしまう可能性があります。結果にコミットできる人材なのか、期待通りの成果を挙げられる人材なのか、ポジション適性はあるのか、選考段階で応募者のスキル・能力の見極めが非常に重要となります。

2.ジョブ型採用に特化した企業魅力訴求・インターンシップコンテンツの制作が必要

先述の通りジョブ型採用に興味・関心を示す学生は、インターンシップを通じ実際の仕事を体験してみたいと考えています。そのため、職務や役割イメージが描ける学生目線のコンテンツ制作が欠かせません。
また企業の魅力アピールにおいてもジョブディスクリプションの明示・能力に応じた昇給制度・明確なビジョンを訴求できる内容を盛り込むことが肝要です。

メンバーシップ型採用にベクトルが向いた企業魅力訴求・インターンシップコンテンツの場合、ジョブ型採用を望む学生のイメージと乖離が生じ、興味・関心の低下に繋がりかねません。
学生の興味・関心をくすぐり、入社後のイメージを膨らませるようなジョブ型採用に焦点を当てたコンテンツ制作がポイントです。

3.マネジメント人材の育成が難しい

専門性の高いスペシャリスト育成に特化したジョブ型採用ですが、一方で幅広い分野の知見と経験を持ちオールラウンドに活躍できるゼネラリストの育成が難しいという特性も持ち合わせています。
そのためマネジメント人材が育たないという懸念も考えられます。

ジョブ型採用にはデメリットもあり、全ての企業にマッチするとは一概には言い切れません。
例えば従業員数の少ない中小企業や、少数精鋭で事業運用をする企業の場合、1人が複数業務を兼任する必要があります。そのため、業務の範囲が予め定められたジョブ型採用はマッチしにくい可能性があります。

導入する際は、新卒採用における課題はもちろん雇用後の懸念点も洗い出し、自社にとって恩恵・効果をもたらし得る方法なのか検討することが肝要です。

まとめ:人材獲得競争を勝ち抜くための選択肢として

新卒社員の主体的なキャリア形成が叶うジョブ型採用は、転職市場の活性化・働き方改革の影響を受けるZ世代にとって大きな関心・興味の的となっています。

もちろんデメリット面もありますが、日本においても大手企業はじめ積極的に導入が検討され始めています。
貴社にとってもジョブ型採用は、専門人材の雇用・採用課題解決の糸口といった、激化する人材獲得競争を勝ち抜くための1つの戦略になり得るかもしれません。
ぜひこの機会に、採用トレンドワードでもある「ジョブ型採用」について検討してみてはいかがでしょうか。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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