限りある資源のなかでより快適な暮らしを実現し 地球と共存できる道を探るのが私たちの使命


「SDGs(エスディージーズ)」とは、2015年に国連が全会一致で採択した「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称のこと。「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」「住み続けられるまちづくり」などといった17の項目と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。SDGsが目的とする「持続可能な世界」とは、地球環境の保全と利用のバランス、そして自然との共存が実現できた世界のことをいい、さまざまな事業を展開する企業においても、「収益と社会課題の解決は対立するものではなく、両立されるもの」という理念が広がりつつあります。

世界的なホームファニッシングカンパニーイケアは、1943年の創業以来、商品開発やデザイン、流通にいたるまで「持続可能」を主たるテーマに事業を展開してきました。生産から販売店舗にいたるまで、世界中に拠点を持つまさにグローバル企業です。そこで、現在のイケアが実践している「SDGs」への取り組みはどのようなものか、イケア・ジャパン株式会社・カントリー・サステナビリティ・マネジャーの平山絵梨氏にお話を伺いました。

Q1:イケアは創業以来、環境に配慮した事業を展開されていますが、現在、実践されているSDGsについてのフィロソフィ、またはテーマがあればお教えください。

イケアはサステナブルな世の中を実現するために、2030年まで人だけでなく社会、地球という家に対して、ポジティブな影響をもたらすこと、そして、多くの人々が限りある資源のなかでより快適な暮らしを実現できるよう、インスピレーションを提供し、その力となることを目標にしております。

イケアでは、「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ」というサステナビリティ戦略を掲げ、2030年に向けた共通の課題に対する目標とコミットメントをまとめています。イケアは、この戦略において「健康的でサステナブルな暮らし」「サーキュラー&クライメートポジティブ」「公平性と平等性」という3つの注力分野を設け、積極的に課題解決に取り組んでいます。

Q2:イケアが実践している商品デザイン、生産、ロジスティックスや店舗デザイン、人事管理にいたるまで、SDGsを意識した取り組みをされていると考えておりますが、それぞれ具体的にお教えください。

〜商品デザインについて〜

イケアではデモクラティックデザイン(“みんなのためのデザイン” )というデザイン哲学を持っており、これは美しいデザイン、優れた機能性、品質、サステナビリティを兼ね備えた商品を、手ごろな価格でお客さまに届けることを意味します。1990年代に明文化されたと言われていますが、それよりも以前からイケアの商品開発部の内部ではこの考えが浸透しており、常に資源を無駄にしないデザインを意識してきました。近年では循環型ビジネスへのシフトを目指し、サーキュラーデザインという考えを発表しました。これは、製品を開発する最初の段階から4つの循環 – 再利用、改修、再製造、リサイクル、を想定したデザインを行うことを意味します。

〜生産について〜

イケアでは循環型ビジネスへのシフトを目指し、2030年までに製品に使用するすべての素材を再生可能またはリサイクル素材でまかなうことを目指しています。再生可能な素材として、イケアでは木材やコットンを多く使用しますが、木材はFSC認証木材、またはリサイクル素材のみを調達することを目標に掲げ(99.5%達成)、またコットンはベターコットン(よりサステナブルな供給源から調達した綿)のみを使用しております。リサイクル素材については、テキスタイル製品に使用されるポリエステルについて、リサイクルポリエステルを使用した製品の割合が2020年に90%に到達しました。

一方、イケアでは私たちのバリューチェーンにかかわるすべての人々に対して公平性と平等性を実現しようとしています。そのために、IWAY基準と呼ばれるサプライヤー行動規範を策定しています。この中では、労働者の平等性が保証されるよう、例えば雇用プロセスの基準を定めたり、透明性のある雇用条件を提示すること、また良好な労働環境を提供することをサプライヤーに求めています。

〜ロジスティクスについて〜

イケアでは、2025年までにお客様のご自宅までお届けするすべての配送サービスを100%ゼロエミッション化することを目指しています。

〜店舗デザインについて〜

すべてのイケア店舗では、店舗運営から排出される温室効果ガスの削減に日々つとめています。この実現のために、イケア・ジャパンのすべての大型店舗には太陽光パネルを導入し、すべての電力を再エネでまかなっています。また、雨水などリサイクル水の積極的な活用や、水を使用しないトイレ設備などを導入することで、水道水の使用量の削減につとめています。

〜人事管理について〜

イケアでは男女平等を実現すべく、リーダー職における男女の比率を50:50にしています(イケア・ジャパンでは、女性管理職の比率が51.5%(2022年4月時点)となっております)。また、男女賃金格差の解消に向けて、全コワーカーへの研修の提供や、定期的な経過観察を行っています。そして、職場での女性活躍を応援するには、家の中での男女平等(育児・家事の公平な分担など)が整っていることが大切なので、子どもが生まれた男性コワーカーへの育児休暇取得を支援しています。イケア・ジャパンでは、国が用意する育児休業制度とは別に、パートナーが子どもを出産した時にのみ使える特別休暇(有給)を15日用意しており、この取得率は100%となっております。

Q3:イケアがSDGsに取り組む必要性についてのお考えをお教えください。

イケアではSDGsが採択されるよりも前にサステナビリティ戦略を立案し、行動を起こしてきました。イケアでは、世界で起こっている状況として持続不可能な消費、気候変動、不平等の拡大の3つを最重要課題としてとらえています。特に地球温暖化は待ったなしで、異常気象による人的被害が日々ニュースで流れています。地球という大きな「家」がなくなってしまっては、私たちのビジョンの実現はおろか、ビジネスが成り立ちません。だからこそ、地球の限りある資源のなかでより快適な暮らしを実現し、地球と共存できる道を探るのが私たちの使命だと感じています。

Q4:イケアで働く社員スタッフやコワーカーのSDGsに対する意識はどのようなものでしょうか?

イケア・ジャパンでは毎年コワーカー(従業員)満足度調査を行っており、その中でサステナビリティに関する設問も用意しています。その中で、「イケアが人々や地球に対して意義のある取り組みを行うことについて、自分自身もそれに貢献していると感じる」と回答したコワーカーが8割を超えます。そして、プライベートにおいてもサステナブルな暮らしを実践するコワーカーは多いように感じます。また全国のイケアの店舗にはサステナビリティコミッティーというものがあり、有志のコワーカーが組織内のサステナビリティ推進を積極的に進めてくれています

Q5:スタッフを新規採用する場合、その広報において「SDGsへの取り組み」を標榜されているでしょうか?

イケアが大切にしているイケアバリュー(イケアの価値観)の中に、「環境や社会への配慮」というものがあります。その兼ね合いでイケアのサステナビリティに関する考え方を採用時に共有したり、または入社後にサステナビリティ研修を全コワーカーに実施したりしています。採用担当者からは、イケアのサステナビリティへの取り組みに共感して入社するコワーカーが年々増えている、という話も聞いています。

Q6:まだ、具体的にSDGs取り組んでいない企業様もいらっしゃいます。企業にとって今後「SDGsへの取り組み」は重要な指針になるとお考えでしょうか?そうであれば、その理由についてお教えください。

持続不可能な消費による資源の枯渇化や地球温暖化による気候変動の加速、社会の中で拡大する不平等などにより、「これまでのビジネスモデルのままでは持続可能な事業が成立しない」ということは、イケアだけに当てはまるものではないと思います。世界中の消費者も、環境や社会に対する具体的な行動を企業に対して求める動きが高まっているように感じます。SDGsに早期に取り組むことは、ビジネス上の競争優位性を生み出すことにもつながります。会社の存在意義を突き詰め、それを元にSDGsに貢献できる行動目標を策定することがとても重要だと考えております。

Q7:今後、ますます「SDGsへの取り組み」が重要な事業展開マターとなると思います。イケアが今後、さらに取り組まれようとするSDGsマターがあればお教えください。

待ったなしの気候変動対策として、イケア・ジャパンでは2018年以来すべての店舗で使用する電気を再生可能エネルギーでまかなっています。次のステップとして現在取り組んでいることは、お客さまの元に商品をお届けする配送サービスを2025年までに100%ゼロエミッション化する、という行動目標です。パートナー企業と連携しながら、EVトラックの調達に向けて日々努力しています。

また、日本社会ではまだまだ課題となっている男女平等についても、イケアでは非常に重要だと感じています。イケア・ジャパンにおいては、リーダー職における男女比率50対50を維持するとともに、男性社員の育児休暇取得を継続的に促進することで、家庭での男女平等(家事・育児の分担)の実現を応援していきます。

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ウマい人事編集部

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