採用専用サイトが企業の採用活動において不可欠な理由とは?


企業が持続的な成長を実現するには、優秀な人材の獲得が不可欠です。しかし、少子高齢化による労働人口の減少や働き方の多様化により、人材獲得競争は激化の一途をたどっています。このような状況下において、企業が採用活動を優位に進めるためには、求職者から選ばれる存在になることが不可欠です。

求職者から選ばれる企業になるための取り組みとしては、採用ブランディングや候補者体験などが挙げられます。また、採用専用サイトの設置も求職者の興味を喚起し、他社との差別化を図る上で有効な施策の一つです。

本記事では、企業の採用活動における採用専用サイトの重要性や設置のメリット、設計時に盛り込むべき項目などについて解説します。

採用専門サイトの重要性

近年、求職者の企業選びの軸は大きく変化しており、給与や待遇だけでなく、企業文化や働きがいなど、より本質的な情報を求める傾向が強まっています。本章では、データを用いて企業の採用活動における採用専用サイトの重要性を解説します。

株式会社カケハシ スカイソリューションズが実施した「採用サイトに関する意識調査」によると、「転職活動/中途採用に特化した採用サイトを閲覧したい」と回答した求職者は84.8%にも上り、多くの人が転職活動時に企業の採用専用サイトを情報収集の手段の一つにしている様子がうかがえます。実際に90.3%の求職者が応募前に企業の採用サイトに訪問しており、求職者にとって企業情報を把握するための欠かせない情報源になっていることがわかります。

加えて、80.0%が「応募の決め手になる」と回答しており、採用サイトが単なる企業情報を補足するツールや手段ではなく、求職者の意思決定に直接的な影響を与える主要な情報源であることを示しています。

参考:株式会社カケハシ スカイソリューションズ「採用サイトに関する意識調査」

採用活動において採用専用サイトがない場合の影響

同調査では、採用サイトがない、あるいは情報が不十分な場合、応募意欲が下がると回答した求職者は71.3%にも上り、「他社との違いがわからず興味を持ちにくい」と回答した人も68.1%に達しました。

さらに、60%もの求職者が「応募に至らない」「入社を決めきれない」など、ネガティブアクションにつながっている点にも留意が必要です。情報不足は、求職者に「この企業は採用に本気ではないのかもしれない」「情報開示に消極的で閉鎖的な企業なのか」といった不信感を抱かせる要因になりかねません。採用専用サイトを設置しない場合、企業の採用に対する姿勢そのものが問われる懸念があることを認識しておく必要があるでしょう。

参考:株式会社カケハシ スカイソリューションズ「採用サイトに関する意識調査」

採用専門サイトを設置する4つのメリット

採用専用サイトを設けることは、単に機会損失を防ぐだけでなく、企業の採用活動に多くの戦略的メリットをもたらします。ここでは、代表的な4つのメリットについて解説します。

1.求人媒体とは異なる層にアプローチできる

求人媒体の主な利用者は、「今すぐ転職したい」と考える転職ニーズが明確な転職顕在層が中心です。企業の採用活動において転職顕在層へのアプローチは不可欠ですが、採用競争が激化する昨今では、「良い企業があれば転職を考えてもいい」「今は転職する気はないが、自分の市場価値は知っておきたい」など、転職潜在層へのアプローチも必須となります。採用専用サイトは、こうした潜在層にアプローチする際に有効です。

例えば、「特定の技術領域における課題解決事例」や「社員のキャリアストーリー」などのコンテンツをブログ記事として発信し、SEO対策を施すことで、情報収集段階の潜在層が検索エンジン経由でサイトに流入する可能性が期待できます。企業の魅力に触れた潜在層は、すぐに転職せずとも、SNSをフォローしたり、メールマガジンに登録したりすることもあるでしょう。
このようにして構築されたタレントプール(※)は、将来の採用活動における貴重な資産となります。

(※)タレントプール
将来の採用候補となり得る人材の情報をデータベース化し、長期的に関係を構築する戦略もしくは、データベースのこと。

2.採用ブランディング強化になる

採用ブランディングとは、自社を魅力的な働く場所として求職者に認知してもらうための活動全般を指します。採用専用サイトは、採用ブランディングを推進する際にも、中核的な役割を担うでしょう。

求人サイトのように発信できる情報が限られている場合、企業独自のカルチャーや世界観を十分に表現することは困難です。しかし、発信内容を自由に設計できる採用サイトであれば、デザイン、写真、動画、テキストのトーンまで、ブランドイメージが統一され、一貫したメッセージを発信できるようになります。企業の根幹にある理念やビジョンをストーリーテリングに基づき伝えることで、求職者の共感を喚起し、数ある企業の中から自社を選んでもらえる可能性を高められるでしょう。

3.競合他社との差別化を図れる

同じような職種、同じような待遇を提示する競合他社の中から、自社を選んでもらうためには、他社と明確な違いを示すことが不可欠です。その点、採用専用サイトは、他社との違いを訴求する際の有効な手段の一つとなるでしょう。

例えば、他社にはないユニークな福利厚生制度が生まれた背景をストーリーとして紹介する、困難なプロジェクトを乗り越えたチームの奮闘記をドキュメンタリー風の動画で伝える、社員一人ひとりの多様な働き方をインタビュー記事で深掘りするなど、会社のソフト面を深く訴求できるコンテンツを作り発信することで、求職者の印象に残りやすくなり、採用競争においても優位なポジションを築けることもあります。

4.応募者の体験価値が向上する

近年、採用分野においても「候補者体験(Candidate Experience)」の向上が重要な課題になりつつあります。候補者体験とは、求職者が企業を認知してから選考を受け、入社(あるいは不採用)に至るまでの一連のプロセスで得られる体験価値の総称です。この候補者体験の質は、企業の評判にも直結します。

採用専用サイトを設置することで、求職者は、サイトを通じて企業の情報を多角的に収集できるようになり、応募前から企業理解を深められたり、応募に際する不安を解消できたりします。例えば、求職者が事前に社員のインタビュー記事を読んでいれば、面接でより深い対話が生まれ、双方にとって有意義な時間となるでしょう。また、選考フローが分かりやすく図示されていれば、安心して次のステップに進むことができます。
このように、採用サイトを通じて、質の高い情報を提供することで、選考プロセス全体をポジティブな体験へと昇華させることができるでしょう。たとえ縁がなかったとしても、満足度の高い候補者体験は、求職者に対して「良い会社だった」という印象を与え、将来的に顧客になったり、知人に自社を勧めたりしてくれる可能性をもたらします。

採用専門サイトに必須となる7つの項目

ここでは、採用専用サイト設計時に設置すべき必須項目を7つ紹介します。

1.企業情報

採用専用ページは、企業の根幹となる理念や文化を伝える場でもあります。企業の目指す方向性(ビジョン)、社会における存在意義(ミッション)、そして組織全体で大切にしている価値観(バリュー)を言語化し、発信することが重要です。

特に近年は若い世代を中心に、給与や待遇などの条件面だけでなく、「その企業で働く意味」や「社会への貢献実感」を求める求職者が増えており、理念への共感は、エンゲージメントの高い社員を惹きつけ、長期的な活躍を促す土台となります。トップメッセージを情熱的に語りかけたり、創業時の想いをストーリーとして紹介したりすることで、求職者の心に深く響くサイトに仕上がります。また、具体的な事業内容やこれまでの歩み(沿革)を分かりやすく解説することで、企業の安定性や将来性に対する信頼感が増し、求職者が安心してキャリアを託せる企業である旨を示すことができます。

2.募集要項・職種詳細

募集要項も記載内容を工夫することで、応募率を高められる、候補者体験が向上する、採用ミスマッチが低減するなどのメリットを得られる場合があります。求職者が知りたいのは、「その職場で、具体的にどのような役割を担い、どのように貢献できるのか」という点であり、単に職種名と給与、勤務地を記載するだけでは不十分です。

具体的には、職種ごとの1日のスケジュール例、使用するツールや技術、チームの体制、そして入社後のキャリアパスや評価制度などを詳細に記述することが求められます。特に、「求める人物像」をスキル面だけでなく、「こんな価値観を持つ人と働きたい」といったカルチャーフィットの観点からも示すことで、より自社の求める人物像に近い求職者からの応募を促せます。
詳細な情報提供は、求職者が自身のスキルやキャリア志向と職務内容が合致するかを具体的にイメージする手助けとなり、採用ミスマッチを防ぐことにも寄与するでしょう。

3.働く環境・福利厚生に関する情報

働く環境・福利厚生に関する情報も応募意欲を左右する重要な要素となります。
例えば、勤務スペースやリフレッシュルームなどのオフィス環境を、臨場感あふれる写真や動画で紹介することで、求職者は入社後の働く姿をイメージしやすくなるでしょう。

また、福利厚生や休暇制度については、単に制度を羅列するだけでなく、「なぜその制度を導入したのか」という背景にある企業の想いを伝えることも有効です。「社員の成長を支援したい」「多様なライフステージを応援したい」といったメッセージと共に情報を発信することで、制度がより魅力的に映ります。
また、育児・介護支援制度の利用実績や男性社員の育休取得率を開示するなど、透明性を担保する取り組みも企業の真摯な姿勢を示す際に有効であり、求職者の信頼獲得につながります。

4.社員インタビュー・社員紹介

様々な部署や役職、年齢、キャリア背景を持つ社員に登場してもらい、仕事のやりがい、会社の好きなところ、入社後のギャップ、今後の目標などを語ってもらうインタビュー記事や動画は、企業文化をリアルに伝える際に有効です。特に、困難をどう乗り越えたかといったストーリーは、仕事のリアルな側面を伝え、共感を呼ぶでしょう。
なお、動画コンテンツであれば、社員の表情や話し方から、文章だけでは伝わらない人柄や職場の空気感まで伝えることができます。

5.選考フロー・よくある質問(FAQ)

応募から入社までの選考フローをステップごとに分かりやすく図示することで、求職者は選考の全体像を把握し、安心して応募に踏み出せるようになります。各ステップで何が行われるのか(書類選考、適性検査、面接回数など)、所要期間の目安、面接で重視するポイントなどを併記すると、より親切で丁寧な印象を与えるでしょう。
さらに、求職者が抱きやすい疑問をあらかじめ予測し、その答えをまとめてFAQとして掲載しておけば、求職者は即座に疑問を解消でき、応募へのハードルが下がります。また、採用担当者にとっても、問い合わせ対応の工数を削減できるでしょう。
FAQは一度作って終わりではなく、定期的に内容を見直し、更新していくことが大切です。

6.応募フォーム・問い合わせフォーム

どれだけ魅力的なコンテンツを用意しても、最終的な応募への導線が分かりにくかったり、使いにくかったりすれば、求職者は離脱してしまいます。ユーザビリティを考慮した応募フォームを目につきやすい場所に設置しましょう。
特に、スマートフォンからのアクセスが主流となっている昨今では、モバイル端末での操作性にも考慮したデザインが必須となります。また、応募するまでには至らないものの、個別に質問したいことがある求職者のために、気軽に連絡できる問い合わせフォームを設置したり、採用担当部署の連絡先を明記したりするのも良いでしょう。

7.企業の強み・魅力

数ある企業の中から自社を選んでもらうためには、「なぜこの企業でなければならないのか」という問いに対して、明確な答えを提示する必要があります。
採用サイトに記載する強みの例としては、卓越した技術力や高いマーケットシェア、急成長中の事業フェーズや社会貢献性の高いビジネスモデルなどが挙げられます。あるいは、リモートワークやフレックスタイムなど、先進的な働き方を実現する制度や、フラットで風通しの良い社風といった組織文化を魅力として打ち出すのも一つの方法です。

自社の強みや魅力を訴求するコンテンツを制作する際は、「風通しが良い」など抽象的な言葉で終わらせるのではなく、具体的なエピソードや制度などで裏付けることが重要です。例えば、「風通しが良い」という強みに対しては、「社長を含め役職名で呼ばない文化がある」「週に一度、全部署のメンバーが参加するオンライン雑談会がある」といった事実が言葉にリアリティを与えます。
また、受賞歴やメディア掲載実績など第三者からの客観的な評価をアピールすることも、信頼性を高める上で有効です。

まとめ

本記事では、採用専用サイトが企業の採用活動においてなぜ不可欠なのか、その重要性や設置のメリット、コンテンツ作成のポイントなどを解説しました。採用専用サイトは、単に求人情報を発信するだけではなく、企業の理念や文化を伝え、共感する仲間を集めるためのツールの一つです。

人材獲得競争が激化し、求職者の価値観が多様化する中で、求人媒体の情報だけでは企業の本当の魅力を伝えきることはできません。採用競争を勝ち抜くためには、自社の言葉で、主体的かつ多角的に情報を発信することが不可欠です。また、求職者一人ひとりとのエンゲージメントを深め、データに基づいた改善を繰り返しながら、常に最高の候補者体験を提供し続けることも意識しなければなりません。

本記事を参考に、より効果的な採用専用サイトの構築・運営に取り組んでみてください。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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