【企業向け】2024年冬季ボーナスの動向
ボーナスの支給は、従業員のモチベーションに直結する一方、予想よりも支給額が少ない場合、離職の要因になるケースもあります。採用活動や人材戦略に影響することもあるため、人事担当者としては、最新のボーナスに関する動向把握に努めることが大切です。
そこで今回は、帝国データバンクや労務行政研究所などから公表された調査データを用いて、2024年冬季ボーナスの動向を解説します。
2024年冬季ボーナスの動向
本章では、2024年冬季ボーナスの動向について解説します。
2024年冬季ボーナスの支給額は微減傾向
帝国データバンクが全国2万6,880社を対象に実施した「2024年冬季賞与の動向調査」によると、従業員1人当たり平均支給額を増加する企業は、23%と昨年(24.1%)と比較して微減する結果となりました。
東証プライム上場企業のボーナス額は増加傾向
一方で、一般社団法人 労務行政研究所が2024年10月に公表した「東証プライム上場企業の 2024年 年末一時金(賞与・ボーナス)の妥結水準調査」では、対前年同期比3.4%増になりました。
引用:一般社団法人 労務行政研究所「東証プライム上場企業の 2024年 年末一時金(賞与・ボーナス)の妥結水準調査」
2種の調査結果より、上場企業のような比較的規模の大きな企業では、ボーナス支給額が前年よりも増加している企業が多いと推察されます。
【業界別】冬季ボーナスを「増加」する企業の割合
冬季ボーナスを増加すると回答した企業のうち、金融・建設・製造の3業界においては、2年連続でボーナス額を増加する企業の割合が高まりました。
また、運輸・倉庫においては、半導体不足の解消に伴い自動車輸送の景気が回復したことやEC・通販市場の拡大が後押しとなり、前年(22.5%)より8.4ポイント上昇する結果となりました。
加えて、ボーナス額の増減は、業界によって大きく異なることがわかります。
ボーナス額を増加する背景には、運輸・倉庫のように「事業が堅調に伸長している」といったポジティブな要因を挙げる企業がある一方で、「人材獲得競争が激化している」など、人材採用における戦略の1つとしてボーナス額を増加する企業もありました。
【業界別】冬季ボーナスの支給額
支給額も業界によって大きな差が生じています。
労務行政研究所の調査で最もボーナス額が高額だった業界は、輸送用機器であり、中でも自動車業界は、102万円を超える額となりました。一方で、商業は57万と輸送用機器(自動車業界)と比較すると半額程度の水準であり、業界間で大きな格差が表れる結果となりました。
引用:一般社団法人 労務行政研究所「東証プライム上場企業の 2024年 年末一時金(賞与・ボーナス)の妥結水準調査」
ボーナス額は業界によって大きく異なるため、人事担当者は、自社が属する業界の水準を把握しておくことが大切です。
ボーナス支給有無と賃上げの関連性
株式会社フリーウェイジャパンが中小企業や零細企業に対して実施した「冬のボーナスに関するアンケート」によると、「冬のボーナスの支給予定あり/支給済み」と回答した企業のうち、過去半年以内に賃上げを実施した企業は73.1%と、7割以上もの企業が賃上げを実施していました。
一方、冬のボーナスの支給を予定していない企業においては、賃上げの実施率が39.1%に留まる結果となりました。
引用:株式会社フリーウェイジャパン「冬のボーナスに関するアンケート」
引用:株式会社フリーウェイジャパン「冬のボーナスに関するアンケート」
本アンケート結果より、ボーナス支給の有無やボーナス額の増加は企業の賃上げの動きと連動している傾向がみられ、企業の事業力が従業員の給与事情に大きく影響を与えていることがわかります。
余力のある企業は、ボーナスや賃上げなどによって従業員の給与に還元していますが、余力のない企業は賃上げを見送るに加え、ボーナスも支給しないケースが多く、二極化が顕著に表れる結果となりました。
ボーナスと転職の関連性
株式会社マイナビが実施した「2024年冬ボーナスと転職に関する調査」によると、約2人に1人が「賞与が少ない」ことを理由に転職していることがわかりました。
引用:株式会社マイナビ「2024年冬ボーナスと転職に関する調査」
また、株式会社マイナビが実施した「2023年冬ボーナスと転職に関する調査」における、予想よりも賞与額が下回った時の転職意欲の変化について問う設問では、「転職意欲が高まる」と回答した割合は、全体の72.3%にも上る結果となりました。
引用:株式会社マイナビ「2023年冬ボーナスと転職に関する調査」
2つの調査結果より、ボーナス額やボーナスの支給有無は、転職のきっかけに十分なり得ると言えるでしょう。
なお、従業員の流出を防ぐためには納得感のある評価・賞与額を示すことも大切です。しかし、納得感のある金額は、従業員1人ひとり異なるでしょう。企業としては、単にボーナスを支給するだけではなく、「評価に対するフィードバックを行う」「会社の業績について説明する」など、従業員が賞与額に納得できる環境を作ることが重要です。
また、ボーナスと転職は関連する傾向がみられることから、自社にとって貢献度の高い人材の流失を防ぐことを目的にボーナス額を引き上げることは、有効な施策になるでしょう。
ボーナスと採用活動の関係性
ボーナス額を増加した企業の中には、人員確保のために増額した企業も少なくありません。
そのため、比較的資金力のある大手企業や売上が好調な企業は、引き続きボーナス額の引き上げが継続すると考えられます。しかし、中小企業の中には、ボーナス引き上げ競争に追随できる体力がなく、十分な額のボーナスを支給できないケースもあるでしょう。このように企業規模間における格差拡大に伴い、中小企業の人材採用は今後ますます難易度が高まると予想されます。
まとめ
2024年の冬季ボーナスは、景気回復や人材採用競争に対する優位性の担保などを背景に、大手企業を中心に増加傾向がみられました。しかし、中小企業では、十分なボーナス額を支給できない企業も少なくありません。
また、ボーナスの支給有無や支給額は、従業員の転職や企業の採用活動にも影響を与えます。そのため、企業は単にボーナスを支給するだけではなく、ボーナス額に納得してもらえるような取り組みも実施しなければなりません。さらに、ボーナス増額が難しい中小企業では、従業員の流失を防ぐため、福利厚生の充実や働きやすい環境整備など、他の方法でボーナス格差を埋める取り組みも必要になるでしょう。
人事担当者は、各調査結果を参考に、改めて翌年以降のボーナス制度やボーナス額を見直し、評価に対するフィードバックのルール化を検討してみてください。
コラムを書いたライター紹介
日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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