【2030年問題】迫り来る人材課題と労働力不足|「強い組織」をつくる4つの施策
人口減少による労働力不足や働き方の多様化など多くの外的変化に伴い、日本の労働・採用市場は大きな転換期を迎えつつあります。
様々な人材・採用課題がある中でも、『労働力不足』は多くの業界・業種・企業に該当する深刻な問題です。
実際に、人材確保・労働力不足に頭を悩ます人事・採用担当者も多いのではないでしょうか。さらなる労働力不足の激化が懸念される2030年は目前に迫りつつあります。
2030年までに日本の労働・採用市場はどのように変化していくのでしょうか。また、どのような課題が浮上するのでしょうか。
今からの施策・行動が2030年の組織の在り方を大きく左右すると言っても過言ではありません。
本記事では迫る2030年に向けて、起こり得る企業の人材・採用課題と、労働力不足への課題を解決に導く強い組織をつく作るために企業がすべき4つの施策をお伝えします。
『2030年問題』とは?
『2030年問題』とは、今よりも少子化・高齢化・人口の減少が急速に進むことで、これらに付随する様々な問題が私たちの生活や身の回りで表面化する社会問題を総称する言葉です。
具体的には次のような社会問題が危惧されています。
- GDPの低下
- 過疎地域の増加
- 労働力不足
- 超高齢化社会(日本の総人口の1/3が高齢者)
- 年金問題
- 介護臨界 など
2030年問題における企業の人材課題は『労働力の不足』と『質の確保』
先述でご紹介した社会問題に付随し、企業にも大きな影響が生じると考えられます。
様々な問題が浮き彫りになる可能性が考えられますが、『労働力の不足』『質の確保』はどの企業にも共通して深刻な問題となり得るでしょう。
労働力の不足
パーソル総合研究所が発表した「労働市場の未来推計2030」によると、『2030年は7,073万人の労働需要に対し、6,429万人の労働供給しか見込めず、「644万人の人手不足」となる』との推計がなされています。
644万人という人数感にいまいちピンとこない方も多いかもしれませんが、都道府県別人口(総務省統計局の平成19年のデータ)において6位となる千葉県と同等の人数です。
これだけの労働力が不足してしまうと、どの企業も多かれ少なかれ影響を受けることになるでしょう。
参考:パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計2030」
参考:総務省統計局
質の確保
労働力が不足することによって生じ得るもう1つの懸念が『質の確保』です。
人材獲得競争の激化により、優秀人材の獲得がより一層困難になると考えられます。
また転職市場の活性化・年功序列制度の崩壊・ジョブ型雇用の推進などの労働・採用市場の変化に伴い、せっかく採用した優秀人材や新卒から育てたプロフェッショナル人材の流出も増えていくでしょう。
株式会社リクルートが2022年に発表した「2022年度 転職市場の動向」によると、全業界で中途採用が活況しており過去最高レベルの求人数を掲げる企業が続出したとのデータが公表されています。
また転職者が企業に応募する際、最も重視する点は「やりたいことを仕事にできる」 が56.3%と全項目のなかで唯一選択率が過半数を超えており、給与や年収見込みなどの収入面の項目を上回る結果となりました。
この結果から労働者は「やりがいが得られる仕事」「成長できる環境」を求めていることが伺えます。
より優秀な人材であれば「やりがいや成長が期待できない企業だ」と感じた場合、早々に転職に踏み切る可能性が高いと言えるでしょう。
優秀な人材流出を阻止するためにも、企業は『労働者から選ばれる強い組織』をつくらなければなりません。
2030年問題に向けて企業が講じるべき『選ばれる強い組織』をつくる4つの施策
先述の『労働力の不足』『質の確保』に対し、どのような施策・行動が必要なのでしょうか。また選ばれる強い組織をつくるためには何をすべきなのでしょうか。
本項目では4つの施策をご紹介します。
多様な働き方を実現し、「潜在労働力人口」を働き手に
総務省統計局の労働力調査(2015年)では、2015年の完全失業者数218万人のうち、「希望する内容の仕事がない」「技術・技能が求人要件に満たない」など求人条件と求職希望が合わないことにより仕事に就けない人は153万人いると公表されています。
多様な働き方を実現することで、このような潜在労働力人口を働き手に繋げることができるでしょう。
多様な働き方と一口に言っても、次の通り様々な働き方があります。
- 副業兼業
- フレックスタイム制
- 時短勤務
- テレワーク
- 業務委託化 など
自社のニーズに沿った働き方を取り入れることで、新しい労働力を確保するルートが拓けるでしょう。
外国人労働者の雇用
外国人雇用を視野に入れる企業も増えつつあります。
厚生労働省が公表している「厚生労働省白書」によると、外国人労働者の数は2008年に届出が義務化されて以降増加傾向にあり、2019年においては約166万人と、2008年(約49万人)比で約3.4倍に増えています。
今後も外国人労働者の数は増えていくと予想されますが、労働力不足により外国人労働者の雇用難易度も上がる可能性があります。
今のうちから外国人労働者の雇用ノウハウや雇用ルートを確保しておく価値はあるでしょう。
迫る2030年に向けて労働力確保競争の戦略糸口が見えてくるかもしれません。
参考:厚生労働省「人口減少下の中で誰もが 活躍できる社会に向けて」
参考:厚生労働省「厚生労働白書」
ジョブ型雇用の検討
キャリア採用のみならず、新卒採用でも注目を集める『ジョブ型雇用』。
ジョブ型雇用とは、職務内容・責任の範囲・勤務地・労働時間などを限定し、その条件にマッチする人材を雇用するもの。欧米企業を中心に行われている雇用方法です。
株式会社マイナビが正規雇用者男女700名を対象に行った「ジョブ型雇用と働き方への意識調査」の結果によると次の通りの結果となりました。
“ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用では、メンバーシップ型を望む割合が32.1%。ジョブ型24.6%に比べてやや高い。30~50代ではメンバーシップ型が上回るのに対し、20代はジョブ型が上回った。”
結果としてメンバーシップ型雇用を望む声がやや上回る結果となりましたが、両者に大きな差はみられませんでした。
注目すべき点は、2030年に組織の中核を担う20代は、ジョブ型雇用を望む声が上回っていることです。
そのため、もし2030年に同調査をした場合、20代だけではなく30代や全体の結果においてもジョブ型雇用を望む声が増えると想定されます。
今はジョブ型雇用の必要性を感じなくても、2030年問題を視野に入れて雇用の在り方を変革していく必要があります。
労働環境・成長促進環境の整備
労働力の確保は、新卒やキャリアなど新しい人材の雇用だけではありません。既存の従業員に長く働いてもらうことも大切です。そのためには、従業員視点の労働環境整備が欠かせません。
例えば介護や育児など、従業員が仕事と家庭を両立できるシステム・制度の構築や福利厚生の充実、女性活躍の推進などが挙げられます。
さらに優秀人材を育てる(育つ)環境提供も不可欠でしょう。
社員の成長を促す制度として研修の実施も挙げられますが、従業員エンゲージメントを向上させるのも1つの手です。社員の会社に対する愛情度を向上させることにより、仕事へのモチベーションが高まり離職リスクの軽減・生産性向上にも寄与するでしょう。
また従業員に新しい技術やスキルを習得させる『リスキリング』も人材活用において重要な施策になります。新しい人材の確保や優秀人材流出の防止だけではなく、手持ちの労働力をいかに活用するかという視点も持ち合わせておきましょう。
人材を囲い込むのではなく、人材に選ばれる組織をつくる!
これまでは、人材が流出しない囲い込む組織づくりが求められてきました。
しかし転職市場の活性化やジョブ型雇用の推進などの市場の変化に伴い、囲い込みの激しい組織・企業は労働者に嫌煙されてしまう可能性があります。
2030年問題に向けては、先述した4つの施策をベースに多角的に労働力を確保しつつ、技術的にも体制的にも強化を図り労働者から選ばれる組織をつくることが肝要です。
迫る2030年に向けて、まずは自社に訪れるであろう課題を洗い出すことが大切です。
そして課題に向けて自社に合った施策を1つずつ検討・推進し、時代を生き抜く強い組織を構築していきましょう。
コラムを書いたライター紹介
日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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