【人事向け】学内セミナーのメリットとは?採用につながる効果的な取り組みも解説


新卒採用の競争が激化する中、ダイレクトリクルーティングや内定者・既存社員によるリファラルなど、多様な手法を用いて学生と接点を図る企業が増えています。中でも「学内セミナー」は、ターゲットとなる学生に対して集中的にアプローチできるため、母集団形成に向けた施策の一つとして取り入れている企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、学内セミナーを実施することで得られるメリットや、採用につながる学内セミナー実施後の効果的な取り組みについて解説します。

学内セミナーとは?

学内セミナーとは、企業が大学や専門学校などの教育機関のキャンパス内、あるいはオンライン形式で、その学校に在籍する学生を対象に開催する説明会やイベントのことを指します。
主な目的は、自社の事業内容や企業文化、キャリアパス、新卒採用情報などを学生に直接伝え、自社の認知度向上や理解促進を図り、最終的には優秀な人材の獲得につなげることです。学内セミナーは、求人広告サイトの運営会社などが主催する合同企業説明会とは異なり、特定の学校の学生に絞ってアプローチできる利点があります。
母集団形成や学生の企業理解を促す施策として、多くの企業が積極的に採用活動に取り入れています。

株式会社ディスコが実施した「大学の就職・キャリア支援活動に関する調査」によると、企業来訪数や学内企業説明会への参加を希望する企業数は、「増えている」が「減っている」を大幅に上回っており、多くの企業が学内セミナーを重要な採用施策に位置づけていることがわかります。

引用:株式会社ディスコ「大学の就職・キャリア支援活動に関する調査」

学生の学内セミナー活用率

株式会社マイナビが実施した「マイナビ大学生インターンシップ前の意識調査(2021年卒)」では、主に業界・企業研究や職種・仕事研究などに向けて半数以上の学生が学内セミナーを活用していることがわかりました。

引用:株式会社マイナビ「マイナビ大学生インターンシップ前の意識調査(2021年卒)」

気軽に参加でき、質問しやすい雰囲気の学内セミナーは、学生にとって業界や企業情報を集める重要な機会であり、多くの学生が就職活動時に活用しています。

学内セミナーの実施時期

株式会社ディスコの調査では、学内セミナーを実施する時期は、採用広報解禁直前である「3年次の2月」が最多となりました。
しかし前年度調査と比較すると、3年次の2月に学内セミナーを開催する大学は微減しており、代わりに3年次の5月~11月にかけて学内セミナーを実施する企業が増えています。

引用:株式会社ディスコ「大学の就職・キャリア支援活動に関する調査」

企業の採用活動および学生の就職活動の早期化により、学内セミナーの開催時期も早まっている様子がうかがえます。

企業が学内セミナーを実施することで得られる3つのメリット

ここでは、企業が学内セミナーを実施することで得られるメリットを3つ紹介します。

大手企業との採用ブランディング格差を埋められる

学内セミナーという限定的な環境では、企業は事業の独自性、社会貢献度、働きがいなど、規模や資本金では測れない本質的な魅力を、学生一人ひとりに丁寧に伝えられます。例えば、経営者や第一線で活躍する社員が直接語りかけることで、企業の情熱やビジョンを学生にダイレクトに伝えられるでしょう。また、質疑応答の時間を十分に確保し、学生の疑問や不安に真摯に答える姿勢を示すことで、短時間でも信頼関係を構築でき「この会社で働いてみたい」という共感を育むことができます。

このように、学内セミナーは、企業の規模や知名度に左右されず、その企業の価値を学生に深く理解してもらうための貴重な場となり、有効に活用することで大手企業とのブランディング格差を埋めることもできるでしょう。

接点機会の少ない学生層と接触できる

学内セミナーは、通常の採用活動ではなかなか接点を持つことが難しい学生層と直接接触できる機会を得られることもあります。
例えば、特定の分野に精通した理系学生や、専門スキルを磨いている芸術系・体育会系の学生などは、一般の学生とは異なる就活スケジュールで動くことがあります。大学のキャリアセンターや特定の学部・研究室と連携し、アプローチしたい学生の関心を引くようなセミナーやイベントを企画することで、接点機会の少ない学生層にも自社の存在や魅力を伝えられるでしょう。

このように、学内セミナーを戦略的に活用すれば、これまでアプローチしにくかった学生層と出会う貴重な機会を創出し、採用の多様性と質を向上させることができます。

地方学生にもアプローチしやすい

学内セミナーは、地方に住む学生に対して効果的にアプローチできる利点もあります。地方の学生が都心部で開催される大規模な合同説明会や企業の個別説明会に参加する場合、時間的な制約や経済的な負担が伴います。そのため、魅力的に感じる企業があっても、接点を持つことを諦めてしまう学生も少なくありません。

その点、学内セミナーは、学生が日常的に通うキャンパス内で開催されるため、学生の地理的制約を軽減できます。企業にとってもこれまでリーチできなかった優秀な地方学生と出会う貴重な機会が生まれるでしょう。特に、地域に根差した企業や、全国転勤の可能性がある企業、U・Iターン就職を希望する学生を積極的に採用したい企業にとって、地方大学での学内セミナーは母集団形成において有効な手段になることが期待できます。

学内セミナーの種類と特徴

学内セミナーは、大きく次の3つの種類に分けられます。

  • 大学主催の合同型学内セミナー
  • 企業主催の単独型学内セミナー
  • ゼミや研究室と連携した専門分野特化型の学内セミナー

それぞれ異なる特徴を持つため、企業は自社の採用戦略やターゲットとする学生層などを考慮し、最適な形式を選択することが大切です。ここでは、各学内セミナーの特徴を解説します。

大学主催の合同型学内セミナー

大学が主催する合同型学内セミナーは、大学のキャリアセンターや就職支援課が主体となって企画・運営する形式のセミナーを指します。大学が複数の企業を招き、合同企業説明会のような形式で開催します。時には、特定の業界やテーマに絞ったり、単独企業の説明会を大学が誘致・サポートしたりすることもあります。

大学主催の合同型学内セミナーは、大学が学生を集めてくれるため、企業は比較的少ない労力で多くの学生と接点を持つことができます。また、大学主催という背景もあり、学生からの信頼を得られやすい点もメリットといえるでしょう。

一方、複数の企業が参加する場合、一社あたりの持ち時間が限られたり、他の参加企業との比較の中で自社の魅力を際立たせる工夫が必要になったりします。また、大学のスケジュールや方針に合わせる必要があるため、自由な日時設定やプログラム構成が難しいケースもあります。

企業主催の単独型学内セミナー

企業主催の単独型学内セミナーは、企業が主体となって特定の大学のキャンパス内で単独の説明会やセミナーを開催する形式を指します。主に大学のキャリアセンターや学部、研究室などに協力を依頼し、教室や会場を借りて実施します。

企業主催の単独型学内セミナーは、プログラム内容や時間配分、演出などを企業が比較的自由に設計できるため、自社の魅力や伝えたいメッセージを深く掘り下げて学生に伝えられます。例えば、社員によるパネルディスカッションやオフィス紹介動画の上映など、オリジナリティあふれるコンテンツを公開することで、学生に対して強い印象を残せるでしょう。

デメリットとしては、集客活動を企業が主体的に行わなければならない点が挙げられます。大学が集客を支援してくれることもありますが、企業の知名度やセミナー内容によっては、思うように学生が集まらないこともあるでしょう。また、大学と一定の関係性を構築していないと、実施が難しい場合もあります。

ゼミや研究室と連携した専門分野特化型の学内セミナー

ゼミや研究室と連携する専門分野特化型の学内セミナーは、企業が特定のゼミや研究室に所属する学生をターゲットとして開催する、より専門性の高い学内セミナーを指します。

特定分野に精通した学生や企業が求める特定のスキル・知識を持つ学生に対して、ピンポイントでアプローチできる点がメリットであり、一般的な説明会では伝えきれない専門的な情報や、その分野出身の社員が活躍している事例などを具体的に紹介することで、学生の知的好奇心を刺激し、自社への興味・関心を醸成できます。また、少人数制で開催されることが多いため、学生一人ひとりの専門性や研究内容について深くヒアリングしたり、学生の疑問に対して細やかに応対できたりするなど、質の高いコミュニケーションを通じて、相互理解を深めることもできます。

デメリットとしては、開催に至るまでに担当教員との信頼関係の構築が必要となる点、アプローチできる学生数が限定される点が挙げられます。

採用につながる学内セミナー後の効果的な取り組み

学内セミナーは、開催して終わりではありません。セミナーで出会った学生を採用選考へとつなげるには、セミナーで高まった学生の興味や関心を維持し、さらに深めていくための取り組みが不可欠です。
ここでは、採用につながる学内セミナー後の効果的な取り組みを紹介します。

お礼メールを送付する

学内セミナーで接点を持った学生には、できるだけ速やかにお礼メールを送付しましょう。お礼メールには、セミナー参加へのお礼だけでなく、セミナーの内容を簡潔に振り返る一文や、当日伝えきれなかった情報、今後の選考スケジュール、問い合わせ先などを記載するとよいでしょう。これにより、学生はセミナー内容を振り返り、次のステップに進みやすくなります。

可能であれば、定型文を一斉送信するのではなく、可能な範囲で個別性の高いメッセージを添えるのも有効です。例えば、セミナー中の質疑応答で特定の質問をしてくれた学生に対して、その質問内容に触れた上でより詳細な回答を補足したり、特定のワークで積極的に発言していた学生に対してその点を評価する言葉を添えたりするなど、パーソナライズされたメッセージを伝えることで、学生に特別感を与えることができます。

セミナー後に個別相談会を開催する

疑問や不安を解消しきれていない学生や、より深く企業のことを知りたいと考えている学生に対して、個別相談会を実施するのも有効です。
個別相談会は学内セミナーと異なり、学生は、個人的なキャリアの悩みや、企業の詳細な情報、働き方に関する疑問などを率直に質問できます。学生一人ひとりのニーズに合わせたきめ細やかな情報提供ができるため、特に、選考に進むかどうか迷っている学生や、複数の企業を比較・検討している学生に対しては、応募に踏み切るきっかけを与えられることもあるでしょう。

インターンシップに誘導する

インターンシップは、学生が実際の業務を体験したり、社員と長期間にわたってコミュニケーションを取ったりする中で、企業文化や仕事のやりがいを肌で感じることができる貴重な機会です。学内セミナーで得た企業への関心をインターンシップというより深い体験へとつなげることで、学生の企業理解は格段に深まり、入社意欲を大幅に高めることができるでしょう。

学内セミナーの最後にインターンシップの告知を行い、その場で申し込みを受け付けたり、セミナー参加者限定の早期選考枠を設けたりするのもよいでしょう。また、セミナーとインターンシップのプログラム内容を連動させ、一貫性のあるメッセージを発信することも有効です。例えば、セミナーで紹介したプロジェクトの一部をインターンシップで体験できるような設計にすると、学生の参加意欲を高めることができるでしょう。

まとめ

学内セミナーは、新卒採用における母集団形成において有効な施策の一つです。
ただし、単に学内セミナーを実施するだけでは、学生の採用につなげることはできません。セミナーの特徴を理解し、自社に合った形式で学内セミナーを実施するとともに、学内セミナー開催後は、お礼メールの送付、個別相談会やOB・OG座談会の開催、インターンシップへの誘導なども意識的に取り組むことが大切です。

多くの企業が学内セミナーを重要な採用施策と位置づけており、採用競争が激化する新卒採用では、その取り組みが成否を左右することもあります。ぜひ、本記事を参考に、学内セミナーの位置づけや在り方を見直し、より効果的な運用や取り組みへと改善してみてください。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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