内定承諾後の辞退事例と辞退を防ぐ時期別フォローポイント


新卒採用は、中途採用とは異なり内定承諾後から入社まで期間が空きます。そのため内定承諾後も就職活動を継続する学生は少なくありません。
たとえ内定承諾したとしても、入社までの間に辞退してしまう学生もいるでしょう。内定承諾後の辞退は、事業運営や次年度の人事戦略に支障をきたす可能性もあり、極力避けたいものです。

内定後辞退を避けるためには、内定後辞退を引き起こす要因を知っておくことはもちろん、初めて社会に出ることへの不安を抱く学生の心情を汲んだフォローや辞退対策が必要です。

そこで本記事では、内定承諾後に辞退する事例を紹介すると共に、内定承諾後の辞退率や内定承諾後から入社までのフォローポイントを紹介します。

内定承諾の法的拘束力

多くの企業は、内定学生に対し内定承諾書を発行します。
学生は内定承諾書にサインをし、企業に返送・提出することで労働契約が成立します。

しかし内定承諾書に法的拘束力はありません。そのため学生は、内定承諾書を提出した後でも入社を辞退できます。
学生が入社辞退した場合は、入社辞退の申し出をした日から2週間経過すれば企業の承諾がなくても労働契約が解消されます。 (民法第627条)

ー第六百二十七条
 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

内定承諾後に辞退する事例

ここでは、内定承諾後に辞退する事例を紹介します。
内定承諾後辞退を防止するためにも企業の人事担当者は、どのようなタイミングで内定承諾後辞退が発生するのか、理解しておくことが肝要です。

取得単位不足による留年

取得単位不足による留年を理由に辞退を申し出る学生も一定数います。

大学を卒業できない場合、採用の要件を満たせないため、企業としては内定を取り消しせざる得ない場合もあるでしょう。
しかし中には、短大卒待遇で入社を受け入れ、授業のある日は学業を優先させるケースもあります。(卒業後は大学扱いとして待遇)

学生の希望や企業の制度を加味し、取得単位不足による留年に対しどのように対応するのか検討しましょう。

家庭の事情や家族からの反対

家庭の事情や家族からの反対を受け、内定承諾後辞退に至る場合もあります。
このような場合は、学生本人の意向を優先にしながらも家庭の事情や家族の意見も確認するようにしましょう。

心身の問題

心身上の問題が発覚し内定承諾後辞退に至った場合は、本人との話し合いのもと入社が困難なのか判断しましょう。
ただし場合によっては、専門的立場から指導・助言してくれる産業医などからのアドバイスや判断を仰ぐ必要も生じてくるでしょう。

内定承諾後辞退を受け入れるのか、現状の心身の問題を容認した上で学生を迎え入れるのか、学生の将来や産業医の意見を加味し、慎重に判断しましょう。

他社から内定をもらった

株式会社ディスコが運営しているキャリタス就活が行った『7月1日時点の就職活動調査(2024卒)』によると、内定を持ちながらも就職活動継続する学生は13.6%にも上りました。

引用:株式会社ディスコ キャリタス就活『7月1日時点の就職活動調査(2024卒)』

内定を獲得してからも就職活動を継続する学生は、一定数いることが分かります。他社の就職活動状況によっては、先に内定が出た企業の内定を一旦承諾することも十分にあり得るでしょう。

他社から内定をもらったことによる辞退を防ぐためには、無理に内定承諾をさせない、学生と本音を聞き出せる関係性を築いておく、などの取り組みを意識する必要があるでしょう。

公務員試験に合格した

公務員試験の結果よっては、内定承諾後に辞退を申し出る学生もいます。
公務員試験や公務員採用面接は、6月~9月頃に実施されるため、既に民間企業の内定を持っている学生も少なくありません。

「とりあえず、民間企業の内定を承諾しておこう」と考える学生もいるため、公務員試験や面接の結果が発表される時期は、内定承諾後の辞退も若干高まる傾向が見られます。
想定外の内定後辞退を防ぐためにも、学生が望むキャリアの聞き取りを徹底しましょう。

教員試験に合格した

教員試験の実施期間は自治体によって異なりますが、多くの場合7月頃に1次試験が実施され、8~9月頃に2次試験が実施されます。1次試験の合格発表が行われる8月や2次試験の合格発表が行われる10月頃に内定後辞退が増える傾向があります。

教職を志望している学生に対しては、内定承諾の時期を調整すると共に内定後も継続したフォローを欠かさないようにしましょう。

内定承諾後の辞退が増える時期

EDGE株式会社が実施した調査によると、内定承諾後の辞退ピークは内定式直前の9月と公務員採用面接の合否が発表される11月です。

引用:EDGE株式会社『エアリーフレッシャーズクラウド』

内定承諾後辞退のピークが内定式直前の9月であることから、学生は複数の内定を確保しているものの、「報告しにくい」「迷いが長引いている」などの理由から辞退の申し出が遅くなってしまうようです。

さらに年始にかけても一定割合の内定承諾後辞退が発生しており、入社直前まで辞退を迷っている学生も一定数いることが分かります。

また株式会社TalentXが運営するMyReferが実施した『21卒就活生意識調査』によると、約25%の学生が、「2社以上に内定承諾をする意向」と回答しています。

引用:株式会社TalentXMyRefer『21卒就活生意識調査』

人事担当者は、“4人に1人の学生が内定承諾を複数行う” 実情があることも理解しておく必要があるでしょう。 

内定承諾後から入社までのフォローポイント

最後に内定承諾後から入社までのフォローポイントを紹介します。
内定承諾後からは、入社までの期間や学生の心情の変化に合わせたフォローが大切です。

本項目では、時期別にフォローのポイントを紹介します。

4月~6月

4月~6月は、多くの学生が内定を獲得する時期です。

複数社の内定を持つ学生に対しては、オワハラと捉えられるような行為は控えましょう。意思決定に必要な情報提供はもちろん、納得して内定承諾をしてもらえるよう改めて信頼関係の構築に努めましょう。

また進学や公務員・教員試験の受験の有無、他社の選考状況の確認も忘れてはなりません。内定を決めきれない学生に関しては承諾を強要せず、学生の思い描くキャリアに寄り添うコミュニケーションを心がけましょう。

7月~9月

7月~9月は、大学院の試験結果や公務員試験の結果が発表される時期です。
また他社から内定を獲得する学生や新しく知った会社を気にし始める学生も出てくる頃でもあります。

この時期は次年度の夏インターンシップと重なるため、内定承諾者とのコミュニケーションに注力できない人事担当者も多いかもしれません。しかしここで、接触機会を減らしてしまうと学生の興味・関心は他に移ってしまう可能性も考えられます。

気持ちが揺れ動きやすい時期だけに、定期的なコンタクトを心がけましましょう。
人事担当者だけでフォローが難しい場合は、リクルーターや現場社員の協力を仰ぎながら会社全体で学生とコミュニケーションを図る機会を創出していきましょう。

10月~12月

10月になると、内定承諾後の辞退は一度落ち着きます。
学生も内定式などを経て、入社意欲が高まるでしょう。
一方で、「同期や社員と上手に関係を築いていけるのか」と、不安を抱える学生が増える時期です。

先輩社員との座談会や内定式など内定者同士が交流する場では、単なる懇親会・交流会で終わるのではなく、チームワーク醸成や相互理解できる機会を設けることを意識してみましょう。

1月~3月

入社が目前に迫った1月~3月は、社会人としての一歩を踏み出すことに不安が増大する時期です。

実務イメージを形成する手助けとなるよう、配属予定先社員との交流機会を設けるのも良いでしょう。また生活面やプライベートに関する質疑応答時間や年齢の近い社員から話を聞く機会を設けるなど、学生が実際に働く具体的なイメージを描ける情報・交流機会の提供に努めましょう。

まとめ

内定承諾は入社意思を示すものですが、様々な理由から内定承諾をした後に入社を辞退する学生もいます。
人事担当者は少なからず内定承諾後の辞退が発生する可能性があることを理解した上で、時期に合わせた適切なフォローを実施しなければなりません。

入社辞退の申し出が遅れるほど、学生・企業双方にとって大きな機会損失を生み出すことになりかねません。
適切なフォローを実施することは、早期に学生の辞退意向を聞き出すチャンス創出にもつながります。また入社に向けたマインド醸造にも寄与し、早期退職を防ぐ役割も期待できるでしょう。

内定承諾後のフォローは、次年度の採用活動と重なるため後回しになってしまう企業も少なくありません。しかし改めて内定承諾後のフォローの需要性を認識し、内定承諾者が無事全員入社に至るよう、フォローに努めましょう。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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