社員の働き方を指し示すキャリアパス制度を企業が導入するメリット


キャリアパスとは職歴(キャリア)と道筋(パス)を組み合わせた言葉で、従業員が企業での仕事を通してキャリアを積んでいくための道筋を意味します。社内でのキャリアパスを社員に対して明確に示す、いわゆる企業での異動・昇進ルートを明示するシステムを「キャリアパス制度」と言います。組織の中で従業員個人が目標とするポジションや、キャリアを積むために必要な工程やスキル・能力を明確にし、従業員を目標に向かって前向きに進ませることが目的。キャリアパス制度は人材の流出を防ぐために有効なもので、今ではこの制度を導入する企業が増えています。

キャリアパス制度を導入する企業が増えている

就労環境が変化している昨今では、就職した企業に定年まで勤め上げる終身雇用は崩壊しつつあり、転職は当たり前という考え方が広まっています。
今後離職者は増加する傾向にあり、企業は人材流出を防止するための対策を講じる必要があります。

その対策のひとつとして注目されているのがキャリアパス制度です。
キャリアパスを明確に示すことで、従業員は「現在のスキルがどのポジションにあるか」や「今後どのくらいの期間で昇進するか」などがはっきりと分かります。
今の会社に残るメリットが分かれば転職なども慎重になり、人材流出の防止につながります。

そこで本記事では、キャリアパス制度のメリットや各社の成功事例、構築手順について解説します。従業員のモチベーションアップによって定着率向上を目指している人事担当者の方はぜひお読みください。

キャリアパス制度を導入するメリット

キャリアパス制度が企業にもたらすメリットについて紹介します。

人材の確保

社内におけるキャリアアップの目標を示すことで、身につけるべき能力や昇進への道筋が明確化します。
キャリアアップに対する従業員のモチベーションも向上し、人材の定着率を高めることになります。
離職率の低下は企業イメージの向上にもつながるため、採用時にもより良い人材が集まりやすくなるというメリットもあります。

配置の適切化

キャリアパスに基づいて従業員のスキルを評価できるため、従業員個人に合った部署や業務を判断しやすくなります。
個人に適した配置ができれば業務の効率化や従業員のモチベーションアップにつながるほか、企業の人事管理も効率化します。

業績の向上

流出を防いで優秀な人材を確保し、適した場所に配置することで業務は効率化します。
それにより、仕事のクオリティ向上や残業時間の削減も期待できます。
これらが積み重なり、最終的には会社の業績アップにつながります。

キャリアパス制度の導入事例

実際にキャリアパス制度を導入した企業の成功例を見てみましょう。

若手や女性の活躍・意欲の向上に成功

コニカミノルタ株式会社では「本人・上司・会社」の三位一体でキャリアを支援する取り組みにより、自律的にキャリアビジョンを実現するための支援をしています。
「3年後のありたい姿」を考える機会を全従業員に毎年提供しています。
現状把握と1年間で身につけたいスキルや経験を目標・計画に落とし込むことで、結果として若手や女性の活躍が増え、従業員の意欲向上に成功しています。

従業員のキャリア意識が向上

大同生命保険株式会社では、能力の発揮とチャレンジの支援について3つの取り組みを行っています。
人材育成のためのポータルサイト作成、各部署が持っていた人事資料の集約と一元化、階層別のキャリア研修を実施しました。
個々のキャリアの把握と見える化により、従業員のキャリア意識向上に成功しました。

女性管理職比率が増加

株式会社みずほフィナンシャルグループも、キャリア支援に力を入れています。
入社前からキャリアプランをイメージできるよう、将来のキャリアパスを新卒採用情報サイトに掲載しています。
既存の従業員に対しても、キャリアパスが描きやすくなるような取り組みを行なっています。
産休や育休を取得しつつ活躍する女性社員のロールモデルを示すことで、女性のキャリアアップへの意識が向上し、女性管理職比率が11%から15%へと増加しました。

実際にキャリアパスを構築するための手順

人事評価制度の要素となる3つの制度

等級制度

それぞれの職域において等級とその業務内容について明示し、各等級ごとに求められるスキルや能力を明確化します。
この等級の設定は、キャリアパスのフレームとなる重要なポイントです。
役職がないところにも等級を設け、実績やスキルに応じて細かく設定すると良いでしょう。

評価制度

上位等級に昇格するために必要な条件(能力・実績など)を設定します。
この条件もできる限り具体化しておくことで、従業員のパフォーマンスを評価しやすくなります。
従業員の努力目標とすることもでき、モチベーションの向上にもつながります。

給与制度

等級が上がれば業務の難易度が上がり責任も重くなりますが、給料が上がらなければ従業員は上位等級を目指さない可能性があります。
昇給が約束されているなら等級を上げるために努力する意欲も湧くはずです。
そのため、等級に応じて給料を設定しておくことも重要と言えます。

研修制度

従業員が次の等級に昇格するための研修機会を設けることも必要です。
昇格のためのスキルや能力を学ぶための研修を、職域や等級に応じて適切な時期に企画しましょう。
業務に特化したOJTや社外講師によるセミナーのOff-JTなどを活用し、有効な研修制度を確立します。

さらにフォローアップの体制を整える

キャリアパス制度を整えることで、精神的に負担を感じる人も少なくありません。
それをカバーするためにはフォローアップ体制もしっかりと整えることが大切です。

例を挙げると

  • 個人の希望や適性に合わせたキャリアパスを示す
  • 複数の選択肢を用意して柔軟性を持たせる
  • キャリアパスに信頼性を持たせるためロールモデルを示す

このようなフォロー体制を整えておくことで、キャリアパス制度はより効果的に従業員に受け入れられるでしょう。

キャリアパス制度により人材流出を防ぐ

ここ数年で終身雇用が崩壊しつつあり、転職が当たり前の時代となってきています。
企業としてはせっかく採用して育て上げた人材をみすみす手放すわけにはいきません。
キャリアパス制度は、人材流出を防ぐ有効な方策の一つです。実際に本制度を取り入れて良い結果を出している企業も少なくありません。
本記事で取り上げた内容を参考に、ぜひキャリアパス制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

コラムを書いたライター紹介

土方駿次

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操縦桿をペンに持ち替えフリーランスライターに転身した元公務員。ビジネス系、スポーツ系、セールスライティングから恋愛系記事まで幅広く執筆中。Twitterではちょっとした人気アカウントも運用中です。

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