【ウマい人事編集部 特別企画人事数珠つなぎ】~株式会社トレジャーボックス顧問 鎌田 雅之氏~


今回の、ウマい人事編集部 特別企画『人事数珠つなぎ』の取材対象者様は、不動産コンサルタント事業やリフォーム・リノベーション事業を展開する株式会社トレジャーボックスで顧問を務める鎌田 雅之氏。

鎌田氏は、これまでにトレジャーボックス社を含め3社の人事部署の主軸的存在として、多様な採用実績の創出や制度の構築に尽力されてこられました。

今回は、40年間もの人事経験を有する鎌田氏から、長年の人事活動の中で実施した採用施策や組織における人事の役割について学びたいと思います!

―――自己紹介をお願い致します。

鎌田 雅之(かまだ まさゆき)と申します。
約40年間、人事採用教育畑に身を置き、企業の人材採用・教育に携わってまいりました。

私の人事経験は、米国半導体製造装置メーカーからスタートしました。入社した当初は30名規模の会社でしたが、12年間の在籍を経て社員数は2,000名にまで増員。1年に1か所ずつ新しい事業所を増設するようなペースで事業を拡大していたため、当時は西日本地区の人事総務課長として新卒採用・中途採用合わせ年間約100名の採用に取り組んでいました。

続いて入社した企業は、人材コンサルタント業を営む会社。200名規模ほどの企業でしたが、医療福祉団体・アパレル会社・専門商社・建設会社など、様々な業界・業種、専門性に富んだ人材の採用や教育に携わりました。

そして2014年から現在までは株式会社トレジャーボックスに在籍し、人事課課長として人材の採用・教育を担う他、総務全般・経営企画のマネジメントにも取り組みました。

―――多様な業界・規模の企業で人材の採用・教育に携わりながら人事経験を積まれてきたのですね。
学生への就職指導も実施していたそうですが、就職指導を始めた背景を教えてください。

1985年から、ボランティアとして延べ5,000人以上の学生に対し就職指導を実施してまいりました。過去に指導した学生の主な就職先は、大手証券会社や都心銀行、商社、メーカーなど。大学教授からの依頼によって指導を実施することもありました。

学生への就職指導を始めたのは、私が20代後半の時。当時面接した学生から「履歴書を添削して欲しい」と相談を受けたことがきっかけでした。
自ら履歴書の書き方について指導を求めた彼にレクチャーをした際、「自分の周りにも就職活動に悩む学生がいるため、是非とも指導をして欲しい」と依頼を受けたことが学生への就活指導の始まりです。

早速、週末に彼が在籍する勉強会へと足を運び指導を実施しました。その後、勉強会の口コミを聞いた学生や教授から声がかかるようになり、様々な大学やサークルなどで就職指導をするようになりました。

―――採用する立場と送り出す立場の両方をご経験されたのですね。
現在在籍しているトレジャーボックス社では、新卒採用も実施しているかと思います。働き手の獲得という観点から
すると中途採用だけで人材を獲得するのも1つかと思いますが、なぜ新卒採用も実施されているのでしょうか。

やはり中途社員だけだと、会社独自の企業文化が育たないんです。

これから何十年も先に渡って事業を存続させること、企業文化を継承させていくことを考えると、新卒社員の採用は欠かせません。これまでの人事経験からも、次世代への企業文化の継承を担う新卒社員の採用は必ず実施しようと考えていました。

―――トレジャーボックス社が属する不動産業界は学生からの人気が低く、採用活動の在り方に悩む企業も少なくありません。
その中で新卒採用を成功に導くために、工夫したことや実施した取り組みを教えてください。

働き方の改革に注力しました。

以前のトレジャーボックスは年間休日が極端に少なかったのですが10年前から働き方を見直し、年間休日113日プラス全社一斉有給休暇取得日5日を設け、年間118日は必ず休むようになりました。加えて、厚生労働省から『若者応援宣言企業』として認定を受けるなどの取り組みも実施。

このように会社を経営する視点だけではなく、現場や従業員と同じ視点を意識した改革や制度の策定を心掛けてきました。

―――続いて、鎌田さんが人事担当者として候補者や応募者とコミュニケーションを図る際に大切にしていることを教えてください。

候補者や応募者の方々と視線を合わせることでしょうか。

採用する立場だからといって、企業や人事担当者の方が立場が上になるわけではありません。応募者も企業(採用担当者)も“同じ立場”なんです。その点は昔から変わらず一貫して大切にしています。

そのため、面接の場であったとしても、就職相談のような会話になることもしばしば(笑)応募者にとってより適性の高い職場があれば、他社を紹介することもあります。

―――やはり採用は双方にとって納得性の高いものでなければならないのですね。
では、鎌田さんが採用活動を推進する中で直面した課題があれば教えてください。

応募がなかなか来ないことです。
様々な求人媒体やサイトを使用しておりますが、苦戦を強いられます。

ただ応募が来ないことの他にも、人材戦略には常に様々な課題が付きものです。例年同じことを繰り返していても期待する成果は得られないでしょう。
40年間の人事経験の中では、毎年新しい施策の実施や制度の策定に取り組むようにしていました。

―――具体的には、どのような施策や取り組みを実施したのでしょうか。

例えば、今では当たり前に使われている『人財』という言葉。以前は掲載できない言葉でした。

昔は、求人情報の掲載先として新聞広告を利用するケースが一般的でした。インパクトのある打ち出し、魅力的な訴求をするためには、新しい観点からのアプローチが不可欠です。しかし当時の新聞への求人広告掲載は出稿基準が厳しく、ありきたりな単語・汎用的な言葉しか使用できませんでした。

求人広告に『人財』という言葉を使いたいと願い出ても、新聞各社からは断られる日々。それでも根気よく説得を続けた結果、造語として認められ、新聞に掲載する求人広告に『人財』という言葉を使用することができました。

また、求人を広告する手段としてラジオ放送を用いた経験もあります。

大阪府を放送対象とする放送局の開局に際し、当時の放送局役員より「開局に際して、何か広告を出して欲しい」と依頼を受けたことがきっかけです。せっかくであれば、「求人広告を打ち出そう!」と思い至り、ラジオ放送で求人広告を打ち出しました。当時は「求人広告をラジオでどう伝えるのか?」と、広告制作に非常に苦労したのを覚えています。

当時の放送局役員曰く、“ラジオで日本初、電波で日本初の求人広告”だったそうです。

さらに翌年には、近畿広域圏を放送対象にするラジオ局から求人広告を打ち出しました。しかしそれだけでは、前年と同じまま。もうひと工夫しようと、ラジオ局の阪神タイガース戦の中継と阪神甲子園球場の入場チケットをセットにし、求人広告に加え販売促進・営業促進にも寄与する施策へとブラッシュアップさせました。

―――本当に様々な施策や取り組みを率先して実施されてきたのですね!
続いて、人材の採用や教育に携わる人事とは、企業にとってどのような役割を担うのか、鎌田さんの考えを教えてください。

まさに企業の“根幹”です。
4大経営資源と言われる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の中で、唯一ヒトが他の資源を活用することができます。

この「ヒト」という資源に対し、“どのような想いを持った経営陣がいるのか?”という点も人材の採用・教育においては、重要な観点になるのではないでしょうか。せめて最終面接には社長が登場しないような企業へは就職を勧められません。やはり社長自ら採用の場で想いを語る組織にしていくことも大切だと思っています。

―――ありがとうございます!
では最後に、人事担当者に向けて一言お願い致します。

昨今の採用は、売り手市場と言われているだけあり、企業にとって厳しい状況です。現状の課題を打破できる施策や取り組みの実施も、自社だけでは難しいと悩む企業が大半ではないでしょうか。しかし何社か集まり協力できる体制を構築すれば、新しい施策や取り組みを始められることもあるでしょう。

採用に悩む人事ご担当者様、新しい施策を始めたいと考える採用ご担当者様がいらっしゃいましたらご連絡ください!

より良い人事制度の実現、求める人財の採用に向け、ぜひ連携を図っていきましょう。

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人事担当者に役立つ情報を集めることが日々の日課。仕事のモチベーションは疲れた時に食べる人参です。

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