2026年1月の求職者の動向は?求職者の属性別に企業の採用戦略を解説

例年1月は、新卒・中途・アルバイトといったあらゆる属性の求職者が活動を本格化させる時期です。
新卒採用は採用広報解禁に向けて学生の企業研究が一段と進み、中途採用では新年度入社を目標に転職活動を加速する求職者が増える傾向が見られます。また、学生アルバイトや主婦層、フリーターも各属性によって動きが異なるため、企業は求職者の行動特性を理解し、属性ごとに最適化されたアプローチに努める必要があります。
本記事では、2026年1月における採用市場全体の動向をお伝えするとともに、求職者の属性ごとの活動傾向と効果的な採用戦略を解説します。
2026年1月の採用市場動向
2026年1月は、年末年始の休暇期間を経て、市場全体が再び勢いを増す時期です。特に2026年は、前年までの物価上昇を受けた大幅なベースアップが定着し、求職者の年収水準に対する感度が極めて高くなっている点が特徴です。
中途採用市場においては、年末年始に自身のキャリアと生活水準を天秤にかけた潜在層が、より好条件を求めて「顕在層」へと転換するタイミングであり、市場の流動性は例年以上に高まることが予測されます。
新卒採用では、早期化の影響が顕著に表れ、「3月広報解禁・6月選考開始」という形骸化したスケジュールに縛られる学生は少数派となり、1月の時点で既に内々定を保持しながら、より納得度の高い企業を探して活動を継続する「二極化」が鮮明になっています。この時期、企業には単なる情報発信ではなく、他社との差別化要素を「具体的なキャリアパス」や「自己成長の機会」として提示できるかどうかが問われます。
さらに、中途採用・新卒採用を問わず、単に業務をこなす人材ではなく、テクノロジーを使いこなし業務改善を主導できる人材へのニーズが集中しています。求職者や学生もこのトレンドを敏感に察知しており、年末年始の長期休暇を利用して自身のスキルセットを見直し、新しい領域への挑戦を視野に入れる動きが加速します。
そのため、企業は「未経験歓迎」といった抽象的な言葉ではなく、入社後にどのような教育プログラムを提供し、どのようなスキルを習得できるのかを具体化し、求職者の「成長意欲」に訴求するアプローチが不可欠です。
このように、2026年1月の採用市場は、賃上げ、採用スケジュールの前倒し、そしてスキル重視の採用という三つの要件が重視されると推察されます。企業は過去の成功体験に固執せず、リアルタイムの市場データに基づいた機敏な方向修正と求職者のインサイトを読み解いた情報発信を並行して行う必要があります。この1月の初動を誤れば、4月入社のキャリア人材確保や翌春の新卒採用における母集団形成に致命的な遅れが生じるリスクがあることを、採用担当者はしっかりと認識しておきましょう。
【属性別】求職者の就職・転職活動傾向
1月は、求職者の属性によって活動のピークや注力するべきポイントが大きく異なります。それぞれの属性がどのようなタイミングやニーズで活動していのるのかを正確に把握することが、自社の採用施策や戦略の効果を高める上で必須となります。
本章では、求職者の就職・転職活動傾向を属性別に解説します。
就活生
新卒学生にとって1月は、3月の採用広報解禁や6月の選考解禁に向けて、企業研究や自己分析に本格的に取り組み始める時期です。この時期の学生は、就職活動に対する意識が一段と高まり、将来のキャリアに対する具体的なイメージを形成しようとしています。特にインターンシップに参加できなかった、もしくは興味はあるが接点がなかった業界や企業に対して、能動的に情報収集を行う傾向が見られます。
具体的には、採用サイトの企業情報だけでなく、SNSやオウンドメディア、YouTubeチャンネルなど、企業が発信する多様なコンテンツを駆使して、企業の理念や働く社員の雰囲気、具体的な職場環境など、求人票だけでは伝わりにくい「リアルな情報」を求める学生が増えます。企業にとっては認知度向上・志望度向上を図る絶好のタイミングといえるでしょう。
キャリア人材
中途採用市場におけるキャリア人材は、年末の賞与を受け取った直後の1月から転職活動を本格的に開始する傾向が顕著に表れます。多くの人が4月の新年度に合わせた転職を目指すため、応募から内定までのスピードが鍵を握るでしょう。
企業としては、求人公開や選考プロセスの準備を1月上旬から整えておくことで、採用競合となる企業より優位に立つことができます。また、キャリア人材の多くは複数の企業と同時進行で選考を受けているため、面接日程の調整や柔軟な対応が求められます。企業側が迅速かつ丁寧なコミュニケーションを取ることで好印象につながり、内定承諾率の向上にも寄与するでしょう。
また、年末年始の落ち着いた期間を経て、自己のキャリアを見つめ直した結果、より専門性を深めたい、あるいはワークライフバランスを重視したいなど、具体的な転職理由が明確になる時期でもあります。そのため、求人媒体のスカウト機能やDMなどを活用し、ピンポイントでターゲットにアプローチすることも成果を高める有効な施策といえるでしょう。
学生(アルバイト)
アルバイト求人を探す学生にとって1月は、上旬は帰省や成人式、年末年始のイベントが重なる時期です。また、中旬から下旬にかけては学期末試験が始まるため、求職活動が鈍化するでしょう。
しかし、試験が終わると同時に2月から始まる春休みを見据えて新しいアルバイト先を探す学生が増えます。特に卒業旅行などのイベントに向けて資金を確保したい大学4年生は短期や期間限定のアルバイトを探すケースが目立ちます。企業としては、学生のスケジュールに配慮し、勤務開始日を2月以降に設定できる柔軟な条件を提示することで応募を獲得しやすくなるでしょう。
また、年末年始で大きな出費があった学生は、「手早く稼ぎたい」という動機が強くなる一方で、試験期間における調整や新しい学期が始まるまでの短い期間での勤務開始を希望するなど、勤務開始日やシフトに対する柔軟性を求める傾向が見られます。
したがって、企業は学生の学業スケジュールに配慮し、「勤務開始はテストが落ち着く2月以降で構わない」などのように柔軟性をアピールすることが大切です。
主婦(パート)
主婦層のパート求職者にとって1月は、年末年始の行事や、子供たちの冬休みが終了し、家事や育児のルーティンが落ち着きを取り戻す時期です。年末年始の出費を補填したいという短期的な動機に加え、新学期や春休み、子供の進学などを見据え、長期的な視点で家計の安定を図りたいというニーズが強まります。
ただし、一口に主婦層といっても子育て中か否か、扶養内で働くかどうか、週何日勤務できるのかなど背景や目的はさまざまです。そのため、採用活動では主婦層の多様性を理解し、シフトの柔軟性や家庭との両立が可能である旨を訴求することを意識しましょう。
「家庭との両立のしやすさ」を最優先にアピールするほか、シフト調整の例や主婦のスタッフが多く活躍している実績を伝えることも有効です。主婦のニーズを捉えた求人情報を作成することが採用成功のポイントです。
フリーター
フリーター層は、年末年始の繁忙期に短期の高時給バイトで集中的に勤務した後、1月中旬以降に稼働が落ち着き、新たな仕事探しを始める傾向があります。
この時期のフリーター層の動向で特に注目すべき点は、「正社員志向」が高まることです。年末年始の帰省や旧友との再会などを通じて、自身のキャリアや将来の安定について深く考え、正社員としての安定した雇用やキャリアアップを目指す意欲が強まるケースが増えます。
求人を出稿する際には、 福利厚生や長期的な成長の機会を明示し、将来のキャリアにつながる環境があることを伝えることが有効です。具体的には、「未経験歓迎」「充実した研修制度」「社員登用制度」など、未経験からでもキャリアを築ける旨を訴求するキーワードを用いることを意識しましょう。また、社員登用後のキャリアモデルや実際にフリーターから正社員になった事例などを示すことで応募へのハードルを下げることができます。
【属性別】企業の採用戦略
就活生
就活生に対しては、情報の「質」と「共感性」を意識しましょう。3月以降の広報解禁や6月以降の選考解禁に備え、学生が活発に情報収集を行う1月は、企業の魅力を単に羅列するのではなく、ストーリー性や透明性を意識しながら訴求することがポイントです。求人広告や採用サイトには、自社の理念やビジョン、そしてそれを体現する社員の「生の声」や「働く姿」を詳細に記載し、学生が自身の将来像を具体的にイメージできるように工夫しましょう。
また、インターンシップや早期説明会に参加できなかった学生を対象にオンラインやアーカイブ動画を用いた企業説明会、若手社員との交流会を開催するのも有効です。3月以降の新卒採用の広報解禁までに母集団のさらなる質と量の確保が可能になるでしょう。
キャリア人材
キャリア人材に向けた採用戦略では、「スピード」と「明確な価値訴求」が必須となります。
4月入社を目指す求職者は、選考期間が長引くことを避ける傾向があります。そのため、応募から内定までの選考プロセスを可能な限り短縮し、スピーディな対応を実現することが求められます。具体的には、書類選考の時間を短縮し一次面接を早期に設定する、あるいはカジュアル面談を導入し初期段階でのミスマッチを防ぐなどの施策が効果的です。
さらに、キャリア人材は現職での不満や将来への期待が応募や入社動機につながるため、求人広告には入社後に任せる具体的な職務内容や期待する成果、成果や活躍に対する評価や報酬を透明性高く記載することが必須となります。スカウトメールを活用する際は、求職者のスキルや経験に合わせたパーソナライズされたメッセージを送ることで、応募意欲を醸成できるでしょう。
学生(アルバイト)
学生アルバイトへの採用戦略では、学生のライフスタイルに寄り添う姿勢を示すことがポイントです。1月は学業や私的なイベントで多忙な学生が多いため、求人広告には「春休み限定」「短期間で高収入」「学業・試験期間のシフト調整OK」といった、学生のニーズに応えるキーワードを盛り込みましょう。
また、バレンタインなど季節イベントに合わせた募集を行う場合は、具体的な勤務期間やWワークの可否を記載することで応募につながりやすくなるでしょう。
企業の都合を押し付けるのではなく、学生の事情を理解し、彼らが望む形で働ける環境を整えていることを丁寧に伝えることが母集団形成の質と量の向上につながります。
主婦(パート)
主婦層のパート採用戦略は、家庭との両立のしやすさをアピールすることが鍵となります。「週3日・1日4時間からOK」「学校行事に合わせてシフト調整可能」など、働き方の柔軟性を強調することで安心感を与えられます。
さらに、「お子様の学校行事や急な病気によるシフト調整に理解がある職場です」「同年代の主婦スタッフが多数活躍中」など、主婦層特有の不安を払拭するアピールポイントを記載することも有効です。
また、主婦層は、ライフスタイルや志向によって「短時間勤務志向」「スキルアップ志向」「フルタイム志向」など、いくつかのタイプに分かれるため、一つの求人広告で全てをカバーしようとするのではなく、各タイプに合わせた勤務条件や職種を個別に提示するのも方法の一つです。例えば、短時間勤務を求める層には「午前中のみの業務」、スキルアップ志向の層には「社員登用ありの事務職」など、ターゲットを細分化することで、より求人の効果を高められるでしょう。
フリーター
フリーター層をターゲットとする採用戦略では、「長期的な安定」と「キャリアアップの道筋」を明確に示すことが大切です。年末年始の繁忙期を終え、新たな仕事を探し始めるフリーター層の多くは、将来の不安を解消し、生活基盤を安定させたいという希望を抱きやすくなります。
「社員登用あり」「長期勤務歓迎」などのキーワードは、将来に不安を抱える層に対して応募を促すきっかけになることがあります。また、未経験者を歓迎する求人では、入社後に受けられる研修や身につくスキル、描けるキャリアなどを具体的に示すことが、応募への動機付けとなります。
社員登用制度だけでなく、資格取得支援やスキルアップ研修など、将来への投資を惜しまない企業姿勢を示すことも、優秀なフリーターを惹きつける上で有効です。
まとめ
2026年1月の採用市場は、単なる季節的な活性化に留まらず、労働力不足と賃上げ圧力が加速する中で、求職者が「自身の市場価値」をこれまで以上にシビアに再定義する重要な転換点となります。
新卒から中途、アルバイトに至るまで、あらゆる属性の求職者が「より良い条件」や「納得感のあるキャリア」を求めて一斉に動き出すこの時期、企業に求められるのは属性ごとのニーズを捉えた情報の透明性と、競合に競り勝つための圧倒的な選考スピードです。特に2026年は、給与水準や働き方の柔軟性だけでなく、入社後のリスキリング環境や具体的な成長パスを提示できるかどうかが、優秀な人材を惹きつける決定的な差別化要因になると考えられます。
本記事で解説した各属性の行動特性を深く理解し、変化する市場に対して機敏に対応することが、2026年度の採用成功を確実なものにする一歩となるでしょう。
コラムを書いたライター紹介

日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。




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