採用力とは?採用力を高める4つの要素を解説
採用競争が激化する昨今においては、多くの企業が採用活動においてさまざまな取り組みや工夫を実施しています。しかし、期待するほど成果が得られていない企業も多いのではないでしょうか。
採用を成功させるためには、採用活動の精度を高めると共に企業の『採用力』の向上にも取り組まなければなりません。
そこで本記事は、採用力について、その定義や採用力が向上することによって得られるメリット、採用力を高めるために必要な4つの要素について解説します。
採用力の定義とは?
一般社団法人 日本採用力検定協会では、採用力の定義を次の通りに定めています。
“組織および社会に有益な採用活動を設計・実行する力”
また、採用に向き合う姿勢のもと、採用をより良くする知見と技能を身につけ、採用に対する広い視座を持って、目の前の採用業務に関する意思決定を行う力が必要だと述べています。
つまり、採用力とは、企業の成長に寄与する人材を採用する力のことであり、採用力を高めるためには、採用活動の精度向上や知見・ノウハウに基づいた運用、事業戦略に基づいた意思決定が不可欠だと考えられます。
採用力が注目される背景
採用力が注目される背景には、次の2つの要因があると考えられます。
- 人手不足が深刻化しているから
- 戦略人事が注目されつつあるから
厚生労働省が公表している『経済社会と働き方の変化等について』では、女性・高齢者の労働参加が進んだこともあり、労働力人口・就業者数は増加傾向がみられます。一方で、人手不足の状況は不足感が高まり、令和4(2022)年にはコロナ禍以降、最も人手不足感が高まっていることがわかります。
熾烈化する採用競争の中で求める人材を獲得するためには、人材を採用する力である『採用力』の向上が必須になることから、多くの企業で注目されるようになったと推察されます。
また、採用の在り方が単に人員を補充する採用から、企業の事業戦略や経営戦略に合わせて人材を採用するようになった点も採用力が注目されるようになった要因と考えられます。
採用力向上で得られる3つのメリット
本章では、採用力が向上することによって得られる、次の3つのメリットについて解説します。
求める人材を採用できる
採用力が向上することで、企業の期待に合った人材を採用できる可能性が大幅に高まります。
求める人材を的確に採用できれば、採用した人材が組織の成長に貢献をもたらしてくれるでしょう。また、適切な人材が定着することで、採用コストや育成コストを抑えられるため、企業の生産性向上にもつながります。
組織が安定する
求める人材を適切に採用できるようになると、人材が長期的に定着するため、組織のパフォーマンスが向上し、安定した成長基盤を築くことができます。
その結果、組織全体が1つの目標に向かう体制が整い、社員も同じビジョンや成長を見据えてモチベーション高く業務に取り組むようになるでしょう。
離職率が低下する
採用力の向上に向けて理念の浸透や労働環境の改善に取り組めば、企業のビジョンに共感する人材からの応募が増えるため、考え方の不一致による離職を減らすことができるでしょう。また、働きやすい環境を提供することで、社員のエンゲージメントが向上し、定着率が高まることも期待できます。
離職率が低下すれば、常に採用を繰り返す必要がなくなり、採用コストや新人教育の負担が軽減されます。また、経験豊富な社員が長く在籍することで、社内のノウハウやスキルが蓄積されるため、組織力の向上にもつながるでしょう。
採用力を高める4つの要素
採用力を高めるためには、次の4つの要素がバランスよく互いに高め合う状態を創り出すことが大切です。
- 企業力
- 理念・社風
- 労働環境
- 採用活動
それぞれの要素がしっかりと連携して機能することで、優秀な人材を引きつけ、持続的な事業成長を支える採用力を持つ企業に成長できるでしょう。
本章では、採用力を高めるにあたって必要な4つの要素が担う役割や各要素を高める方法を解説します。
企業力
企業力とは、企業のブランド力や資本、従業員数、競争力など企業の総合的な力を示します。もし、企業力が乏しい場合、転職先として魅力を感じられないことから、求職者に選ばれなくなる可能性があります。
求職者から選ばれる企業になるためにも、企業力を向上させる取り組みは不可欠と言えるでしょう。
企業力を高める具体的な取り組み例としては、次のような施策が有効だと考えられます。
- 市場での競争力を強化し、事業の成長性を高める
- 社内外に対して、企業のビジョンや成長戦略を明確に発信する
- CSR(企業の社会的責任)活動やSDGsへの取り組みを通じて、社会的に評価される企業像を構築する
企業力は簡単に改善できるものではありません。中長期的な取り組みや改善行動が必要になるでしょう。ただし、今から改善やより良い状態に高めるための施策に取り組むことで、採用力の強化につながることも確かです。
「社内外に対して、企業のビジョンや成長戦略を明確に発信する」「社会的に評価される企業像を構築する」などの取り組みは、比較的着手しやすい項目だと考えられます。始められる取り組みから少しずつ着手していきましょう。
理念・社風
理念・社風は、企業の考えやビジョン、また理念が根付いた環境を指します。求職者の多くは、自分の考えに共感できる理念を掲げる企業を選ぶ傾向があります。
そのため、自社が掲げる理念を求職者に正しく理解してもらえる取り組みが必要です。
例えば、社内の様子がわかる情報を発信する、求人情報には社風が伝わる写真を掲載するなどの取り組みを行うことで、求職者に自社の理念や社風が伝わりやすくなるでしょう。
理念・社風を浸透させる具体的な取り組み例としては、次のような施策が有効だと考えられます。
- 企業のミッションやビジョン、価値観を明確にし、社内外に発信する
- 社員の声を取り入れ、働きやすく、エンゲージメントを高める組織文化を形成する
- 採用プロセスやオンボーディングにおいて、求職者や新入社員に理念や文化を体感させる機会を作る
自社の理念や風土を再確認し、社外に発信することで、求職者は情報を得られやすくなります。また、社員も巻き込みながら風土や文化を醸成することで、企業と社員が共に同じ方向を向き成長を目指していくことができるでしょう。
労働環境
労働環境とは、働く環境や社員に提示されている労働条件や制度を指します。
求職者にとっては、応募や内定承諾する際の判断基準になる要素であり、良好な労働環境は、企業の魅力を高め、求職者が安心して応募できる要因になるでしょう。
反対に労働環境が魅力的ではない場合、内定後の辞退や早期離職が増え、優秀な人材の定着が難しくなります。また、口コミやSNSで悪い評判が広がり、企業の採用ブランディングにも悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。
魅力的な労働環境を提供するためには、次のような施策が有効だと考えられます。
- ワーク・ライフ・バランスを尊重した柔軟な勤務形態(リモートワーク、フレックスタイムなど)を導入する
- 福利厚生や労働時間管理を改善する
- 職場の安全性やハラスメント防止策など、快適で安心できる環境の提供に努める
労働環境の改善や向上は、改善することで目に見えて採用活動に変化が表れることもあります。採用力向上に取り組みたいと考える企業は、労働環境の改善や向上から取り組んでみると良いでしょう。なお、その際、従業員の声をヒアリングしてみるのも1つの方法です。従業員からの意見を参考にすることで、従業員が求める環境へと改善できるかもしれません。
採用活動
採用活動とは、企業が人材を採用するための活動や取り組みを指します。
どんなに他の要素が採用競合よりも優れていたとしても採用活動の精度が低ければ、求める人材の採用は実現できません。
採用力の中でも要となる要素になるため、採用活動の精度が低いと感じている企業は改善に努めましょう。
採用活動の精度を向上させるための具体的な取り組み例としては、次のような施策が有効だと考えられます。
- ツールやシステムなどを導入し生産性向上に努める
- 採用代行(RPO)など外部サービスを導入する
- これまでの採用活動データを分析し、課題やボトルネックになっている部分の改善を図る
採用活動の精度を向上させるためには、知見やノウハウの蓄積はもちろん、時代に合った取り組みや状況に応じた素早い改善行動も必須です。
複数の要因が絡まり合って採用活動の精度の低下を招いている可能性もあるため、各選考プロセスを分析し、ボトルネックとなっているプロセスを1つずつ改善していくことが大切です。
まとめ
人手不足の加速や戦略人事への注目の高まりに伴い、採用力は多くの企業で意識されるようになりました。採用競争が激化する昨今においては、採用力の強化に取り組む企業が増えてくることが予想されます。また、採用力の強化を疎かにした場合、求める人材を採用できず、事業活動にも甚大な影響を及ぼす懸念があります。
採用力は、取り組み次第でどのような企業でも高められる力です。ぜひ、採用力を高め、求める人材の採用を成功させましょう。
コラムを書いたライター紹介
日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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