【企業向け】辞退理由から考える面接辞退対策
面接辞退は、採用活動の中でも多くの企業が頭を抱える課題ではないでしょうか。多くの労力をかけて進めている採用活動で面接辞退が続くと、その影響は採用チームだけでなく、事業全体に波及することもあります。
本記事では、面接辞退が企業に与える影響や選考辞退が増加している原因、具体的な対策について解説します。
面接辞退が企業に与える影響
面接辞退が企業に与える影響には、次のようなものがあると考えられます。
採用コストの肥大化
面接辞退が発生すると、求人情報の掲載、応募者の管理、面接の調整などこれまでに費やした時間とコストが無駄になる可能性があります。また、新たに応募者を募るために1から母集団を形成しなければならない場合、同じ工程を繰り返す必要があるため、採用コストが加算されます。結果として、採用一人あたりのコストが大きく膨らむこともあるでしょう。
採用担当者の労働コストの増加
面接辞退が発生してしまうと、面接の日程調整や辞退者のフォロー、新たな候補者の選定など、再び同じ工程を繰り返さなくてはならなくなってしまうこともあるでしょう。
このように、面接辞退が発生すると、採用担当者の労働コストは必然的に増加してしまいます。状況によっては、負担に感じて生産性が低下したり、ほかの重要な施策に着手できなくなったりすることもあります。
事業活動の停滞
面接辞退によって人材を求める時期に採用できない状態が続くと、事業活動にも影響が及ぶと考えられます。特に、事業拡大や新規プロジェクトの推進が予定されている場合、人材不足によってこれらの計画が停滞するリスクがあり、結果として企業の成長を妨げてしまう場合もあります。
また、既存の社員に負担がかかるケースもあり、長時間労働やストレスの増加が発生し、結果として社員のモチベーション低下や離職につながることも懸念されます。
選考辞退が増えている原因
選考辞退が増えている原因として、下記2つの要因があると考えられます。
- 売り手市場
- インターネットやSNSの普及
現在、日本の採用市場は、多くの業界で売り手市場が続いています。
厚生労働省が令和6年10月に発表した『一般職業紹介状況(令和6年8月分)』によると、令和6年8月の有効求人倍率は1.23倍であり、求職者優位の市場であることが分かります。
売り手市場のため、複数の企業から内定を獲得しやすい状況下であることから、面接辞退が増えていると考えられます。
さらに、インターネットやSNSの普及により、求職者はこれまでよりも多くの情報を手に入れられるようになりました。中には、実際に企業で働いていた社員の口コミや面接を受けた転職活動者からの評判をチェックできるサイトもあり、口コミや評判が原因となり面接辞退するケースも散見されるようになりました。
辞退理由別|面接辞退対策
エン・ジャパン株式会社が実施した『「選考辞退」の実態調査』によると、面接辞退をした理由は、「他社の選考が通過した(37%)」「ネットで良くない口コミを見た(27%)」「企業の応対が悪かった(20%)」の3つが上位に並ぶ結果となりました。
本章では、同調査で上位に挙がった辞退理由ごとに、面接辞退対策を紹介します。
他社の選考が通過した
選考期間が長くなると、求職者は他社の選考結果を優先するケースがあります。
同調査では、次のようなエピソードの回答があり、求職者は選考のスピードを重視していることが分かります。
―“面接後、1週間で結果連絡をすると言われていたが3週間後に通過連絡が来た。すでに他社から内定をもらっていたため辞退した。(20代女性)”
―“書類選考に通過したが、面接を2週間以上先の日程を提示された。その間に他社の選考が進み辞退となった。(30代女性)”
他社の選考が通過したことによる面接辞退が多い場合は、次のような対策の実施を検討してみましょう。
選考時間を短くする
面接辞退を防ぐためには、次回の面接日時を直近に設定する、選考結果を出すまでの期間を短縮するなどして選考期間そのものを短縮することを試みましょう。
選考回数自体を減らす
内定出しまでの期間を短縮するために、面接回数を減らすことも有効です。
もし、面接回数が多いと感じる場合は、一度面接の回数を見直してみましょう。見極めの精度が低下する懸念がある場合は、オンラインを活用して一度に複数の面接官が参加できる機会を作るのも良いでしょう。
ネットで良くない口コミを見た
インターネットやSNSの普及に伴い、求職者の多くがインターネットやSNSを介して企業情報を集めるようになりました。その時に応募先企業のネガティブな口コミや評判を目にしたことにより、面接を辞退する求職者もいます。
同調査では、次のようなエピソードの回答があります。
―“内定をいただいたが、ネットでその企業の口コミを見て、妻に引き留められたため辞退を決めた。(20代男性)”
―“転職サイトの口コミが悪かった。面接で訪問したら、口コミに書かれていた通りの空気の悪さだった。(30代女性)”
インターネットやSNSに投稿されている情報は誰でも閲覧できることから、応募者のみならず、ネガティブな口コミや評判を見た応募者の家族や友人から辞退を勧められるケースもあるようです。
ネットで良くない口コミを見たことによる面接辞退が多い場合は、次のような対策の実施を検討してみましょう。
ブランディングの強化に努める
口コミや評判を改善するためには、社員の声をポジティブに伝えるコンテンツを発信する、企業文化や社内の働き方について透明性を保ちながら紹介するなどして、インターネット上のネガティブな印象の払拭に努めましょう。また、ネガティブな口コミに対して、改善点があれば積極的に対応し、現状の改善や信頼回復に取り組むことも大切です。
既存社員のエンゲージメント向上に努める
インターネットやSNS上に投稿されている口コミや評判には、在籍中の社員や退職社員による投稿もあります。
既存社員のエンゲージメントが低い場合、在籍社員や退職した社員からネガティブな口コミや評判を投稿される可能性があります。一方で、従業員満足度が高まれば、好意的な意見が増えたり、ネガティブな口コミ投稿が減ったりすることが期待できます。
既存従業員の声を反映し、働きやすい環境を構築することも面接辞退に対する重要な対策の1つと言えるでしょう。
企業の対応が悪かった
面接官の対応は、求職者が企業に抱くイメージを大きく左右します。そのため、面接官の態度や企業の雰囲気が求職者に悪い印象を与えると、面接辞退につながることがあります。さらに、面接官に対する不満が口コミサイトやSNSなどで拡散される恐れもあり、企業全体のイメージ低下を招く恐れもあります。
反対に面接官の対応に好感を持てた場合、求職者の入社意欲が高まることもあります。
同調査では、次のようなエピソードの回答があります。
―“働いている人の表情が暗く、面接も面倒くさそうな口調で応対され、人を大事にしない会社だと感じた。たばこ臭かったことも嫌だった。(30代男性)”
―“面接にて血液型や家庭環境、宗教などの相応しくない質問が多かった。さらに「ほかに最有力候補がいたが、その方が辞退したため仕方なく面接している」と言われた。(30代女性)”
企業の応対が悪かったことによる面接辞退が多い場合は、次のような対策によって現状の改善を試みましょう。
面接官トレーニングを実施する
面接官に対して求職者がネガティブな印象を抱く場合、面接官の態度や考え方の改善に努める必要があると考えられます。そのため、面接官に問題がある場合は、面接官としての心構えやマナーを学べるトレーニングの実施を検討しましょう。具体的には、専門家による講習を受講する、ロールプレイングなどのトレーニングが挙げられます。
面接官の中には、いまだに「企業が人材を選ぶ側」と考えている人もいます。面接官トレーニングを実施することで、面接官に求められる言動や姿勢、考え方を身に付けることができるでしょう。面接官の面接に対する考え方や取り組み方が変われば、面接時の印象も改善され、求職者に対して良い印象を残せるようになります。
面接後のフォローを強化する
面接が終わった後にフォローのメールや電話を実施することで、丁寧に対応してくれる企業という印象を与えられるでしょう。さらに、入社に関する不安を払拭できたり、入社意欲を高められたりすることもあります。
企業に対しての信頼感が高まることも期待できるため、手厚いフォローが提供できるよう意識的に取り組んでいきましょう。
まとめ
面接辞退が発生すると、企業の事業活動にも大きな影響を及ぼすリスクがあります。
応募者が面接辞退する理由は「他社の選考が通過した」「企業の応対が悪かった」などさまざまですが、取り組み次第で辞退を発生させる要因を取り除くことができます。面接辞退を最小限に留めるためにも、まずは面接辞退に至る要因を究明しましょう。その上で適切な改善に努めることで、面接辞退を低減できることもあります。
ぜひ、本記事を参考に面接辞退への対策を講じ、求める人材の採用を実現しましょう。
コラムを書いたライター紹介
日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
コメントはこちら