母集団形成とは?12の手法と母集団形成のポイントを解説
母集団形成は採用活動の初期に取り組む施策であり、質・量ともに十分な母集団を形成できなければ、その後の採用活動に大きな影響を及ぼす重要な活動でもあります。しかし、採用市場は、新卒、中途採用ともに人材獲得競争が激化しており、質・量ともに満足できる母集団を形成できないと悩む人事担当者様も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、母集団形成に活用できる手法を紹介するとともに、新卒採用と中途採用の母集団形成の違いや母集団形成を成功に導くポイントを解説します。
母集団形成とは
企業の採用活動における「母集団形成」とは、自社に対して興味や関心を持ち、選考を希望する求職者を集めるプロセスや活動を指します。
採用活動では、形成された母集団の中から採用する人材を絞り込んでいくため、母集団形成の成否が採用活動全体の成否に大きく影響を及ぼすと言えるでしょう。
母集団形成の手法12選
質・量ともに充足する母集団を形成するためには、自社や採用ターゲットに適した手法を用いることが大切です。また、状況に適した手法を選択するためには、手法の種類や各手法の特徴、メリット・デメリットを理解しておくことも不可欠です。
ここでは、母集団形成に有効な12種の手法について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
以下は、各手法の概要やメリット・デメリットをまとめた表です。
手法を選ぶ際の参考にしてみてください。
求人サイト
求人サイトとは、さまざまな企業の求人情報を集約し、学生や求職者に向けて情報を公開している採用に特化したサイトに自社の求人情報を掲載する手法です。
求人サイトは、多くの学生や求職者に自社の求人情報を閲覧してもらえる可能性が期待できます。また、求人情報をシステムに入力するだけで募集を開始できるため、採用活動にマンパワーをかけられない企業でも利用しやすい手法と言えるでしょう。
求人サイトの料金形態は、求人を掲載することに対して費用が発生する掲載課金型と、採用した人数に応じて費用が加算される採用課金型の大きく2種に大別されます。採用ターゲットや予算に応じて使い分けましょう。
合同説明会
合同説明会とは、複数の企業が同じ会場に集まり会社説明会を合同開催する採用イベントに出展し、応募者を募る手法です。一度に多くの学生や求職者と接点を持てるメリットがある一方で、自社の採用ターゲットに該当しない人材に対しても丁寧な対応が求められます。
合同説明会には、特定の業界や職種、学部に限定しているイベントや地方で開催されるイベントもあります。そのため、企業は採用ターゲットに合わせて適切なイベントを選択する必要があるでしょう。
費用相場は開催都市や規模、会場内でのブースの位置や広さによって異なります。相場は40万円~200万円程度と幅があるため、申し込み前には費用を確認し、高い費用対効果を期待できるのか検討しましょう。
学内説明会
学内説明会とは、企業と教育機関が連携し、学校などの教育機関内で行われる合同説明会です。参加者は、原則開催校の生徒が対象となります。
出展することで企業の認知度を広められたり、ブランディングにつなげられたりするほか、主催している学校との関係を強化できる利点もあります。また、合同説明会と比較して出展数が限られているため、学生にアプローチしやすい点もメリットと言えるでしょう。
一方で、参加できる学生が限定されているため、採用ターゲットに合わせて出展する学校を選ぶ必要があります。
人材紹介
人材紹介とは、人材紹介に登録しているデータベースの中から採用ターゲットに近い人材を紹介してもらう手法です。求人募集の背景を理解し、求職者の経験やスキルの適合性を見極めた上で最適な人材を紹介してくれるため、大きなミスマッチを防止できます。また、採用が成功した際に紹介手数料が発生する成功報酬型の料金形態を導入しているサービスが大半のため、採用できなかった場合に発生するコストを抑えられるメリットもあります。
しかし、採用ターゲットにマッチする人材がいない場合、なかなか紹介を受けられないこともあります。また、紹介手数料は、一般的に採用した人材のの20~35%程度と言われており、理論年収が高い人材を採用する場合、採用コストが高くなることもあるでしょう。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、スカウトサービスなどを活用し、企業自ら候補者に対して直接自社の魅力をアピールする手法です。
スカウトやオファーを送付する対象を事前に絞り込んだ上でアプローチするため、ミスマッチを低減できたり、特定のスキルや経験を持つ人材にピンポイントでアプローチできたりするメリットがあります。
また、他の業界に興味を持っている、自社のことを知らない、といった潜在層の求職者に対してもスカウトやオファーを通じて認知を広げられるため、求人サイトなどでは出会えなかった人材に出会える可能性も期待できるでしょう。
一方で、スカウト文の作成や送付、ターゲットの抽出など工数がかかる工程が多く、時間や労力が割かれてしまうケースもあります。また、運用にはある程度のノウハウが必要であり、ノウハウに基づき運用していない場合、期待する成果が得られないこともあるでしょう。
自社ホームページ
自社ホームページを用いる場合、自社ホームページ内に採用ページを設置し、直接応募を促す方法があります。カスタマイズ性が高く、求人サイトなどでは伝えづらい企業文化やビジョン、強みなどを伝えられる利点があります。運用次第では、採用ブランディングに寄与することもあるでしょう。また、社内で採用ページの設置やコンテンツ制作を完結できれば、コストを抑えられることもあります。
しかし、知名度が低い企業の場合、アクセス数が限られてしまい、期待するほど応募者が集まらないことがあります。また、定期的な情報の更新が必要になるため、管理コストが負担に感じられてしまうケースもあるでしょう。
インターンシップ
文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省は、インターンシップについて下記の通りの定義を示しています。
“学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと”
引用:文部科学省、厚生労働省、経済産業省『インターンシップの推進に当たっての基本的考え方』
企業は、インターンシップの開催を通じて、業界や自社の仕事の魅力を伝え、母集団形成につなげます。
採用前に学生の能力や適性を見極められる、学生に企業文化や仕事の魅力を伝えられる、早期から学生との関係性を構築できるなどのメリットがあります。しかし、インターンシップの実施には労力やコストがかかります。また、インターンシップに参加した学生が本選考に応募する確約はなく、インターンシップを実施したものの満足できる母集団を形成できずに終わることもあります。
タレントプール
タレントプールとは、将来の採用候補者となりうる人材情報をデータベース化し、データベースにプールしている人材との関係性を維持する手法です。いざ採用需要が発生した時に、プールしている人材に対してアプローチを行い、採用につなげます。
必要な時に特定の経験やスキルを持つ人材に対して迅速かつピンポイントにアプローチできる点が大きなメリットであり、求める人材を短期間で採用できる可能性が期待できます。ただし、継続的なデータベースの更新と管理が必要になるほか、プールしている人材との関係を維持するための取り組みにも労力や時間を費やさなければなりません。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員から候補者を紹介してもらい採用につなげる手法です。社内のネットワークから母集団を形成できるため、他の手法と比較して採用コストを抑えられます。また、既に社内で活躍している社員からの紹介ということもあり、候補者は自社の風土にマッチする人材である可能性が期待できます。
しかし、リファラル採用が母集団形成の中心手法になってしまうと、人材の傾向に偏りが発生するリスクがあります。また、紹介者と被紹介者との関係性に配慮が必要になることもあるでしょう。
アルムナイ
アルムナイとは、過去に在籍していた社員を再雇用する手法のことを言います。過去自社に在籍していた経験があることから、企業の理念や風土を既に理解しているため、ミスマッチが発生しにくいと考えられます。また、企業ルールや業務の進め方も理解しているため、即戦力としての活躍も期待できるでしょう。
ただし、出戻り文化が根付いてしまうと、退職へのハードルが下がり、離職率が高まる懸念があります。また、アルムナイを採用することで既存社員のモチベーション低下を招いてしまうリスクもあります。
母集団形成にアルムナイ採用を導入する際は、納得感のある採用基準と入社条件を整備しておく必要があるでしょう。
ハローワーク
ハローワークとは、厚生労働省が運営する総合的雇用サービス機関です。採用活動では、ハローワークに自社の求人情報を公開してもらうことを指します。
メリットは、無料で求人を掲載できる点や幅広い層にリーチできる点と言えるでしょう。一方で、高度なスキルを持つ人材やマネジメントなど豊富な経験を持つ人材の採用にはやや不向きな側面があります。
ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングとは、FacebookやX(旧Twitter)、LinkedInなどのSNSを採用活動に利用する手法を指します。
SNS特有の拡散力を活用すれば、認知度が低い企業でも求職者の興味・関心を惹くことができ、母集団形成に寄与することもあるでしょう。一方で、炎上や情報漏洩などのリスクがあるため、管理を徹底し、計画的に運用する必要があります。
新卒採用と中途採用の母集団形成の違い
新卒採用と中途採用では、母集団となる対象や母集団を形成する際のプロセスなどに違いがあります。そのため、それぞれの採用活動で有効な母集団を形成するためには、双方の違いを理解しておくことが不可欠です。
ここでは、新卒採用と中途採用の母集団形成の違いについて、解説します。
下記は、新卒採用と中途採用の母集団形成の違いをまとめた表です。
違いを比較する際の参考にしてみてください。
新卒採用の採用ターゲットは、学校卒業見込みの社会人経験のない学生が対象です。そのため、ポテンシャルや人柄を重視しながら母集団を形成する傾向があります。人柄をじっくり見極められるインターンシップは、多くの企業で新卒採用に用いられている手法です。
一方で、中途採用では、既に社会人経験を積んだ即戦力となる人材をターゲットにする傾向があり、特定の経験やスキルを持つ人材を中心に質を重視しながら母集団を形成していくケースが一般的です。人材紹介やダイレクトリクルーティングなどは、求めるスキルや経験を持つ人材に絞り込んだ上でアプローチできる手法のため、特定のスキルや経験が求められるポジションの採用に適していると考えられます。
また母集団を形成する期間にも違いがあり、新卒採用は、大学3年生の4月頃から翌年の選考が解禁される3月頃まで時間をかけて母集団の量を充足させていきます。一方で中途採用は、スピード感のある選考が実施されることが多いため、応募の順に選考を開始することもあります。選考の進捗次第では、応募者が少なくても目標人数を採用できる場合もあります。
母集団形成を成功に導く3つのポイント
最後に、母集団形成を成功に導く3つのポイントを解説します。
採用ターゲットを明確に定める
母集団形成を成功に導くためには、採用ターゲットを明確に定めることが必須と言えるでしょう。採用ターゲットが明確に定まっていない場合、適切な採用手法や媒体を選定できない、採用したいと思う人材とは異なる人材にアプローチしてしまう、といった事態が生じる懸念があります。
まずは、どのような人材を求めているのか明確にし、採用活動に関係するメンバー間で認識の齟齬が発生しないよう互いに擦り合わせておきましょう。
最適な採用手法・媒体を用いる
最適な採用手法や媒体を用いることも、母集団形成を成功させる上では欠かせません。採用ターゲットが活用すると思われる採用手法を用いたり、採用ターゲットと接触できる可能性の高い媒体を利用したりすることで、求めるスキルや経験人材と出会える可能性が高まります。また適切な採用手法や媒体を用いることで、応募数の増加も期待できるでしょう。
母集団形成の状況に応じて複数の採用手法や媒体を併用するのも1つの方法です。より自社にマッチした採用手法や媒体が明確になったり、1つの手法や媒体で成果が得られなかったとしても他の手法や媒体でカバーできたりすることもあるでしょう。
定期的な分析と見直し
母集団形成は、定期的な分析と見直しを行うことで、精度を向上させることができます。分析と見直しを行う際は、下記項目のデータに注目してみましょう。
- 採用ターゲットの条件
- 求人原稿の内容
- 採用手法・媒体ごとの応募率
- 応募後の推移など
これらのデータを分析することで次回の母集団形成の際に改善すべき課題が明確になるでしょう。浮き彫りになった課題を改善することで、効率的に母集団を形成できるようになるだけではなく、より質・量ともに充足する母集団を形成できるようになるでしょう。
まとめ
質・量ともに充足する母集団を形成するためには、自社や採用ターゲットに合った手法や媒体を用いること、都度取り組み内容を分析し改善に取り組むことが大切です。
そのためには、母集団形成に用いられる手法の種類や各手法の特徴、メリット・デメリットを把握しておく必要があるでしょう。各手法について理解を深めることで、より現状やニーズにマッチした手法を選択できるようになります。
ぜひ本記事を参考に、母集団形成の精度を高め、採用活動を成功に導きましょう。
コラムを書いたライター紹介
日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
コメントはこちら