【人事向け】スクラム採用とは?注目される背景と運用のポイントも解説


スクラム採用は、従来の採用手法とは異なり、現場社員が採用活動の主権を持つ独特な採用手法です。近年ベンチャー企業を中心に注目を集めていますが、「現場社員に任せても大丈夫なのか」「どのように導入・運用するのか」と、不安や疑問を感じる採用担当者も少なくないかと思います。

そこで今回は、スクラム採用の特徴や注目が集まる背景、導入のメリットを解説します。

スクラム採用とは?

スクラム採用とは、株式会社HERPが提唱した新しい採用手法であり、同社のコーポレートサイトでは、スクラム採用について下記定義が記述されています。

“採用活動を経営陣と人事に閉じたものではなく、現場社員を巻き込んだ形で行うことで、最大の成果を創出していく採用手法”

画像引用:株式会社HERP

従来の採用手法とは異なり、現場社員が採用活動の前線に立つ点、採用活動の主体者を経営陣や採用管理部門に限定しない点が大きな特徴です。

スクラム採用が注目される背景

スクラム採用が注目される背景には、次の2つの要因があると考えられます。

採用担当者の負担が増大しているから

採用競争が激化する採用市場においては、新卒採用も中途採用も求人広告を公開するだけで人材を採用できる時代は終焉を迎えつつあります。優秀な人材や自社の求める人材を採用するためには、様々な採用手法を活用する他、企業自らが求職者や候補者に対して自社の魅力を積極的にアプローチする能動的な採用活動が求められつつあります。

採用手法が多様化したり、工数のかかるマス向けの採用手法が注目を集めたりする昨今においては、採用担当者の負担は増大傾向にあります。

株式会社マイナビが実施した『マイナビ2024年卒企業新卒内定状況調査』によると、新卒採用においてマンパワー不足を感じている採用担当者の割合は、7割に上ることが分かりました。

引用:株式会社マイナビ『マイナビ2024年卒企業新卒内定状況調査』

またパーソル総合研究所が公表している『人事部大研究』の調査結果でも、約6割の企業が人事部の人員不足を感じていることが分かりました。

出典:株式会社パーソル総合研究所『人事部大研究』

スクラム採用では、現場社員がダイレクトスカウトの送付や求人票の作成、面接・面談、応募者のフォローを担うことで、採用担当者の負担を軽減できる利点があります。採用担当者は業務負担が軽減された分、採用戦略の基盤となるコア業務に注力できるようになるため、企業としても採用活動の質の向上が期待できます。
また、現場社員が採用活動に参入することで、応募者と現場社員とのタッチポイントが増え、より効率的かつ効果的にアプローチできるようにもなるでしょう。

このように採用担当者の負担を軽減し、より効果的・効率的な採用活動へと改善を図れることに対する期待から、スクラム採用への注目が集まりつつあると考えられます。

専門職・技術職の細分化が進んでいるから

テクノロジー技術の進化の進展により、専門職・技術職の細分化が進み、採用担当者だけでは技術やスキルの見極めが難しく、採用ミスマッチが起きてしまうこともスクラム採用が注目を集めるようになった要因と考えられます。

スクラム採用を導入することで、業務やスキルについて理解の深い現場社員が採用活動に関わるようになれば、現場のニーズを汲んだ求人票の作成や面接での的確な採否判断ができるようになるでしょう。
また、応募者に対してもリアルな現場情報を伝えられるため、応募者も職場や業務内容をしっかり理解・把握した上で、次の選考を希望したり、内定を承諾できたりするようになります。その結果、ミスマッチによる早期離職を低減できるようにもなるでしょう。

スクラム採用における採用担当者と現場社員の役割

スクラム採用では、採用担当者がプロジェクトマネージャー的な役割を担い、現場社員が実務を担うケースが一般的です。
ここでは、各選考プロセスにおける、採用担当者と現場社員の役割例を紹介します。

人材要件・採用計画査定

人材要件・採用計画査定のフェーズにおいては、採用担当者は採用活動全体の方向性を決定したり、現場社員の計画や要件定義、採用基準設定のサポートを行ったりします。

一方、現場社員は、現場が求める採用ターゲットを言語化し、採用要件を明確にしたり、採用ターゲットを採用するための評価基準を作成したりします。

母集団形成

採用担当者は、採用ターゲットにマッチする採用手法や媒体を選定し、現場社員が運用できるようオペレーションを整備したり、初期設定したりします。また運用中は、各種数値を管理し、状況に応じて現場社員と連携を図りながら改善に努めます。

現場社員はスカウト配信や採用イベントの企画・運営など、主に求職者と接する機会の多い業務を担います。

選考

選考の段階では、採用担当者は、面接官への研修や応募者との日程調整を行います。また現場社員から提案された採用基準を最終調整し、決定します。

現場社員は、面接官として面接に参加したり、採否を判断したりします。現場社員が自らの目で応募者をジャッジし、採否を判定するため、従来のように採用担当者が面接官として採否を判断するよりもミスマッチが低減するでしょう。

内定・クロージング

内定を出した後はクロージングに向けて現場社員がカジュアル面談を担当したり、内定承諾に向けてフォローを実施したりします。この際、採用担当者は、現場社員のサポートに回るケースが一般的です。内定承諾を得た後は、採用担当者に主権を切り替え、採用担当者が内定者と入社手続きに関するやり取りを行います。

スクラム採用を導入するメリット

スクラム採用を導入することで、企業が得られるメリットを紹介します。

採用ミスマッチを防止できる

スクラム採用を導入することで、現場社員が採用活動に関与することになり、現場が求める人材に対して適切なアプローチが可能になります。現場社員が応募者と様々なシーンで接点を持てるようになるため、応募者と現場社員が直接やり取りしながら求めるスキルと保有スキルを擦り合わせられるようにもなるでしょう。結果的に、スキルミスマッチの防止にも寄与することが期待できます

採用担当者の負担を軽減できる

スクラム採用は、現場社員が採用業務の一部を担い、社員全員で人材採用に取り組む手法です。そのため、採用担当者の負担を軽減できると考えられます。

これまで採用担当者が担っていたノンコア業務を現場社員が担うことで、採用担当者はコア業務に注力できるようになり、採用活動の質も向上するでしょう。

組織に馴染むスピードが速くなる

選考段階から現場社員と多くの接点機会が生まれるスクラム採用では、応募者は配属が予定されている部署の現場社員と入社前から多くのコミュニケーションを取る機会を得られます。

入社前から現場社員とコミュニケーションを取れたり業務に対する理解を深められたりするため、入社後は比較的早く組織に馴染めるでしょう。結果的に、短期間で成果を創出できることも期待できます。

まとめ

スクラム採用は、多くの企業が抱える採用課題を解決に導く可能性を秘めた新しい形の採用手法です。現場社員を巻き込むことで、採用活動の大切さが採用部署以外の社員にも伝わったり、社員一丸となって採用活動に取り組む風土が醸成されたりもするでしょう。

しかし、いきなり現場社員を採用活動に巻き込むことは難しいかもしれません。そのため、まずは スクラム採用導入に向けた環境作りから始めていきましょう。

 

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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