2024年新卒採用に向けて人事が知っておくべき『Z世代の考え方』と『2024年新卒採用市場の動向予想』


7月に入り2023年新卒採用が落ち着き、2024新卒採用に向けて動き出し始めている企業も少なくありません。22・23年新卒採用はコロナ禍ということもあり、企業・学生ともに例年とは大きく違う動向がみられました。

そのため人事・採用担当者の中には、2024年新卒採用の市場・学生動向が読めないという方も多いのではないでしょうか。
またコロナ禍でオンライン授業を中心とした学生生活を送っているZ世代とのコミュニケーションに苦戦している人事・採用担当もいるでしょう。

本記事では、23採用の市場動向を振り返るとともに、24採用に向けた市場予想とZ世代の考え方・価値観についてお伝えします。
新卒採用の成功には市場動向の把握と、採用対象となるZ世代学生の価値観理解が不可欠です。

「Z世代の価値観と選社軸を知りたい」
「2024年新卒採用の市場動向予想を知りたい」
「2024年新卒採用における有効な採用手法を知りたい」

このようなお悩みを抱える人事・採用担当者にとって、本記事が2024年新卒採用戦略の参考となれば幸いです。

2023年新卒採用市場動向の振り返り

2023年新卒採用では、下記3つの傾向が見られました。

  • 採用の早期化
  • 企業の採用意欲の回復
  • 選考のハイブリッド化

それぞれ順番に解説していきます。

採用の早期化

例年のように耳にする「採用の早期化」ですが、ディスコ社が発表したデータによると、23年度卒業予定の学生内定率は4月1日で46.5%。
前年同月と比較し8.3ptも上回り、17年以降6年連続で過去最高になりました。
また前月(3月1日)の28.1%からわずか1カ月間で17.9ptの増加がみられ、採用広報解禁後に就職戦線が一気に加速した様子が見受けられます。

企業の採用意欲の回復

2023年新卒採用の採用予定人数は前年並みと答えた企業が半数を占めたものの、採用人数を前年より増やすと回答した企業が文系・理系ともに5.6pt増加しました。
そしてインターンシップを実施した企業の割合は、82%(上場企業)と、多くの企業がインターンシップを実施。2022年新卒採用と比較すると4.6ptの増加がみられました。

また株式会社マイナビの2023年新卒採用プレサイト登録社数は、2021年新卒採用と比較すると114%と登録社数が伸びました。
採用人数の増加、インターンシップ実施企業の割合、ナビのプレサイト登録社数増加などの数値から、企業の採用意欲がコロナ禍前の水準まで回復した様子が伺えます。

選考のハイブリッド化

22・23採用を経て大きく変化した点は選考のハイブリッド化。
コロナ禍においてオンライン化が進みインターンシップ・説明会のみならず、オンラインで選考を実施する企業が増えました。
一方で最終選考や役員面接などは対面で実施するなど、フローに応じてオンラインと対面を使い分ける企業も多くみられました。

参考:株式会社ディスコ(4月1日時点の就職活動調査)
参考:株式会社マイナビ(2023年卒企業新卒採用予定調査)

23年卒学生就活意向の振り返り

また学生意向については、オンライン就職活動を経験した世代ならではの意見が多数見受けられました。

  • オンライン説明会の有無がエントリー数に大きく影響
  • リアルな口コミ・情報を重視した就職活動
  • 丁寧な情報提供を求める学生の増加

それぞれ順番に解説していきます。

オンライン説明会の有無がエントリー数に大きく影響

23採用では、オンライン説明会を設けているか否かによってエントリー数が大幅に変動。
オンライン説明会を設けず、対面のみで説明会を実施した企業は、軒並み前年よりエントリー数が減少したという結果になっています。
「オンライン説明会だけにしか参加しない」という学生も一定の割合でおり、学生にとってオンラインを活用した就職活動は当たり前となり、不可欠にもなりつつあるようです。

リアルな口コミ・情報を重視した就職活動

膨大な情報に囲まれ生活するZ世代にとって、ネット上の情報は“参考にするものの信用しない”という傾向があります。
特に就職活動においては「自分で確かめたい」という声が高まっています。
その一例として、在籍社員の紹介で選考を受けられるリファラル採用で内定を決める学生や、企業アカウントのSNS・動画配信を中心にリアルな情報を求める動きがみられました。

丁寧な情報提供を求める学生の増加

オンライン化が進み、遠方でもセミナー・選考を受けられるようになったZ世代。
そのためインターンシップの参加社数が増え選択肢が大幅に広がりました。
一方で直接企業の人事や担当者と話す機会を持ちにくい状況だからこそ、丁寧な情報提供を求める声も顕著に見受けられました。

また2023年新卒採用では、企業の採用意欲回復に反して学生1人当たりのインターンシップ応募者数・参加者数は前年と比較し微減。
依然として参加者は全体の83.6%、1人当たり応募者数は7社と高い数字であるものの頭打ちの可能性は否めません。

参考:株式会社マイナビ(2023年卒 大学生 広報活動開始前の活動調査)

2024年新卒採用市場の動向予想

2024年新卒採用では企業の採用意欲回復に対し、学生の活動量の頭打ちにより、母集団形成に苦戦する企業が増えると予想されます。

またオンライン定着に伴い、対面と比較し気軽にインターンシップの開催ができるようになったため、早期に採用の動き出しを図るため夏インターンシップに注力、もしくは初の夏インターンシップ実施に踏み出す企業も増えると予想できます。

参考:株式会社ディスコ(2023 年卒・新卒採用に関する企業調査-採用方針調査)

Z世代の就職活動の考え方・価値観

2024年新卒採用に向けては、Z世代の就職活動の考え方・価値観を把握しておくことも大切です。

Z世代とは物心ついた時からインターネットがあたりまえに存在していた世代。
SNSの発信を参考にする口コミ文化やネットショッピング、動画配信サービスなど、生活のあらゆるシーンでデジタル化が浸透している世代です。

株式会社マイナビが実施した『2023年卒大学生活動実態調査』によると、そんなZ世代は企業選択において重視する項目を問う質問に対し、下記回答が上位に上がりました。

  • 安定性がある:66.8%
  • 社風や働く社員が良い・良さそう:65.3%
  • 福利厚生が充実している:59.6%
  • 待遇面(給与、休日休暇制度含む)が良い:55.0%

上記から企業選択において「安全」「安心」「安定」を重視していることが伺えます。
また常に膨大な情報の中で育ったZ世代は、口コミやネット情報を鵜呑みにすることはありません。就職活動においても「自分で確かめたい」という思いは強く、リアルな情報を求めている世代でもあります。

参考:株式会社マイナビ(2023年卒大学生活動実態調査 (3月1日))

Z世代採用に向けて2024年新卒採用で意識しておきべきポイントと工夫

Z世代採用に向けて2024年新卒採用で意識しておくべきポイントは『リアルな情報を求める学生に対し、最新情報や入社後をイメージできる情報を提供する場を作る』ことです。

様々なデジタルツールを活用しイベント情報を拡散する

Z世代はデジタルリテラシーが高く、様々なデジタルツールを駆使し、情報を収集します。
採用情報もZ世代のアンテナに引っ掛かるようなツールを用い、広く情報を拡散する工夫が必要です。
YouTubeでの動画配信はもちろん、Twitter・Facebook・Instagramなど企業情報の多角的発信の活性化が求められます。

定期的なコミュニケーションを図る

SNSなど常に何らかの方法で友人・知人との繋がりを持つZ世代は良くも悪くも繋がりを大切にします。
そのため繋がりから遮断された状態に置かれると、疑念や不安を抱いてしまう傾向があります。
既存母集団や選考に進んだ応募者に対しての定期的な情報発信やコンタクトはもちろん、次の連絡・アクションを学生に伝え、接触期間を空けないように工夫しましょう。

選考後期から内々定者に対して常にコンタクトが図れる窓口を作る

研修の実施や情報発信など企業からのアクションだけではなく、選考中の学生や内定者からの発信・相談を受け入れる窓口やコミュニティを形成しておくことも有効です。
学生管理サイトや先輩社員との繋がりなど、学生から常に連絡できる環境を設けることで突然の内定辞退を未然に防ぐことができます。
さらに言えば、インターンシップや説明会参加から入社に至るまで、常に企業の人間と学生が何らかの方法で双方発信のコンタクトを図れるよう設計しておけるとベストです。

Z世代採用に向けて2024年新卒採用で取り入れるべき5つの広報・採用手法

Z世代の採用は、従来の採用ナビ媒体への掲載やインターンシップの実施だけでは、中小企業・ベンチャー企業のみならず大手企業・老舗企業も成功に至ることは難しいでしょう。
従来の方法に加えてZ世代の考え方・意向に沿った手法の併用をおすすめします。

最後にZ世代採用に向けて2024年新卒採用で取り入れるべき広報・採用手法を5つご紹介します。

広報

広報には学生の普段の生活に定着したツールの活用を視野に入れてみましょう。

SNSツールの活用

FacebookやTwitter、InstagramなどSNSツールを活用することで常に最新の採用情報発信が可能になります。
SNSに慣れ親しんだZ世代との親和性が高いのもポイントです。
社風・風土・仕事現場・社員インタビューなど入社後のイメージを描きやすい内容を発信することで、学生からの関心を集められるでしょう。

また学生はSNSツールを就活仲間との情報共有や人事担当者との繋がりを持つ場としても活用しています。SNSを用いる場合は、学生視点でコンテンツを作り上げることが肝要です。

動画コンテンツの配信

動画配信は採用に直結する手法ではありませんが、好きな時に自由に視聴できるため学生にとって企業理解・認知へのハードルが下がります。
事業戦略や理念などオンライン説明会で伝えられる情報よりも、内定者が選考に臨んだ時の心境や対策、社員インタビュー、日常の仕事の様子などオンライン説明会では伝えられない自社の魅力をベースにコンテンツを作ることがポイントです。
最近では企業主体でなく、インターンシップの一環として就活生がコンテンツを制作したり、内定者を主体とするチャンネルも多くあります。
動画配信を検討する際はオンライン説明会で伝える情報とすみ分け、より多くの情報を学生に発信するようにしましょう。

このように学生との親和性が高いツールを用い広報活動することで、学生に「時代遅れな会社」「若者理解が進んでいない会社」というネガティブイメージを抱かせない効果も得られるでしょう。

採用手法

Z世代の採用には手軽さと個々への訴求が成功への鍵といえます。

オンライン説明会

21採用を起点とし、22・23採用を経て定着したオンライン説明会。
オンライン活用によって「他エリアの学生からの応募が増えた」など応募者属性にも大きな変化をもたらしました。

認知拡大や遠方に住む優秀な学生の獲得、地域別採用などに有効性を発揮しています。
学生も説明会への参加ハードルが下がり、より多くの企業の情報を得られるメリットがあります。

オンライン説明会では、企業側からの一方的な情報提供がメインになってしまうようにも思われますが、人数を限定したりコンテンツ内容を工夫することでインタラクティブに学生とコミュニケーションを図ることも可能です。
コンテンツの内容や接触学生に応じて上手に使い分けましょう。

リファラル採用

リファラル採用とは、在籍社員からの紹介による採用手法です。
学生は社風や仕事内容など、求人情報やホームページには記載されていないリアルな情報を紹介者(応募を検討している企業に所属する社員)から得ることができます。
一方で企業としても紹介者が入社まで繋がりを維持してくれるため、選考辞退や内定辞退を限りなく最小限に留められます。
また採用コスト削減や親和性の高い学生を早期から囲い込めるメリットもあります。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングは、今Z世代から最も注目を集める採用手法の1つです。マスマーケティング的な単一・大量アプローチをZ世代は嫌う傾向があります。
1人ひとりの候補者に直接アプローチする手間のかかる採用手法ですが、学生が「この会社は自分を必要としてくれている」「自分を理解してくれている」という想いを抱けば、競合企業より認知度や条件が多少劣っていたとしても入社に繋がることもあります。

参考:株式会社マイナビ(新卒採用活動調査)

まとめ

ここまで、2024年新卒採用に向けて人事・採用担当者が知っておくべき『Z世代の考え方』と『24採用市場の動向予想』についてお伝えしました。

新しい価値観・キャリア思想を持つZ世代に対しては、他の世代との違いを正しく理解することが重要です。
その上で2024年新卒採用では、世代に合ったアプローチ方法や広報手法を取り入れ、新たな戦略で採用に臨む姿勢が必要となるでしょう。

ぜひ本記事を参考に、自社の24採用戦略を構築してみてはいかがでしょうか。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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