内定辞退を防ぐためには | 人事担当が心得ておくべき面接の在り方とポイント


あなたが人事・採用を務める会社は内定辞退を回避できていますでしょうか。キャリア・新卒共に売り手市場と言われる今、せっかく採用投資を行ったにも関わらず、内定出しの後に内定辞退の連絡を受けるケースは稀ではありません。「この人を採用できれば新しいプロジェクトを立ち上げられる!」「ぜひわが社の即戦力として活躍して欲しい!」このような希望とは裏腹に内定辞退が相次ぎ、「なぜ内定承諾に至らないのか…」そんな悩みを持つ人事担当者は少なくないでしょう。
結論として、、内定承諾、つまり「入社」に繋げるためには、選考時に行われる面接が最も重要です。採用成功に至らない企業は、面接を『選別の場』にしている可能性が非常に高いといえます。今回は、内定辞退に悩む人事担当者に向けて『内定承諾に導く面接の在り方とポイント』をお伝えします。

内定承諾・辞退の現状

まずは採用市場においてキャリア・新卒それぞれの内定承諾率データをご紹介します。

キャリア採用

大手人材・広告企業である株式会社マイナビが行った中途採用状況調査では、2019年・2020年キャリア採用の内定辞退率は下記の通りです。

2019年:1%
2020年:7%
(参考資料:マイナビ:中途採用状況調査2021年版

言い換えると、2019年の内定承諾率は77.9%、2020年の内定承諾率は84.3%と決して低い数字ではないことが分かります。

新卒採用

就職みらい研究所が行った就職プロセス調査では、新卒採用の内定辞退率は下記の通りに発表されています。

2020年卒(3月卒業時点):9%
2021年卒(3月卒業時点):5%
2022年卒(2021年9月時点):1%
(参考資料:就職みらい研究所:就職プロセス調査

上記のデータより、2019年~2021年間の新卒の平均内定承諾率は37.8%、つまり平均して約3人に1人の割合で内定承諾が見込めることが分かります。新卒の承諾割合を3人に1人から2人に1人に改善できるだけでも、新卒採用にかけるコスト・パワーを大幅に軽減できる可能性があります。もちろん、内定承諾率の向上はキャリア採用にも求められます。キャリア採用・新卒採用共に上記で紹介した内定辞退率よりも自社の辞退率が高い場合、早急に改善対策が必要といえるでしょう。

面接から内定辞退防止を意識する理由

キャリア採用・新卒採用共に内定辞退の現状を確認頂けたかと思います。続いて、内定承諾に導く面接の在り方やポイントをお伝えする前に、なぜ応募者を見極める面接の時点から内定辞退を意識しなければならないのか、その理由をお伝えします。応募者心理から考えて大きく2つあります。

不安の払拭

 1つ目は、不安の払拭です。応募者は内定をもらった後にふと冷静になり、「本当にこの会社を選んでよかったのか?」と自分の決断に不安を感じてしまいます。不安が残る状態では、応募者はなかなか内定承諾できません。内定辞退を避けるためには、応募者に対して内定出しの時には不安が一つもない状態にしておくことがベストです。

迷いの払拭

 2つ目は、応募者の迷いの払拭です。複数の企業に応募している応募者は、様々な企業の人事担当者と接することで迷いが生じます。また就職・転職について友人や家族に相談することで考えが変わることもあります。応募者にとって相談相手との関係性が人事担当者よりもずっと深い関係であれば、そちらの意見を聞き入れてしまうでしょう。迷いの払拭はいかに関係性を築けているか否かです。内定を出した後、もしくは入社後から関係性を築く気構えでは、ほんの少しの迷いで内定辞退になってしまいます。

 面接から応募者が求めるもの(給与・待遇・福利厚生・キャリアなど)をヒアリングし、期待値調整を行うことが大切です。さらに、応募者本人が自社にとってどれほどに必要とする人材なのかを繰り返し伝えることで関係性を深められます。内定出しの前に応募者に対し軸を作っておくことで、応募者に迷いが生じた時もブレずにいることができるでしょう。

 内定辞退が高い企業は、内定出しをした後もしくは内定辞退の連絡をもらったタイミングで辞退フォローを行います。しかし内定辞退を申し出るということは、応募者本人が様々な情報を整理し決断したということです。

 そこから辞退撤回に向けた自社の魅力付けや入社への不安払拭をしているようでは既に手遅れです。いかに面接の場が内定辞退を防ぐ大切なプロセスであるかをお分かり頂けたかと思います。

内定承諾に導く面接の在り方とポイント

では最後に内定承諾に導く面接の在り方とポイントを3つに絞ってご紹介します。

自社の魅力と応募者のニーズをマッチさせる

応募者が企業を選ぶ際の選択軸は、一人ひとり違います。面接でも多くの企業が「なぜわが社に応募したのか」といった質問をするかと思います。

 例えば「前職は比較的大手だったので新しいことにチャレンジする機会が少なかった。御社の自由な風土の中で成長したい。」という回答を得られた場合、その回答を紐解き応募者が何を求めているか検証しましょう。先ほどの回答から、応募者が求めている可能性がある項目は以下の通りです。

・裁量権を得られる
・最先端の技術を学ぶチャンス
・自分の得意領域である
・プライベートな時間の確保
・上流工程からプロジェクトに関われる
・イノベーションを起こせるモノ・コトの開発
・大規模案件のメンバーもしくは管理者になる など

面接では自社の事業や理念について伝えるだけではなく、これらの優先順位を洗い出し、応募者が求めているモノ・コトと自社の魅力がマッチしている旨のアピールを同時に行います。

他社にはない自社だけの動機付けを行う

 面接では、応募者の能力や経験の見極めにウェイトが偏りがちです。もちろん面接には、自社の戦力になる人材かを見極める役割がありますが、「動機付けのための情報収集」という意識を持ち応募者の価値観や志向性をしっかりヒアリングすることが重要です。またWEBテストやエントリーシート・履歴書なども「選考のために使う」のではなく、応募者の特性や考えを把握するためにも利用すべきです。

 なぜならば、応募者の情報量は志望度を高めるための必要条件の1つだからです。

 実際に面接では、「採用/不採用を判断するだけ」ではなく、「相互理解を深めるコミュニケーション場である」という意識を持つことが大切です。どんな応募者も自分のことを理解し、認めてくれる企業に対して志望度が高まるものです。応募者にとって自社がオンリーワンとなるような動機付けができれば、他社からのアピールにも心が揺るがなくなるでしょう。

応募者が求める入社後ビジョンを明確化する

 面接の中で最も重要なのは、面接という僅かな時間の中で応募者に対してどれだけ具体的な入社後ビジョンを描かせられているかどうかです。人事担当者は応募者の自己アピールなどから応募者が入社した後のポジションや役割をある程度想像するでしょう。しかし一方で企業側は、応募者に対して入社後イメージを描かせられているでしょうか。

 誰しもイメージが湧かない企業への内定承諾は足踏みしてしまうものです。

 応募者のニーズを満たす入社後ビジョンや、先の面接で得た情報から「何に期待しているのか」「どんな成果を達成して欲しいか」を伝えることで、入社後の役割期待・すべきことが応募者の中で明確化し、内定承諾への躊躇がなくなるでしょう。

まとめ

『面接=応募者をふるいにかける』そんな面接は時代遅れです。

 落とすだけの面接は、内定辞退率が高まるだけではなく、入社後のミスマッチにも繋がりかねません。もちろん数ある応募者が自社の風土・理念に沿っている人材かを見極めることは大切です。しかし面接は相互理解を深める場であり、応募者に対してブレない軸を作ることを決して忘れてはなりません。面接担当者が意識を変えるだけで内定率が向上するのであれば、採用コストを削り新たな募集媒体に出稿したり、自社の風土に沿わない人材にまで内定を出す事態もなくなります。

 もしあなたが人事・採用担当を務める会社でも、内定辞退率が高く入社まで至らないとお悩みであれば、この機会に面接そのものの在り方やスタンスを見つめ直してみてはいかがでしょうか。本記事が内定辞退率を改善するための参考になれば光栄です。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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