社員のアイデアで実現!満足度の高いユニークな福利厚生特集


近年、企業の採用活動や人材戦略において「福利厚生」はますます重要なテーマとなりつつあります。かつて福利厚生といえば、住宅手当や家族手当、社員旅行などの定番制度が中心でした。しかし、働き方や価値観の多様化が進む昨今においては、企業が提供する福利厚生にも柔軟性や独自性が求められるようになっています。
特に人材不足が深刻化する中で、企業が優秀な人材を確保し、長期にわたり活躍してもらうには、給与や待遇だけでなく「働く環境」や「企業文化」も重要な要素となり得ます。そのため最近では、社員の声をもとに制度を設計したり、企業独自の理念を反映させたユニークな福利厚生を導入したりする企業が増えています。

本記事では、福利厚生を取り巻く企業の実態をデータから紐解き、ユニークな福利厚生が注目される理由を解説します。さらに、社員の声から生まれた福利厚生事例の紹介を通じて、組織づくりにおけるヒントをお伝えします。

調査データから見る企業の福利厚生の実態

福利厚生は企業の魅力を高める重要な要素である一方、導入や拡充にはコストが伴うため、企業規模や経営状況によって対応は大きく異なります。
本章では、福利厚生に関する企業の実態を、調査データをもとに解説します。

福利厚生の拡充に前向きな企業は約半数

株式会社帝国データバンクが実施した「福利厚生に関する企業の実態調査」では、今後、法定福利を除く福利厚生を充実させる予定があるかを調査したところ、「内容を充実させる予定」が17.4%、「金額を充実させる予定」が4.6%、「内容・金額の両方を充実させる予定」が25.6%という結果となりました。
これらを合わせると、約半数の企業(47.6%)が福利厚生の拡充に対して前向きな姿勢を示しています。

引用:株式会社帝国データバンク「福利厚生に関する企業の実態調査」

福利厚生の拡充を予定している企業からは次のような理由が多く挙げられています。

  • 求職者が福利厚生を重視する傾向が強まっている
  • 人材確保のために制度を強化する必要がある
  • 従業員の定着率向上につながる

例えば、製造業の企業からは「従業員の定着率を高めるためにも同業他社に引けを取らないレベルまで福利厚生を改善したい」という意見があります。また、食品業界では「求職者が福利厚生を重視する傾向が強く、採用活動において制度の充実が求められている」といった意見もありました。

このように、福利厚生は単なる社員サービスではなく、採用戦略や人材定着のための重要な投資として捉えられつつある様子がうかがえます。

福利厚生の拡充が進まない企業の課題

一方で、「福利厚生を充実させる予定はない」と回答した企業は、全体の30.6%となりました。
その理由として、資金面の課題を挙げる企業が多数を占めています。例えば、建設業の企業からは「福利厚生をもう少し充実させたいが、原資の確保が難しい」という意見があります。また製造業の企業では「経営側も従業員も、福利厚生より賃上げを優先したいと考えている」という意見も見られました。

さらに、企業規模による格差も存在しています。
福利厚生を充実させる予定の割合は、以下の通り、企業規模が小さいほど割合が低くなる傾向が見られます。

引用:株式会社帝国データバンク「福利厚生に関する企業の実態調査」

このように、福利厚生の充実には企業の経営状況が大きく影響します。しかし、限られた予算でも社員の満足度を高める制度を工夫する企業も増えており、必ずしも大企業だけの施策ではないことを認識しておく必要があるでしょう。

企業が今後導入を検討している福利厚生

同調査によると、今後取り入れたい福利厚生として最も多かったのは、「社員旅行の実施・補助(11.4%)」と「フレックスタイム制度(11.4%)」でした。

引用:株式会社帝国データバンク「福利厚生に関する企業の実態調査」

特に社員旅行は、コロナ禍で長く中断されていた企業が多く、「社員同士の交流の場が減っている」という課題から再び注目を集めています。ある企業では「レクリエーション活動が減り、部署間の交流が不足している」といった理由から導入を検討しています。
また、フレックスタイム制度も人気が高く、「多様な働き方のニーズに対応したい」という企業の意見が多く見られました。

他にも「人間ドック(11.3%)「育児・介護補助(11.1%)」「ノー残業デー(10.5%)」などの制度が注目を集めています。
このように単なる娯楽型の福利厚生だけでなく、健康・働き方・生活支援など多方面の制度が社員から求められ、企業としても導入を検討していることがわかります。

ユニークな福利厚生が注目される理由

近年、多くの企業が独自性の高い福利厚生制度を導入しています。その背景には、採用環境の変化や働き方の多様化などがあります。
ここでは、ユニークな福利厚生が注目される理由を解説します。

人材獲得に向けて競争力の強化を図るため

ユニークな福利厚生を導入する背景には、人材獲得における競争力の強化が目的にあります。
かつては給与や安定性といった経済的条件が企業選びの最重要項目とされていましたが、近年は「働きやすさ」「自己成長」「ライフスタイルとの相性」といった要素を重視する求職者が増加傾向にあります。
特に若い世代では、「収入が高い企業」よりも「自分らしく働ける企業」を選ぶ傾向が強まっています。リモートワーク制度、休暇制度、自己啓発支援、趣味や健康を支援する福利厚生などは、こうした価値観に応えるものとして評価されやすく応募につながることもあります。

また、働き方の多様化も影響していると考えられます。副業やリモートワークが広がる中で、社員が企業に求める価値は「給与」だけではなく、「その会社で働くこと自体の体験価値」に広がっています。
ユニークな福利厚生は、この体験価値を具体的に示す要素として機能しているといえます。

このように福利厚生を通じて「この会社でしか得られない体験がある」「自分らしく働ける」という付加価値を生み出すことは、求職者からの共感を生むきっかけとなり、志望度を高める一助となるでしょう。

社員エンゲージメントの向上を図るため

ユニークな福利厚生は採用目的だけでなく、既存社員のエンゲージメント向上という観点からも重要視されています。
給与や役職だけでは社員のモチベーションを長期的に維持することは困難です。その点、ユニークな福利厚生は、社員が会社に対してポジティブな感情を持つきっかけを作る役割を果たします。
例えば、社内コミュニケーションを促進する福利厚生や、社員同士の交流を生み出す制度は、組織内の心理的距離を縮める効果があります。結果としてチームワークが向上し、情報共有や協働が活発になることで、生産性向上に寄与することもあるでしょう。

このように、ユニークな福利厚生は採用だけでなく、組織文化の形成や社員エンゲージメントの向上といった経営課題に対する施策としても注目されています。

企業文化を体現するため

福利厚生は、企業文化や価値観を具体的な形で表現する手段にもなり得ます。
企業理念やミッションは採用サイトや会社説明会で語られることが多いものの、それだけでは求職者や社員にとって実感しにくい場合があります。その点、福利厚生は企業が大切にしている価値観を制度として落とし込み、日常の働き方の中での体験を可能にします。

例えば、「挑戦を推奨する文化」を掲げる企業であれば、資格取得支援や自己研鑽費用の補助制度を設けることで、社員の成長を後押しする姿勢を示すことができます。また、「コミュニケーションを重視する文化」を持つ企業では、社員同士の交流を促すイベント補助やランチ制度などを導入することで、組織の価値観を実際の行動として表現できます。

さらに、福利厚生が企業文化と結びついている場合、企業の理念が日常の制度として体現されることで、社員は自社の価値観をより身近に感じ、組織への共感や帰属意識を高めやすくなります。
このように、ユニークな福利厚生は単なる話題性や福利の提供を目的とするものではなく、企業文化を社内外に伝える重要な手段としても有効です。

ユニークな福利厚生の事例5選

ここからは、実際に社員満足度を高め、対外的にも大きなインパクトを与えているユニークな福利厚生事例を5つ紹介します。

GMOインターネットグループ株式会社:シナジーカフェ「GMO Yours」

GMOインターネットグループが展開する「GMO Yours」は、本社オフィス内に設けられたコミュニケーションスペースです。最大の特徴は、24時間365日、全従業員に対してランチビュッフェ、カフェドリンク、軽食、パンなどがすべて無料で提供される点にあります。金曜日の夜には「クラブ・ユアーズ」としてバー営業も行われ、アルコール類も無料で提供されます。管理栄養士が監修したメニューにより、健康面への配慮も徹底されています。

【導入の背景】

導入の背景には、「世界一のサービスを提供するためには、世界一の人財が集まる場が必要である」というグループ代表の強い信念があります。2011年の東日本大震災をきっかけに、従業員の健康と安全、そして「仲間の笑顔を増やす」ことへの投資として導入されました。

【導入後の変化】

社内アンケートでは常に満足度1位を記録する制度となり、従業員の帰属意識が大幅に向上しました。また、社員の健康増進だけでなく、部門を越えた交流が日常化し、偶発的な会話から新しいプロジェクトが生まれるなど、シナジー(相乗効果)を生む場としても機能しています。
採用活動においても「食費が実質かからない会社」として世間に大きなインパクトを与え、優秀なエンジニアやクリエイターの獲得に寄与しています。

参照:GMOインターネットグループ 公式ニュース

株式会社サイバーエージェント:macalon(マカロン)パッケージ

「macalon(マカロン)パッケージ」は、女性社員が長く安定して働ける環境を目指した8つの支援制度の総称です。具体的には、女性特有の体調不良時に月1回取得できる特別休暇「エフ休」、妊活のための通院休暇や専門家への相談、卵子凍結費用の補助、さらには子供の急な発熱時に在宅勤務へ切り替えられる「キッズ在宅」などが含まれます。名称は「ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働く」という願いから名付けられました。

【導入の背景】

IT業界は変化が激しく、かつては長時間労働になりがちな傾向がありました。同社でも女性社員比率が高まる中で、結婚や出産といったライフイベントを機に優秀な女性が離職してしまうことが課題となっていました。2014年当時、現場の女性社員の声を集約し、「制度があるだけでなく、実際に使いやすい文化」を作るためにパッケージ化し、導入に至りました。

【導入後の変化】

制度導入後、女性の育休復帰率はほぼ100%に近い水準まで向上しました。また、「エフ休」という名称にしたことで、生理休暇という言葉に抵抗があった社員も気兼ねなく申請できるようになり、取得率が劇的に改善しました。
妊活休暇の申請も年間約200件に達するなど、不妊治療と仕事の両立が当たり前の文化として定着し、女性のキャリア形成を強力にバックアップしています。

株式会社カヤック:鎌倉職住近接手当

“面白法人カヤック”が導入する「鎌倉職住近接手当」は、本社を置く鎌倉周辺(鎌倉市・逗子市・葉山町)に居住する社員に対し、家賃の一部を補助する制度です。支給額は地域によって異なりますが、鎌倉市内に居住する場合は月額39,000円が支給されます。
本制度は、単なる住宅補助ではなく、職(仕事)と住(生活)を近づけることで、地域に根ざした豊かなライフスタイルを提案することを目的としています。

【導入の背景】

「鎌倉から世界を面白くする」という理念を持つカヤックでは、社員自身が鎌倉の街を愛し、地域コミュニティの一員になることを重視しています。職住学が近接した「面白い生き方」を社員自らが実践することで、クリエイティブな発想が生まれると考え導入されました。
また、導入の背景には、長い通勤時間に縛られるのではなく、その時間を自己研鑽や地域活動、家族との時間に充ててほしいという願いもあります。

【導入後の変化】

導入後の変化としては、全社員の約8割が鎌倉周辺に住むようになりました。また、社員同士が近所に住んでいることから、休日にも自然と交流が生まれています。さらに、地元の祭りに参加したり、地域住民と交流したりする社員が増加し、会社と地域の結びつきが強まったという成果もあらわれています。現在では、地域活性化のモデルケースとしても注目されており、唯一無二のブランドイメージを確立しました。

参考:面白法人カヤック「鎌倉本社の理由」
参考:面白法人カヤック「制度・行事」

株式会社ZOZO:家族時短制度

ZOZOが導入している「家族時短制度」は、家族のサポートが必要な場合に、1日最大2時間まで勤務時間を短縮できる制度です。最大の特徴は家族の定義の広さにあります。配偶者や子供、親といった法律上の親族だけでなく、同居している友人やパートナー、さらにはペットまでもが家族として認められます。
本人が家族と認識し、家族へのサポートが必要であれば、理由を問わず利用できます。

【導入の背景】

本制度は、「仲間に幸せになってほしい」という経営理念に基づき、社員一人ひとりの多様なライフスタイルを尊重するために導入されました。従来の時短勤務は「育児」や「介護」に限定されがちであり、独身者やペット飼育者が恩恵を受けにくいという不公平感がありました。誰もが、自分にとって大切な存在のために時間を使える権利を保証することで、全社員が公平にワークライフバランスを追求できる環境を目指しています。

【導入後の変化】

導入後の変化としては、ペットの通院やパートナーとの夕食の準備、遠方の友人の見舞いなど、制度の活用範囲が大幅に広がりました。これにより、社員は「会社が自分の私生活を大切にしてくれている」という安心感を持つようになり、エンゲージメントが向上しています。
柔軟な働き方ができることで、優秀な人材の離職防止につながっているほか、多様性を尊重する企業文化が対外的にも高く評価されています。

参考:株式会社ZOZO  ZOZOWORKSTYLE「働き方・福利厚生・制度」

大和ハウス工業株式会社:親孝行支援制度

大和ハウス工業の「親孝行支援制度」は、遠方に住む親の介護や訪問を支援するための旅費補助制度です。要介護状態の親を持つ社員を対象に、帰省にかかる交通費を年4回まで、距離に応じて1回あたり1.5万円から5.5万円支給します。
さらに、介護休業を無期限で取得できる制度や、仕事と介護の両立を支援する研修など、トータルでの介護支援体制が整えられています。

【導入の背景】

本制度の誕生は、ある社員から「単身赴任者向けの帰省旅費制度を、介護のために利用できないか」という相談を受けたことがきっかけでした。当時、少子高齢化が進む中で、働き盛りの中堅・ベテラン社員が介護離職を余儀なくされるリスクが高まっていました。会社として、親孝行という個人の尊い活動を経済的に支援し、安心して働き続けられる環境を作ることが組織の安定に不可欠であると判断され、導入に至りました。

【導入後の変化】

制度を利用することで帰省の心理的・経済的ハードルが下がり、親との面会頻度が増えた社員が多く見られます。これにより、親の体調変化にいち早く気づけるようになるなど、深刻な事態の未然防止につながっています。また、介護というプライベートな課題を職場にオープンに相談できる風土が醸成され、チームで業務をフォローし合う体制が強化しました。

参照:大和ハウス工業 ニュースリリース

まとめ

かつて福利厚生は、社員サービスの一つと捉えられていましたが、現在では企業の採用戦略や組織づくりにおいて重要な役割を担っています。人材不足が深刻化する中、求職者は給与だけでなく働く環境や企業文化を重視するようになっており、福利厚生の充実は企業の競争力に直結する要素となりつつあります。

また近年は、社員の声から生まれたユニークな福利厚生も増えています。食事提供や地域密着型制度、家族支援制度などは、企業理念や価値観を体現する取り組みとして注目されています。こうした制度は社員満足度を高めるだけでなく、企業ブランドの向上や採用力強化にもつながるでしょう。

重要なのは、他社の制度を表面的にトレースするのではなく、自社の文化や社員のニーズに合わせて設計することです。ぜひ、社員が「今の会社で働き続けたい」と感じられるよう、社員の幸せを起点とした福利厚生の在り方を模索し、自社らしい唯一無二の組織文化を築いてみてはいかがでしょうか。

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