新卒採用における大学1・2年生との接点づくりの重要性


新卒採用市場では採用活動の早期化が進んでいますが、近年においては大学1・2年生などの低学年層との接点づくりに取り組む企業が増えつつあります。

大学1・2年生と接する機会を設けることで様々な恩恵を得られた企業がある一方で、見込める効果がわからず、大学1・2年生との接点づくりに消極的な企業も少なくありません。

そこで本記事では、大学1・2年生との接点づくりに取り組む企業の割合や企業が低学年の学生と接点を持つことのメリット、具体的な施策例などを解説します。

大学1・2年生との接点づくりの必要性を感じる企業の割合

株式会社ベネッセ i-キャリアが実施した「『大学1,2年生向けのキャリア形成』に関する企業担当者の意識・実態調査」にて「大学1,2 年生との接点づくり」の必要性について問う設問では、「必要性を大いに感じる(36.4%)」「必要性をやや感じる(39.7%)」の回答合計が 76.1%となり、多くの企業が低学年の学生との接点づくりに必要性を感じていることが明らかになりました。

引用:株式会社ベネッセ i-キャリア「『大学1,2年生向けのキャリア形成』に関する企業担当者の意識・実態調査」

また「エントリー率が上がった」「低学年で接点がある学生は人柄などを理解できているため、選考時の時間削減につながった」など、66.3%の企業が大学1・2年生との接点づくりに対して何らかの成果を感じていることもわかりました。

引用:株式会社ベネッセ i-キャリア「『大学1,2年生向けのキャリア形成』に関する企業担当者の意識・実態調査」

企業の採用活動の早期化の影響もあり、低学年層への施策効果を実感しやすくなっていると考えられます。大学1・2年生からの接触は、学生の企業理解を深め、入社意欲を高める一助になるだけでなく、選考プロセスの効率化にも寄与する可能性も期待できるでしょう。

大学1・2年生との接点づくりに取り組む理由

本章では、なぜ多くの企業が大学1・2年生との接点づくりに取り組むのか、その理由を解説します。

就活本番期前までに自社の認知度を高めるため

大学1・2年生に対しても積極的に接点を設け企業認知の促進に努めることで、学生の就職活動が本格化した際に就職先の候補として自社を検討してもらえる可能性を高められます

また、低学年の頃から既に企業理念や事業内容、社風などを理解した状態になるため、大学3年生や4年生の段階では魅力付けや動機形成に注力できるようにもなるでしょう。

就活本番期前までに自業界の認知度を高めるため

学生が自身のキャリアを考える際、業界への理解は不可欠です。しかし、企業の採用活動が早期化する昨今においては、学生は十分に業界理解を深められないまま、入社する企業を決めるケースも少なくありません。結果的に早期離職やミスマッチにつながり、企業にとっても学生にとっても損失につながってしまうことがあります。

そこで企業が低学年の学生との接点づくりに注力することで、学生は就職活動が本格化する前から業界理解を深め、自分にマッチするキャリアを選択できるようになります。企業としても早期離職防止やミスマッチの低減が期待できるでしょう。

自社にフィットする人材を早期に見つけるため

早期から学生と接点を持つことで、学生の個性や価値観、キャリアビジョン、自社の企業文化や求める人物像との合致度をじっくり見極められるようになります。また、学生も企業文化や働き方についてしっかりと理解を深められるため、自身の思い描くキャリアや適性にマッチする企業や仕事を選べるようになるでしょう。

大学1・2年生と接点と作る取り組み例

本章では、大学1・2年生と接点を作る取り組み例を4つ紹介します。

会社説明会

会社説明会は、自社の事業内容や企業文化、働く環境などを学生に伝える就活イベントです。大学1・2年生向けの説明会では、業界や仕事の魅力を伝えることに重点を置き、キャリア形成のヒントとなるような内容を盛り込みましょう。

例えば、若手社員のキャリアパスを紹介したり、仕事のやりがいや苦労した経験などを伝えたりすることで、学生は将来のキャリアを具体的にイメージしやすくなります。

職場見学・工場見学

職場見学や工場見学も大学1・2年生との接点機会の創出を目的に実施される施策の1つです。求人広告などでは伝わりづらいオフィス環境や社員の様子、仕事の流れなど、リアルな情報を伝えられる取り組みであり、学生の企業理解や職種理解を促します。

社員とのランチ会や座談会を組み合わせることで、より企業について理解を深められたり、企業に好印象を抱き入社意欲が高まったりする効果も期待できます。

社員との交流会

社員と交流できる機会を設けることで、学生は企業の魅力や働くことの意義などをより深く理解することができるでしょう。

大学1・2年生との交流会を開催する時は、若手社員を中心とした交流会の開催がおすすめです。年齢の近い社員が参加することで、学生は気軽に質問できるようになるでしょう。

企業内アルバイト

「『大学1,2年生向けのキャリア形成』に関する企業担当者の意識・実態調査」において、大学1・2 年生向けの有償型施策(企業内アルバイトなど)の実施について問う設問では、「実施している」「実施を予定している」と回答した企業の合計割合は43.6%となりました。

引用:株式会社ベネッセ i-キャリア「『大学1,2年生向けのキャリア形成』に関する企業担当者の意識・実態調査」

本調査結果からも、企業内アルバイトは低学年との接点づくりにおいて有効な手段の1つになると考えられます。また、学生にとって経済的なメリットがあるだけでなく、責任感を持って業務に取り組むことで、自己成長につながったり、職種への理解をより深められたりするでしょう。

施策実施の連携先

多くの企業では、大学1・2年生との接点づくりにおいて、大学や学生団体などと連携を図っています。本章では、大学1・2年生との接点づくりにあたって多くの企業が連携している機関や団体について解説します。

学生団体

大学1・2年生と接点を作るために学生団体と連携する企業もあります。学生団体が持つネットワークや情報発信力を活用することで、より多くの学生にアプローチできるでしょう。

例えば、学生団体と共同でイベントを開催したり、学生団体のイベントに企業が協賛したりするなどの取り組み例が挙げられます。

他企業

同業種の企業と連携することで、業界全体の魅力を発信できるようになります。また、複数の企業が合同でイベントを開催することで、個々の企業では実現が難しい規模のイベントを開催できるようになるため、より多くの学生にアプローチできるようになるでしょう。

業界の課題や業界独自の技術情報の発信などをテーマに合同セミナーを開催するなどの方法があります。

大学

大学1・2年生との接点作りでは、約9割(※)の企業が大学と連携しており、学生への情報提供やイベント開催などを円滑に進める上で大学との連携は不可欠になりつつあります。採用活動の早期化の動きもあり、産学連携の動きは今後も一層広まるでしょう。

大学内で企業説明会を開催するなどが代表的な提携例ですが、大学内で特別講義を実施するなども有効な施策の1つです。

(※)参考:株式会社ベネッセ i-キャリア「『大学1,2年生向けのキャリア形成』に関する企業担当者の意識・実態調査」

大学1・2年生との接点づくりで注意すべきポイント

大学1・2年生は、就職活動本番を迎える前の段階であり、キャリアに対する意識や知識には個人差があります。そのため、企業が大学1・2年生との接点づくりに取り組む際は、以下の点に注意する必要があります。

就職活動を意識させすぎない

大学低学年の段階で、過度に就職活動を意識させるような言動は、学生にプレッシャーを与え、企業に対するイメージ低下を招くリスクがあります。大学1・2年生との接点づくりにおいては、将来のキャリアを考えるきっかけを提供し、業界や仕事の魅力を伝えることに重点を置きましょう。

中長期的な視点で関係を構築する

大学1・2年生との接点づくりは、すぐに採用につながるものではないため、中長期的な視点で関係を構築していく姿勢が不可欠です。継続的な情報提供やイベントへの招待に取り組み、学生のキャリア形成をサポートしていく姿勢を示しながらじっくりと関係を築いていきましょう。

キャリア教育の観点を持つ

大学1・2年生との接点づくりにおいては、単なる早期囲い込みや広報活動に終始しないことが重要です。企業側の都合だけで早期に接触し、自社のPRばかりを行うことは、キャリア教育という観点が欠落しており、企業イメージを損ねる要因になりかねません。

学生はまだキャリアについて模索している段階であり、様々な業界や仕事について知りたいと考えています。そのため、企業は、学生のキャリア形成を支援する立場として、幅広い情報を提供し、学生が将来について考えるきっかけを与える存在になることを徹底しましょう。

まとめ

新卒採用において大学1・2年生から接点を図る取り組みは、自社認知の拡大や学生の事業理解の促進につながり、採用活動にも様々な恩恵をもたします。

また、採用活動が早期化する昨今においては、学生はキャリア観を醸成するための十分な時間を確保できず、業界や企業の理解が浅いまま就職先を選んでしまうケースが散見されています。そのような中でも大学1・2年生から企業と接する機会を持つことができれば、キャリア観をしっかり醸成できた上で就職活動に臨めるようになるでしょう。

低学年層との接点づくりは、企業の採用活動と学生の就職活動双方に有益な施策であることから、今後も大学1・2年生から接点を図ろうとする企業は増えてくると考えられます。各企業は、アプローチ対象を大学3年生や4年生に限らず、本記事を参考に、必要に応じて大学1・2年生との接点づくりにも取り組んでいきましょう。

コラムを書いたライター紹介

日向妃香

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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。

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