嫌われ役だからこそ、好かれる人事になろう。周囲に嫌われないための7つのポイント


「人事は嫌われているから、仕事が好きになれない」と思っている担当者の人もいるのではないでしょうか。人事は、勤怠管理や就業規則の遵守など「人の管理」を行い、時には周囲に対して毅然とした態度で接しなければならない立場です。

また、人事評価による査定や、人事異動の決定権なども持っています。そのため、人事に対して好意的に思っていない従業員も多く、人事は「社内の嫌われ役」というイメージがあります。

しかし、本当に嫌われてしまっては、人事としての役割を果たせません。従業員との関係に気をつければ、むしろ頼りにされる存在になれます。今回は、嫌われる立場だからこそ、好かれる人事になるための向き合い方を紹介します。

人事が嫌われる理由

そもそも、人事はなぜ嫌われるのでしょうか。人事は基本的に経営の立場に立つため、会社の利益を優先しなければなりません。一個人として従業員の気持ちは理解していても、厳しいことを言わなければならない場面が多くあります。そのため「どっちの味方なの?」と責められるケースも少なくありません。

また、人事は現場が見えていないケースも多く、制度を決めたり評価をしたりする場面では「現場を無視している」と現場から不満が生じる場合もあります。このような立場の違いから、人事と従業員の間に壁ができてしまうことがあるのです。

人事に対する印象として、次のようなものが挙げられます。

  1. 柔軟性がない
  2. 公平性に欠ける
  3. 従業員に厳しすぎる
  4. 人事評価が厳しすぎる
  5. 昇格や昇給の理由が曖昧
  6. 話しかけにくい雰囲気がある
  7. 現場の声を十分に汲み取らない
  8. 規則や手続き優先で仕事をしている
  9. 上から目線で社員の声に耳を傾けない
  10. 会社都合の決定が多く、従業員の利益を軽視する

いずれも、立場の違いから起こる不満です。

嫌われない人事になるための7つのポイント

人事は立場上、どうしても嫌われ役になってしまいます。しかし、本当に嫌われてしまっては、本来の役割である「現場と経営側をつなぐ橋渡し」として機能しません。そこで、嫌われない人事になるために、気をつけるべきポイントを7つ紹介します。

1.現場の声を無視しない

人事が嫌われる一番の原因は、現場の声を大切にしないことです。人事部門は経営陣と近い立場にあるため、現場の意見に耳を傾けずに物事を決定してしまうケースも少なくありません。

たとえば、人事が机上だけで評価制度を決めてしまうと、評価内容が現場と合っておらず「評価基準が曖昧すぎる」などの不満につながります。現場は、売上や収益を生み出す業務の最前線です。

従って、現場の士気が落ちれば、会社全体の生産性が下がってしまいます。
現場と人事は「持ちつ持たれつの関係」だと、心に留めておきましょう。

2.上から目線にならない

人事は、人事異動や評価などの権限を持つ立場にあります。そのため、仕事に慣れてくると、気づかないうちに上から目線で、見下すような態度になってしまうことがあります。「上から目線で物を言う人」という印象を持たれると、異動や人事評価に対して不信感を抱かれやすくなるのです。

周囲に対して「人事は自分たちのことをわかっていない」と写れば、調整の役割を果たせなくなる恐れがあります。上から目線にならないためには、従業員に対する感謝の気持ちが大切です。

そのため、「意見を聞かせてください」や「一緒に会社を良くしていきましょう」といった姿勢での声掛けが欠かせません。

3.おもてなし精神で接する

経営側の目線から見ると、従業員は自社で働いてくれるお客様だと言えます。お客様に満足していただくためには、ホスピタリティ精神が欠かせません。そのため、従業員の要望や相談に親身になって耳を傾けることや、個性や人格を尊重することが大切です。

日頃から、丁寧な対応を心がけておくことで「困ったらあの人に頼ろう」と思ってもらえます。おもてなし精神で信頼関係を構築しておけば、厳しいことを言っても不満を抱かれにくくなるでしょう。

4.自己研鑽を怠らない

人事は、評価制度を構築したり教育をしたりなど、専門知識やスキルが求められる仕事です。しかし、知識レベルや能力が低いと、周囲の納得が得られにくくなります。たとえば、人事評価では「この程度の人から評価されているのか」と思う人もいるでしょう。

高い知識とスキルを身に付けていれば、トラブルがあった際も法的なアドバイスを行うなどの対処ができます。専門性の高さが認められれば一目置かれる存在となり、周囲の理解と信頼が得られやすくなるでしょう。

また、法改正や新制度の導入など、人事を取り巻く環境は頻繁に変わるため、常に学び続ける姿勢が大切です。さらに、専門分野以外の情報も積極的に収集することで「仕事ができる人」という信頼感につながります。

5.自分より上の立場の人との人間関係を築く

人事業務を円滑に進めるためには、経営陣の方針を正しく理解する必要があります。そのためには、経営トップや役員など、上の立場の人たちと良好な人間関係を築くことが重要です。

経営側との人間関係を築ければ、会社の方針や経営者の考え方をより深く理解でき、ビジョンに沿った行動をとりやすくなります。さらに、関係が構築されていれば、理解と協力も得やすくなるため、経営陣との良好な関係構築が不可欠です。

人事は経営側と現場の橋渡しの役割があるため、従業員だけでなく上役の人たちとの人間関係も必要となります。

6.人脈や人望を活用する

人事は会社の決定事項を一方的に押し付けるのではなく、経営陣と従業員の意見を調整しなければなりません。そのためには、人脈や人望を上手に活用するのもポイントです。人脈があれば情報収集はもちろん、説得する際の理解や協力が得られやすくなります。

ただし、わずかなことで人脈や人望を失う恐れがあるため、日頃の言動には気をつけましょう。
一度失った信頼は取り戻すのが困難です。
どんなに親しい人であっても、日頃から謙虚な姿勢を忘れてはなりません。

7.会社の行事や食事会を利用する

人間関係を構築するためには、日頃から従業員や経営陣とのコミュニケーションが重要です。そのためにも、多くの機会を活用して関係構築に努めましょう。身近なのは会社の行事や食事会です。

従業員や上司と気楽に交流できる機会は、生の声を直接聞けるチャンスでもあります。普段はあまり話さない人とも、会食の席なら話しやすいでしょう。ただし、会社の機密情報や人事の予定などを、勢いに任せて話さないように注意が必要です。

好かれる人事の特徴

同じ人事でも、好かれる人とそうではない人がいます。周りから好かれる人には共通の特徴があります。代表的な特徴を見ていきましょう。

仕事ができる人

仕事ができる人は複雑な課題や状況にも対応でき、的確な判断を下す能力があります。そのため、指導やアドバイスを行った際に、受け入れてもらいやすいのです。また、与えられた仕事をミスなくやり遂げる能力もあるため「この人が言うなら間違いない」と信頼され、指導に不満を抱く人も少ないでしょう。

このように、仕事ができると思われれば、周囲からの信頼につながります。そのため、自己研鑽や知識の習得を怠らないことも、人に好かれるコツのひとつです。

積極性がある人

好かれる人には積極性があります。たとえば「言われた仕事しかやらない」「常に指示待ち」といった受け身の姿勢の人は、やる気がないと思われます。このような人事から指導や教育を受けても、モチベーションが上がりません。中には、反発する人もいるでしょう。

また、問題解決においても、積極的な人は問題が起った時のことを想定して準備します。一方、消極的な人は問題が起こることを想定しておらず、いざ問題が起こっても指示を受けなければ動けないケースが少なくありません。そのため、問題解決が遅れるのです。

このような状況が続けば信頼は得られません。信頼を得るには自分から積極的に動く姿勢を見せることが重要です。

協調性がある人

経営陣と従業員の意見を上手く調整するためには、協調性が不可欠です。協調性が高い人はコミュニケーション能力にも長けているため、誤解なくスムーズな伝達ができます。また、お互いの意見を丁寧に聞き、相手を尊重した対話のできる人が多い傾向です。

両者の意見を調整するためには、中立的な立場で考えられることも重要となります。

素直で裏表のない人

素直で裏表のない人は、言動に一貫性があり誠実な印象を与えます。裏表がない透明性のある対応は、周囲の信頼を得る上で不可欠です。信頼が構築されれば相談などがしやすくなり、組織全体のコミュニケーション活性化につながります。

また、裏表がなく偏見や先入観で判断しない姿勢は、評価においても重要です。公正な評価は、従業員のモチベーションや満足度に直結します。主観で判断するなど公平さに欠ける人は、人事には向いていません。

頼りになる人

頼りになる人は積極的にコミュニケーションを取り、情報提供したり相談に乗ったりします。困っていることがあれば、気軽に相談できるような雰囲気を自分から作っているのです。このように、日頃から気を使う人は周りに好かれる傾向があります。

悩んでいる従業員に対して的確なアドバイスを行い、悩みを解決することも人事の重要な仕事です。困っている従業員を親身になって助ける姿勢は信頼につながります。

嫌われ役が辛くなったら

人事は経営側と従業員の板挟みになり、ストレスが溜まりやすい仕事です。そのため、辛くなることもあるでしょう。
最後に、人事の仕事が辛くなった時の対処法を紹介します。

人事部内に相談できる人を見つける

どうしても辛くなったら、まずは上司に相談しましょう。上司は経験が豊富なため、中には自分も同じ思いをした経験や、過去に同じ相談を受けた経験がある上司もいるでしょう。上司には話しづらければ、人事部内の先輩や同僚でも構いません。

同じ部門で仕事をしている人なら辛さがわかります。相談すれば具体的なアドバイスをもらえる可能性が高いでしょう。また、人事部内であれば、一般社員には話せない話もしやすく、より深い悩みも打ち明けられます。

人事部内に理解者を見つけておけば、メンタルの面でも支えになります。

異業種交流会などへ参加する

異業種交流会や、人事担当者向けのコミュニティに参加するのもおすすめです。他社の人事担当者と話すことで、解決のヒントが得られるかもしれません。また、他社が抱える人事の課題や成功事例などを聞ければ、今後の仕事にも活かせるでしょう。

また、異業種交流会はリフレッシュするための良い機会となり、ストレスの軽減にもつながります。これを機に新たな人脈の広がりも期待できます。  もあるので検討してみましょう。

たとえば「ZINZIEN」や「採用モンスターズ」などは、誰でも無料で参加できます。

他部門の仕事を経験してみる

人事の仕事をやっていると、なぜ人事が嫌われる立場なのか理解できにくいでしょう。そのような人は、人事以外の仕事を経験してみるのもおすすめです。もし、ジョブローテーション制度で別の部門を経験できるなら希望してみてください。

別の角度から人事を見ることで、他部門に人事がどのように写っているのかが理解できます。また、別の部署の仕事を経験すれば、企業全体の業務の流れや、他の部門が直面している課題についても理解できます。そうすれば、より広い視野を持って業務に取り組めるでしょう。

まとめ

人事部門は、勤怠管理や規則の遵守など「人の管理」を行う立場にあり、従業員に対して厳しい態度で接しなければならない場面が多くあります。また、人事評価による評価や人事異動の決定権を持つため、どうしても「社内の嫌われ役」になるのは仕方ありません。

嫌われる役回りであるからこそ、常に現場の声に耳を傾けるなど周囲への配慮を心がけ「好かれる人事」になることが必要です。

一方で、人事は経営者の考えを正しく理解し、周囲に伝える役回りもあるため、経営陣との良好な人間関係も求められます。従業員に寄り添い、意見を尊重することが「嫌われ役」の人事が嫌われないコツです。周囲から嫌われているかもと感じている人事担当者の方は、ぜひ、実践してみてください。

コラムを書いたライター紹介

松尾隆弘

プロフィールはこちら

キャリア30年の元人事担当。3業界で採用や社員教育、労務管理に従事。社内FPとして退職後のキャリア支援や人事コンサル事業にも携わる。2022年にライターへ転向し、現在は採用や転職・人材育成などHR分野を中心に執筆活動中。

関連コラム

コメントはこちら

一覧へ戻る