【人事担当者向け】高校生採用のルールとスケジュール、成功のポイントを解説

採用競争が激化する昨今においては、大学生のみならず高校生の採用に注力する企業が増えつつあります。しかし、高校生採用は、ルールやスケジュールが大学生採用とは大きく異なるため、違いをしっかり理解しておかなければなりません。
そこで今回は、高校生採用のルールやスケジュールについて紹介するとともに、高校生採用を成功に導くポイントを解説します。
高校生採用の市場感
厚生労働省が公表した「令和5年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」によると、令和6年3月末時点の高校生向けの求人数は約48万2千人(前年同期比:8.7%増加)、有効求人倍率は3.98倍(前年同期比:0.49ポイント上昇)でした。
特に求人倍率は平成23年以降上昇傾向にあり、高校生の需要がここ数十年で急増している様子がうかがえます。
引用:厚生労働省「令和5年度高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る 求人・求職・就職内定状況」取りまとめ(3月末現在)
また、就職内定率は99.2%と高い水準を示しており、就職を希望する高校生の大半が内定を獲得しています。高卒就職希望者のほぼ100%が内定に至っていることから、企業にとっては限られた母集団の中で優秀な人材を確保しなければならない状況にあると言えるでしょう。
高校生採用の基本ルール
高校生採用は、大学生採用とは異なる独自ルールが設けられています。
本章では、高校生採用に取り組むにあたって理解しておきたい基本的なルールを紹介します。
厳格な採用スケジュールが決められている
高校生採用は、大学生採用とは異なり、厳格なスケジュールが定められています。大学生採用の場合、就職活動の開始時期はある程度の枠組みが決められているものの、インターンシップや企業説明会の早期開催が進み、実質的には年々早まっている実情があります。
その点、高卒生採用は、文部科学省や厚生労働省、経済団体、および学校関係者などによって求人公開や選考開始の時期が定められており、全国一律のルールとして運用されています。
そのため、地域や年度によって多少の違いはあるものの、企業側はスケジュールを把握し、計画的に採用活動を進めなければなりません。
求人票・求人募集の解禁時期が一律
高校生採用はスケジュールが厳格に定められているため、求人票や求人募集の解禁日も全国一律となります。企業が独自に早期から求人情報を発信・公開したり、単独採用活動を開始したりすることは厳しく制限されています。
本ルールは、社会経験の少ない高校生が公平に就職活動を進められるように策定されたものであり、企業側にとっても採用競争が過度にならないよう、公平な採用機会を確保する狙いがあります。
求人票発行にはハローワークの審査が必要になる
高校生採用では、求人内容が適切であるか、公正な基準を満たしているかなどをチェックするために、求人票を発行する際は必ずハローワークによる審査を受けなければなりません。ハローワークの審査を通過した後、正式に求人票が発行されます。また、企業が求人広告を掲示する際には、ハローワークの名称や求人番号を明記することが義務付けられています。
さらに、高校生が適切な進路指導を受けながら就職活動を進められるよう、高校生からの応募を受け付ける際は、必ず高校やハローワークを経由しなければならず、企業が高校生からの応募を直接受け付けることはできません。
直接連絡の禁止
大学生採用では、学生と企業は自由にコミュニケーションを取り合うことができます。しかし高校生の場合、企業とのやり取りは高校を通じて行われます。その理由として、不適切な勧誘や情報の偏りが生じるリスクを低減する、就職活動に関する意思決定に高校が適切に関与できるようにする、などの理由が挙げられます。
そのため、企業は高校の教員と良好な関係を築き、正規の手続きを踏みながら採用活動を進めていかなければなりません。
一人一社制
高校生採用では、「一人一社制」という独自のルールが適用されます。
一人一社制とは、一人一社しか応募できない制度であり、高校生が複数の企業の選考を受けることで、学業に支障をきたしたり、心身に負担がかかったりすることを防ぐために設けられました。
そのため高校生は、選考結果がわかるまで、他の企業の選考を受けることはできません。地域によっては、不採用になった場合に限り、10月1日以降、二社目まで応募が可能になるケースもあります。
高校生採用の基本的なスケジュール
高校生採用のスケジュールは厳密に決められており、かつ非常にタイトです。
そのため企業は、高校生採用のスケジュールを意識しながら早めに採用準備を進めましょう。
厚生労働省より令和6年2月に公表された、令和7年3月新規高等学校卒業者の採用選考期日は次のとおりです。
参考:厚生労働省「令和7年3月新規高等学校卒業者の就職に係る採用選考期日等を取りまとめました」
6月1日からハローワークで求人申込書の受付が開始されます。ハローワークに求人申込書を提出し、審査を経て7月1日から正式に求人票が発行されます。求人票発行後は、高校に求人票を郵送もしくは持参し、求人票の開示を依頼します。
7月以降は、応募を希望する生徒向けに職場見学が行われ、9月5日からは応募の受付が開始されます。企業は書類到着後、9月16日から開始される採用試験の日時を高校に通知し、採用選考を実施します。
高校生は一人一社制のルールのもとで応募するため、不採用通知が遅れると、次の応募先を決める際に不利な状況に陥る可能性があります。そのため、選考の合否通知は10日以内を目安に早めに通達しましょう。
厚生労働省が公表している令和5年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る 求人・求職・就職内定状況」の9月末時点の情報では、高校新卒者の就職内定率 63.0%(※)であることから、就職を希望している高校生のうち約4割が二次選考を受けていることになります。このような動向も考慮しながら、一次選考で採用できた人数と採用目標人数に応じて9月後半のスケジュールを迅速に調整しましょう。
(※)参考:厚生労働省:令和5年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」取りまとめ(9月末現在)
高校生採用を成功に導くポイント
本章では、高校生採用を成功に導くポイントを紹介します。
高校の教員との関係性を築く
高校生の就職活動は、基本的に高校を通じて行われるため、教員の推薦やサポートが不可欠です。企業にとっては高校の教員との関係性が採用活動の成功を左右することもあるため、定期的に高校に訪問し、高校の教員と信頼関係を築いていくことが大切です。
一度関係が途切れてしまうと、関係の再構築には時間がかかります。そのため、企業の事業戦略などによって採用の予定がなくなった年でも、定期的に高校を訪問し、関係性が途絶えないよう努めましょう。
さらに、高校の教員との関係は属人化しやすい傾向があります。訪問担当者が変わったとしても関係性を継続できるよう、マニュアルを整備し、組織として安定した対応ができる体制を整えることも重要です。
業務内容や職場理解が深まるイベントを開催する
高校生の就職活動は、一人一社制のため企業同士を比較する機会が少ないうえに、選考スケジュールもタイトです。そのため企業理解が十分でないまま内定を承諾してしまう高校生も少なくありません。その結果、入社後にギャップが生じ、早期離職につながることもあります。
実際に、令和3年3月に卒業した新規高卒就職者の離職率は38.4%(※)と約40%近い割合となっています。
業務内容や職場理解を促す取り組みとしては、工場見学や職場体験などが挙げられます。1~2年生の段階から見学の機会を提供することで、早い時期から企業への理解を深められたり、興味を持ってもらえたりできるでしょう。
(※)参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します」
高校生採用のスケジュールに合わせた活動を意識する
高校生の採用活動は、7月の求人票公開を皮切りに、短期間で進行します。そのため、適切なタイミングで効果的なアプローチを実施することが重要です。
高校では夏頃に保護者と教員を交えた三者面談が行われ、進路を決定します。この時期は、高校生自身も就職に対する意欲や興味が高まっているでしょう。高校生の就職意欲が高まるこの時期に合わせて工場見学や説明会を実施すれば、自社の魅力付けや志望動機の形成の効果がより高まると期待できます。
高校生の不安払しょくに努める
高校生の中には、地元を離れて働くことや初めて社会に出ることに対して漠然とした不安を抱えている高校生もいます。不安が残ったまま入社に至ると、早期離職を招く恐れがあります。
そのため、企業は会社説明会などの場で、高卒で入社した先輩社員と高校生が交流できる機会を設け、高校生の就職に対する不安を解消できるよう努めましょう。先輩社員のリアルな経験談を伝えることで、高校生は働くイメージを持てるようになり、不安が軽減されることもあるでしょう。
アプローチ先となる高校を拡充するための取り組み
採用競争が激化する昨今においては、現状目標数を達成できていたとしても、いずれ下回ってしまう恐れがあります。安定した高校生採用を実現するためには、アプローチ先となる高校の拡充に努めなければなりません。
本章では、アプローチ先となる高校を拡充するための取り組み例を3つ紹介します。
過去に採用実績のある高校に対して再アプローチを行う
高校生採用を強化するうえで、過去に採用実績のある高校への再アプローチは有効な手段となるでしょう。
現在は関係が途切れている高校であっても10年~20年前の採用実績まで遡り、過去の採用実績を洗い出してみましょう。さらに学校訪問の際には、卒業生の活躍を紹介することで、企業のイメージ向上に寄与し、結果として継続的な採用につながることもあるでしょう。
商業高校や他県の高校にもアプローチ先を広げる
これまでアプローチしていなかった商業高校や近隣県の高校に対象を広げることも有効です。
商業高校へのアプローチを強化することでアプローチ先の拡充だけではなく、これまで出会う機会がなかった人材と出会える可能性も期待でき、人材の多様化にも寄与するでしょう。
また、都市部と比較して就職先の選択肢が少ない地域の高校では、企業側からの積極的なアプローチが歓迎されるケースもあります。
教員から別の高校を紹介してもらう
すでに関係を構築できている高校の教員から、別の高校を紹介してもらう方法もあります。新たにアプローチを試みる高校であったとしても、別の高校の教員からの推薦があると、企業に対する信頼度が高まり、スムーズに採用活動を進められるでしょう。
紹介された高校に対しては、まず情報提供や職場見学の機会を設け、教員に企業への理解を深めてもらうことが大切です。
まとめ
高校生採用には独自のルールとスケジュールが定められています。また、採用競争が激化する昨今においては、高校生の採用ニーズも急増しています。そのため、企業の採用担当者は高校生採用の特徴や概要の理解に努め、適切なスケジュールや戦略の策定に取り組まなければなりません。
加えて、高校生採用は早期離職が多い点も特徴として挙げられます。限られた採用期間の中で高校生に対して企業理解を促すためには、採用スケジュールを考慮したイベントの実施や、高校生とのパイプ役となる教員への企業理解促進も不可欠です。また、高校生を安定的に採用するためには、新たなアプローチ先となる高校の新規開拓にも努めなければならないでしょう。
高校生の採用競争は今後より一層激化すると考えられます。
企業は、高校生採用の市場動向や実情を理解し、時代や動向に合った施策に取り組みながら求める人材の採用や早期離職の防止に努めましょう。
コラムを書いたライター紹介

日向妃香
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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