外国人労働者を活用するメリットと活躍してもらうための職場づくり<第2回:外国人労働者が感じる不満から活躍してもらうための職場づくり~>
少子高齢化の影響で、人手不足に悩む企業が増えています。そのため、外国人労働者を活用したいと考えているが、どのような点に注意したらよいかがわからず、悩んでいる採用担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では2週に分けて、外国人労働者の採用について解説します。第1回では外国人労働者の雇用状況から企業側と労働者側双方のメリットを紹介しました。第2回目では外国人労働者が感じる不満や外国人労働者を雇用する際の注意点、外国人労働者に活躍してもらうための職場づくりを紹介させていただきます。最後まで読むことで、外国人労働者を効果的に活用できるようになるのでぜひご覧ください。
第1回目記事はこちら:外国人労働者を活用するメリットと活躍してもらうための職場づくり<第1回:外国人労働者の雇用状況と日本で働くメリット~>
外国人労働者が感じる日本で働くことの不満
外国人労働者は、日本で働くことにメリットを感じている一方で、不満を感じている点もあります。労働問題や評価制度、日本特有のコミュニケーションなど、外国人ならではの課題について見ていきましょう。
長時間労働
外国人労働者にとって、長時間労働が不満の原因になっているケースが少なくありません。
日本の労働時間の長さは世界中でも上位となっており、残業や休日出勤の多さが問題視されています。
効率的な働き方を重視する外国人労働者にとっては、長時間にわたって仕事をすることが生産性につながるといった考えは一般的にありません。むしろ、ワークライフバランスの崩壊につながり、プライベートな時間を奪うものと考えられています。
そのため、プライベートを大切にする文化がある外国人労働者にとって、長時間労働は不満の原因となるのです。
こうした不満を抱かせないためには、労働時間管理の徹底や業務の効率化が欠かせません。
日本人特有の「長時間働くことで生産性が上がる」という考え方からの脱却が必要でしょう。
評価基準が不透明
日本企業の人事評価システムは、外国人労働者にとってわかりにくいといった不満もあります。評価の基準を社内文化や慣習に依存している企業も多く、外国人労働者には理解しにくいのです。
また、昇進や昇給の基準が明確にされず、評価の透明性が低い企業も多く、自分の能力が適切に評価されていないと感じる外国人も少なくありません。とくに問題となるのは「頑張り」や「熱意」といった、抽象的な基準が重視される傾向にあることです。
たとえば、残業の多さを「頑張り」の指標とする日本的な考え方は、外国人労働者には受け入れがたいでしょう。また、日本企業特有の「年功序列」制度も、外国人労働者にとっては不公平に映ることがあります。
能力や実績よりも勤続年数が重視される傾向は、モチベーション低下の原因です。このような問題を解決するためには、透明性のある評価制度を導入して不満を軽減する必要があります。
昇進が遅い
日本の企業文化では年功序列が根強く残っており、昇進が遅いと感じている外国人労働者は少なくありません。年功序列制度を取り入れている企業では、能力や実績よりも勤続年数が重視される傾向があります。そのため、実力主義が一般的な国から来た外国人労働者にとっては、大きな不満となっているのです。
また、外国人労働者は、言語や文化の壁によって自己アピールが難しく、評価されにくいと感じることもあります。こうした不満を解消するためには、実力主義の評価制度を導入し、成果に基づいた昇進の機会を与えることでモチベーションを高めることが重要です。
一部の日本企業では「ファストトラック」制度を導入し、優秀な外国人労働者の要職への登用を図っている事例もあります。「ファストトラック」とは、欧米企業で取り入れられている制度で、将来の幹部候補者を入社後の早い時期に選抜し、特別なポジションで活躍してもらうことです。
しかし、このような取り組みはまだ一般的とは言えず、多くの外国人労働者は依然として昇進の遅さに不満を感じています。
日本特有のコミュニケーション
日本特有のコミュニケーションスタイルも、外国人労働者にとっては不満となるケースがあります。日本では、間接的な表現やあいまいな言い回しが多く使われ、会話においては「空気を読む」ことが重要視されます。
とくに「本音と建前」の使い分けは難しいでしょう。日本人にとっては一般的でも、外国人労働者には混乱を招く要因です。また、日本特有の敬語や礼儀作法も、外国人労働者にとっては習得が難しい場合があります。
さらに、相手の立場や状況に応じて適切な敬語を使い分けることも、日本語を母語としない労働者にとっては非常に難しいコミュニケーション方法です。日本では、敬語の使い方が人間関係に影響を与える可能性があるため、多くの外国人労働者が困惑します。
そのため、誤解やトラブルの原因となることも少なくありません。企業は、外国人労働者に対して日本のビジネスマナーや振る舞いを教育し、円滑なコミュニケーションを促進する必要があるでしょう。
外国人労働者を雇用する際の注意点
外国人労働者の雇用は、企業に多くのメリットがあります。しかし、外国人労働者を雇用する際には、法的な側面や文化的な違い、人権利に対する理解も重要です。以下に、外国人労働者を雇用する際に特に注意すべき点について詳しく解説します。
以下の点に配慮することで、外国人労働者が活躍しやすくなるでしょう。
法制度に気をつける
外国人労働者を雇用するにあたっては、法律の理解が欠かせません。
とくに注意すべきは不法就労です。知らずに不法滞在者を雇用した場合でも罪になります。
企業は就労可能な在留資格を持つ外国人のみを雇用できるため、必ず在留カードや旅券で確認する必要があるでしょう。
雇用後は「外国人雇用状況の届出」の提出も必要です。さらに、労働基準法や最低賃金法など、労働関係の法令も日本人と同様に適用されます。これらの法令を遵守しないと、罰則の対象になるので注意が必要です。
文化の違いに気をつける
文化の違いへの配慮も重要です。日本の職場文化や慣習が、外国人労働者にとって馴染めないこともあります。たとえば、時間に対する考え方や、上下関係の捉え方、コミュニケーションスタイルなどが大きく異なることもあるでしょう。
これらの違いを理解せずに日本の常識を押し付けると、誤解やトラブルの原因となります。
こうした文化の違いに対応するためには、外国人労働者と日本人従業員に対して研修を行うなどが必要です。
人権侵害に気をつける
外国人労働者は言語の壁や文化の違いから、コミュニケーションがうまくいかないことがあります。これらが原因で、差別やパワーハラスメントの対象となることも少なくありません。そのため、人権侵害に対する配慮が必要です。
また、労働条件や待遇において、外国人であることを理由に不当な差別を行うことも、違反する行為です。日本人労働者と同等に扱わなければなりません。
安価な労働力と思わない
外国人労働者を雇用する際の重大な誤りのひとつは、単なる「安価な労働力」と見なすことです。彼らは、多様なスキルや経験を持ちあわせている貴重な人材だと認識しましょう。
安価な労働力と見なすことは、モチベーションを低下させ離職につながる恐れがあります。
さらに、外国人労働者への待遇が悪ければ、悪い評判が広がり企業イメージが下がる可能性もあります。そのため、企業に貢献してもらうためには、ビジネスパートナーとしての視点を持つことが重要です。
外国人労働者を採用する際に必要な手続きや注意点については、こちらの記事でも紹介しています。
関連記事:「外国籍人材雇用」を導入する前に押さえておくべき諸手続きや注意点を解説
外国人労働者に活躍してもらうための職場づくり
外国人労働者を雇用する際には、活躍できる職場環境を整備することが重要です。快適に働ける環境を作ることは、職場全体の活性化につながり生産性が向上します。最後に、外国人労働者に活躍してもらうための職場づくりにおいて、とくに重要な3つの要素について詳しく見ていきましょう。
労働環境の改善
外国人労働者を雇用する際、労働環境の改善は最も重要な課題のひとつです。言語の壁を感じさせないために、案内表示やマニュアルを多言語対応にしましょう。また、宗教や文化的背景に配慮し、祈りの場所を確保することも必要です。
職場内でのコミュニケーションが円滑になるよう、外国人労働者向けの日本語研修や文化交流イベントを開催するのも効果があります。さらに、労働条件を見直し過重労働をさせない取り組みを行うことで、健康とモチベーションを維持できます。これらは外国人労働者だけでなく、全従業員にとっても有効です。
また「リバースメンタリング」の導入も効果的です。リバースメンタリングとは、外国人労働者が上司や日本人労働者に対して、グローバルな視点や外国人ならではの考え方をアドバイスする仕組みです。そうすることで、従業員間のコミュニケーションが活発化し、グローバルな視点も身につきます。
公平な評価基準の導入
外国人労働者を適切に評価し、能力を最大限に引き出すためには、公平で透明性の高い評価基準の構築が不可欠です。まず、評価基準を明確化し、言語や文化の違いに関わらず全ての従業員が理解できるようにする必要があります。
また、成果を重視した評価制度を導入し、能力や実績に基づいた公平な評価を行うと効果的です。さらに、定期的に面談する機会を設け、外国人従業員が自分の強みや改善点を理解できるようにすることも大切です。
公平な判断をしやすくするためには、次のような評価基準も効果があります。
公平な評価基準の構築は外国人雇用の成功に不可欠な要素であり、企業の持続的な成長を支える重要な基盤となるでしょう。
相談窓口や相談相手を作る
外国人労働者が安心して働ける環境を整備するには、悩みを気軽に相談できる窓口や相手を設けることが重要です。まずは相談窓口を設置しましょう。一般的に、相談窓口は専門のカウンセラーや人事担当者が担当します。定期的な面談を行い、問題を早期に発見することが大切です。
また「ピアサポートグループ」を作るのも効果があります。ピアサポートグループとは、同じ困難や同じ悩みを抱えた者同士がグループを作り、お互いに支え合う仕組みです。このようなグループを通じて孤立を防ぎ、帰属意識を高められます。
また、日本人従業員と外国人従業員の交流会を定期的に開催することで、相互理解を深め、職場全体のコミュニケーションを活性化させることも有効です。
まとめ
外国人労働者が日本で働くと、社会保険への加入や高度な技術の習得、安心できる労働環境などのメリットがあります。そのため、日本で働く外国人は年々、増加傾向です。一方で、長時間労働や不透明な評価基準、日本特有のコミュニケーションスタイルなどの課題があることも事実です。
外国人労働者に活躍してもらうためには、これらの課題を認識し、適切に対応することが求められます。また、差別やハラスメント防止、適切な労働時間管理や公正な評価など外国人が働きやすい職場づくりが不可欠です。
これらの取り組みを行うことで、外国人労働者は能力を最大限に発揮し、自社にとって貴重な戦力になってもらえるでしょう。本記事が外国人労働者の有効活用の参考になれば幸いです。
コラムを書いたライター紹介
松尾隆弘
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