育児・介護休業法が改正され、産後パパ育休制度が創設されました


2022年4月1日から育児・介護休業法が改正され、3段階に分けて施行されます。今回は、この法改正のポイントと対策を、社会保険労務士法人Real&Cloudの松下 将大さんに伺いました。

男性の育児休暇取得率を上げることは社会の課題

少子化が社会問題となり、共働き世帯が増える中で、男性の育児参加は社会の課題だといえるでしょう。今回の法改正には、男性の育休取得率を上げるという目的があります。
以下に改正のポイントを紹介します。

参考:000789715.pdf (mhlw.go.jp)

今回の法改正について、経営者や人事担当者の方からは「何が変わったんですか?」「どんな対策をしたらいいですか?」という質問もいただきます。
上記の1~4は企業規模にかかわらず全企業が対象です。とはいえ、この育児休業に関する法律には罰則規定がありません。そのため、業務が忙しい中でついつい対策が後回しになってしまうということもあります。しかし、きちんと法を守ることは、企業としての義務です。以下に、今回の法改正で何が変わるのか、どのような対策をしたら良いかをご紹介します。ぜひ参考にしてください。

産後パパ育休で、仕事の繁閑に合わせた分割取得も可能に

今回の法改正によって、既存の「育児休業制度」が改正され、「産後パパ育休」が創設されました。男性を対象とした育休制度は、このふたつが併設されている状態です。

参考:IKUJI_ol (mhlw.go.jp)

「産後パパ育休」と「育児休業制度」どちらも、2回まで分割して取得できるため、合計4回に分けて育休を取得できるというのがポイントです。

参考:000869228.pdf (mhlw.go.jp)

出産した女性にとって、出産から8週間の「産休」というのは、産後の身体を休める期間です。この期間に、男性が「産後パパ育休」を取得することで、育児に参加しやすくなりました。
近年の男性の育休取得率(2021年度)は13.97%とまだまだ低い水準です。育児中の男性からも「長期の休みは取りにくい」という声も聞こえてきます。これまでの育児休暇制度は、基本的に「分割取得は不可」となっていましたが、今回の法改正で仕事の繁閑に合わせて分割取得できるようになりました。これは「仕事と家庭の両立」という観点から見ても、大きなメリットだといえるでしょう。

助成金や認定マークも視野に入れて積極的に取り組む

今回の法改正では、事業主には以下の項目が義務化されました。必ず取り組むようにしてください。

  1. 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
  2. (本人または配偶者の)妊娠・出産の申し出をした労働者への個別の周知・意向確認
  3. 就業規則の変更

これらに関して、どのような整備を行い、どのような規則を設けるかは、各企業様の経営方針にもよります。ただ、「②個別の周知・意向確認」については、取得を控えさせるような形での周知・意向確認はこの措置の実施とは認められません。また、育児休業等を理由にした不利益な取り扱いは禁止されています。さらに事業主には、従業員が育児休業を申し出た際の、上司や同僚からのハラスメントを防止することも義務付けられています。

このような最低限の取り組みをすることはもちろんですが、積極的に男性の育児休暇取得促進に取り組めば、助成金の申請も可能です。(参考:両立支援等助成金のご案内(リーフレット)2023 (mhlw.go.jp)

また、子育てサポートに取り組み、厚生労働大臣に認定されると「くるみん認定」を受けることができます。こういった取り組みは、企業価値を上げることにもつながります。少子化対策や両立支援に力を入れたい企業様は、助成金の申請や、「くるみん認定」も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

参考:くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

人事担当者へのメッセージ

多くの企業にとって、人手不足は重要な問題です。人材を確保するためにも、企業は独自の価値を高め、若い世代にも訴求できるようなブランディングを行っていくことが大切です。今回の法改正をきっかけに、企業としての子育て支援の取り組みを見直してみるのもひとつでしょう。認定マークを取得していれば、人材市場での企業アピールとしても効果を発揮するはずです。

少子化対策・子育て支援といった社会の課題に対応し、雇用環境や体制を整備することで、「子育てパパ支援助成金」の申請も可能になります。そのような企業としての取り組みは、子育て中の従業員の心にも届くでしょう。
法改正されたばかりということもあり、まだ積極的な取り組みをしていない企業も多いのですが。子育て支援に取り組むことで、多くのメリットが得られると思います。

社会保険労務士法人Real&Cloud
社会保険労務士 松下 将大

大学卒業後、社会保険労務士事務所に勤務。2016年に社会保険労務士資格を取得し、現職に。これまで大企業・中小企業あわせてこれまでに100社以上のクライアントを担当。
「労働や生活といった、私たちが扱う分野は社員の皆さまの日常につながります。そのため、クライアントさんには正しい知識や有益な情報をお伝えすることに注力しています」

 

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